子どもの「生きる」を考える
子どもの「生きる」を考える
小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te
代表理事 
湯浅正太
みんなとおなじくできないよ

手足にポツポツ発疹が出たら

2023/07/01

記事【手足にポツポツ発疹が出たら】

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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる書籍「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる

#手足口病 #小児科医 #湯浅正太 #しょーた #Yukuriーte

こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。

今日は、「手足にポツポツ発疹が出たら」というテーマでお話ししたいと思います。

夏になると、手足に発疹が出る手足口病という病気が流行ります。この手足口病は、口の中や、手足などに水疱性の発疹が出る、ウイルスの感染によって起こる感染症です。そして、この手足口病は、子どもを中心に、主に夏に流行します。このため手足口病が流行り始めると、小児科医としては「夏に近づいているんだなあ」なんて感じます。

手足口病では、通常感染して3~5日後に、口の中、手のひら、足底などに2~3mmの水疱性発疹が出ます。あとは、手足口病とは言われていますが、お尻にもこの発疹ができます。お熱の経過はどうかというと、発熱はあったとしても、高熱が続くことは通常あまりありません。あとはごく稀に手足口病の症状が消失してから、1か月以内に、一時的に手足の爪が剥がれることも経験します。でも、爪が剥がれても自然に治ります。

この手足口病は、エンテロウイルス属の感染により引き起こされる病気です。このエンテロウイルス属にはいつものウィルスが含まれているんですね。ポリオウイルス、コクサッキーウイルスA群、コクサッキーウイルスB群、エコーウイルス、その他のエンテロウイルスが含まれているんです。

エンテロウイルス属の中にいくつもあるウィルスの中でも、この手足口病の原因となるウイルスは、主にコクサッキーウイルスA6、A16、エンテロウイルス71(EV71)、コクサッキーウイルスA10などであることが知られています。そして実はこのエンテロウィルス属は、手足口病の他にもヘルパンギーナという病気を発症することが知られています。

この手足口病はどうやって感染すると思いますか?この病気は、飛沫感染、接触感染、あるいは、便の中に排泄されたウイルスが口に入って感染することが知られています。

特に子どもたちは、手洗い・うがいの衛生観念がまだ発達していないですね。ですから、子どもたち同士の生活距離が近くなって、濃厚な接触が生じやすいですよね。このため、集団生活をしている保育施設や幼稚園などではこの病気が流行りやすく、施設の中で手足口病の集団感染が起こりやすいものです。

また、まだ幼い乳幼児だと、それまでに手足口病のウイルスに感染した経験のない子どももたくさんいます。このため手足口病への免疫がないため、このウィルスに感染した子どもの多くが手足口病を発病するのです。

手足口病の治療法はどうでしょうか。手足口病には特に有効なワクチンはありません。特効薬はなく、特別な治療方法はありません。発熱が辛ければ解熱剤を使うように対症療法が基本になります。ごくまれに髄膜炎や脳炎などの合併症などが起こる場合があります。ですから、視線が合わない、呼びかけに答えない、ぐったりとしているなどの症状がみられた場合は、すぐに医療機関を受診してください。

手足口病に対する一般的な感染対策は、接触感染を予防するために手洗いをしっかりとすることと、排泄物を適切に処理することです。特に、保育施設などの乳幼児の集団生活では、感染を広げないために、職員さんや子どもたちの手洗いが大切です。特におむつを交換する時にはしっかりと手洗いをしてください。

ただ、手足口病は、治った後も比較的長い期間便の中にウイルスが排泄されます。また、感染しても発病はせず、ウイルスを排泄している場合があります。このため、発病した人だけを長期間隔離してもあまり有効な感染対策にはなりません。学校・幼稚園・保育園などでの流行阻止をねらっても、効果はあまり期待ができないのが実際のところです。

手足口病の大部分は発病しても、軽い症状だけで治ってしまうことがほとんどでです。これまでほとんどの人が子どもの間にかかって、免疫をつけてきた感染症です。集団としての問題は少ないため、発疹だけの子どもに長期の欠席を強いる必要はなく、また現実的ではありません。このため、流行阻止の目的というよりも子ども本人の症状や状態によって登園や登校を判断することになります。

今日は「手足にポツポツ発疹が出たら」というテーマでお話ししました。

だいじょうぶ。

まあ、なんとかなりますよ。

湯浅正太(ゆあさしょうた)

PROFILE
2007年 3月 高知大学医学部 卒業。小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。

一般社団法人 Yukuri-te(ゆくりて)

『みんなとおなじくできないよ』

障がいのある「おとうと」がいる小学生の「ボク」。おとうとのことを好きだけど、ちょっと恥ずかしく、心配にも感じている。複雑な感情と懸命に向き合って「ボク」がたどり着いた答えとは?「きょうだい児」ならではの悩みや不安、孤独な気持ちが当事者の視点から描かれた絵本。湯浅正太著/1760 円(日本図書センター)

『みんなとおなじくできないよ』

診察する, 治療する, 命と向き合う, …医師として働くとはどういうことか, 患者さんにどう接するか, “正解”はなくとも「考えて答えを出していかねばならない」倫理的なテーマについて医学生/研修医に向けて解説。小児科医であり絵本作家でもある著者が, 医療現場のエピソードに沿った「物語」を提供し, 読者に考えてもらいながら倫理観を育んでいく。「明日からの診療に役立つ一言」も記載し, 躓いたとき, 迷ったときに心の支えとなる書籍。湯浅正太著/2420 円(メジカルビュー社)

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