記事【小児科医が解説する発熱】
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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる書籍「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる
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こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。
今日は「小児科医が解説する発熱」というテーマで短くお話ししたいと思います。
あなたは、発熱について考えたことはありますか?子どもが発熱したら、「早く解熱しないかなあ」なんて心配になりますよね。そんな発熱に対する捉え方を考えてみたいと思います。
人が感染症にかかった時、どんな発熱のパターンをとるか。それは、その感染症の種類によって異なります。どんな感染症でも、発熱のパターンなんて同じでしょ、と思うかもしれませんが、実は微妙に違うんです。
そんなお話をする前に、一つだけ共通理解を持ちたいと思います。それは、風邪への理解です。感染症には大きく分けて、ウィルス性感染と細菌性感染の2種類の感染症のタイプがあります。いわゆる風邪とは、一般的にウィルス性感染のことを指します。
僕たちが抗菌薬と呼ぶものは、ほとんどは細菌性感染に対する治療薬です。例外として、抗インフルエンザ薬などのように、インフルエンザウィルスというウィルスを治療するものもあります。でも、そんなウィルスに対する抗菌薬はごく一部で、ほとんどが細菌に対する抗菌薬です。抗生物質なんて言い方もしますね。
その上で理解していただきたいことは、風邪には抗菌薬は効かないということです。風邪はウィルス性感染です。このため、細菌に対して効果を示すような抗菌薬あるいは抗生物質は、ウィルスには効かないのです。
仮に風邪の時に抗菌薬が処方されるとすれば、風邪の途中で細菌性感染による中耳炎を合併したような時です。抗菌薬は風邪に対して処方されているのではなくて、細菌性感染による中耳炎に対して処方されています。あるいは、風邪の途中で細菌性感染による肺炎になってしまった時です。その際は風邪のウィルスに対して抗菌薬が処方されるのではなくて、合併した肺炎を起こしている細菌に対して抗菌薬が使われています。
このように、感染症には大きく分けて2種類あって、ウィルス性感染と細菌性感染がある。抗菌薬が効くのは細菌性感染である。風邪はウィルス性感染のため、細菌を退治する抗菌薬は効かない。そういったことをお話ししました。
では、そんなウィルス性感染と細菌性感染の発熱のパターンを考えてみたいと思います。小児科医として、「この子は風邪だな」つまり「ウィルス性感染による発熱だな」と考える発熱のパターンがあります。それは、どんな発熱のパターンだと思いますか?
それは、「日中は解熱して、夕方から発熱する」といったパターンの発熱です。体温が上がったり下がったりを繰り返す場合、ウィルス性感染のことが多いものです。でも勘違いしないでください。この「体温が上がったり下がったり」というのは、38度以上になったり、36度〜37度前半になったり、ということです。
よく「この子の発熱の状態は、上がったり下がったりです」なんて教えてくれる親御さんがいます。でもよくよく聞いてみると、ずっと38度以上で、その38度以上の中で、38度台になったり、39度以上になったり、ということだったりします。このような終始38度以上である場合は、その体温が39度になろうと、38度になろうと、「ずっと発熱しっぱなし」の状態です。それは、体温が上がったり下がったりとは言いません。「ずっと発熱しっぱなし」の状態なのです。
そして、このような「ずっと発熱しっぱなし」の38度以上が続く場合は、細菌性感染を考慮します。もちろんインフルエンザウィルスとかアデノウィルスとか、細菌感染ではなくウィルス性感染なのにも関わらず、ずっと38度以上の発熱を示す感染症もあります。そういったケースは例外でおかしいので、そんな感染症には迅速検査が用意されているものです。基本的には38度以上の発熱が数日以上続く場合には、抗菌薬が必要な細菌性感染を考慮するんです。
そんな風に発熱の経過で、どんな感染症かを予想したりします。もしもお子さんが発熱した場合、どんな発熱のパターンなのかを医療者に伝えてあげてください。
今日は「小児科医が解説する発熱」というテーマでお話ししました。
だいじょうぶ。
まあ、なんとかなりますよ。
湯浅正太(ゆあさしょうた)
PROFILE
2007年 3月 高知大学医学部 卒業。小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。
『みんなとおなじくできないよ』
障がいのある「おとうと」がいる小学生の「ボク」。おとうとのことを好きだけど、ちょっと恥ずかしく、心配にも感じている。複雑な感情と懸命に向き合って「ボク」がたどり着いた答えとは?「きょうだい児」ならではの悩みや不安、孤独な気持ちが当事者の視点から描かれた絵本。湯浅正太著/1760 円(日本図書センター)
『みんなとおなじくできないよ』
診察する, 治療する, 命と向き合う, …医師として働くとはどういうことか, 患者さんにどう接するか, “正解”はなくとも「考えて答えを出していかねばならない」倫理的なテーマについて医学生/研修医に向けて解説。小児科医であり絵本作家でもある著者が, 医療現場のエピソードに沿った「物語」を提供し, 読者に考えてもらいながら倫理観を育んでいく。「明日からの診療に役立つ一言」も記載し, 躓いたとき, 迷ったときに心の支えとなる書籍。湯浅正太著/2420 円(メジカルビュー社)
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