記事【小児科医が解説する子どもの包茎】
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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる書籍「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる
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こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。
今日は、「小児科医が解説する子どもの包茎」というテーマでお話ししたいと思います。
先日外来に来てくれた親御さんがこんな質問をしてくれました。「子どものおちんちんの皮を剝いた方がいいですか?」、そんな質問でした。この質問はこれまでにも何度もいただいたことがあります。それほど、男の子を持つ親がよく抱く疑問だと思います。
結論からお伝えすると、子どもの包茎は基本的に剝く必要はありません。その包茎によって尿路感染を発症しやすくなるなどの明らかな生活での支障がない限り、強制的に皮を剝くことはせずに、自然と皮がめくれてくるのを待ちます。それは、子どもの包茎は成長とともに改善していくものだからです。
通常は成長とともに亀頭の周りの「包皮」という皮が剝けて、亀頭が露出できるようになって包皮は改善していきます。では、そうなるまでに、だいたいどのくらいの年月が必要なのでしょうか。
亀頭がまったく露出できない子どもの割合は、生後12ヶ月の子どもで50%程度です。そして15歳までに、全く包皮が剝けない子どもの割合は8%まで減少します。つまり、自然の経過で亀頭の周りの包皮は明らかに剝けていくということです。
通常は亀頭の表面と包皮の内側はくっついています。それが、年齢が増すとともに、男性ホルモンや陰茎自体の成長に伴って、包皮の伸縮性が増してきます。すると、包皮が少しずつ剝けるようになるわけです。
では、この包皮を強制的に剝くと、どんなことが起きるのでしょうか。
例えば、包皮を無理やり剝くことによって出血が起きたり、剝いた傷口から細菌が侵入して感染を起こしてしまうことがあります。成長とともに、亀頭の表面と包皮の内側には、恥垢と言われる垢のようなものが溜まっていきます。感染を起こすと、この恥垢の部分に膿が混ざって、包皮が赤く腫れることもあるのです。
ですから、基本的に子どもの包茎は自然に剝けてくるのを待ちましょう。
仮に、包茎が原因で尿路感染を繰り返すなどの症状があって包茎を治療する必要がある場合、まずはステロイドの軟膏を塗って包皮をめくれやすくしたりします。ある種のステロイドの軟膏には皮膚を薄くする作用もあって、その作用を利用して亀頭の表面と包皮の内側の癒着を剥がしていくんですね。そういった軟膏での対応でも包茎の改善が難しい場合は外科的な処置をすることがあります。
ただ、繰り返しになりますが、生活に何の支障もない状況で、ただ包茎を治すということはしません。子どもの包茎は自然と改善していくものなので、その包茎を積極的に治療する場合には、何かしらの生活での支障をきたしていることが条件になります。
インターネットや、今暮らしている地域、あるいは友人グループ、そういったところで「包茎は剝かないといけない」なんて誤った情報が流れていることもあるものです。子どもの時期に強制的に包皮を剝こうとすると、痛みを伴います。子どもへの不要な痛みを避けるためにも、包茎への適切な対応をぜひ理解していただければと思います。
今日は「小児科医が解説する子どもの包茎」というテーマでお話ししました。
だいじょうぶ。
まあ、なんとかなりますよ。
湯浅正太(ゆあさしょうた)
PROFILE
2007年 3月 高知大学医学部 卒業。小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。
『みんなとおなじくできないよ』
障がいのある「おとうと」がいる小学生の「ボク」。おとうとのことを好きだけど、ちょっと恥ずかしく、心配にも感じている。複雑な感情と懸命に向き合って「ボク」がたどり着いた答えとは?「きょうだい児」ならではの悩みや不安、孤独な気持ちが当事者の視点から描かれた絵本。湯浅正太著/1760 円(日本図書センター)
『みんなとおなじくできないよ』
診察する, 治療する, 命と向き合う, …医師として働くとはどういうことか, 患者さんにどう接するか, “正解”はなくとも「考えて答えを出していかねばならない」倫理的なテーマについて医学生/研修医に向けて解説。小児科医であり絵本作家でもある著者が, 医療現場のエピソードに沿った「物語」を提供し, 読者に考えてもらいながら倫理観を育んでいく。「明日からの診療に役立つ一言」も記載し, 躓いたとき, 迷ったときに心の支えとなる書籍。湯浅正太著/2420 円(メジカルビュー社)
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