記事【こんな人への対応どうしたらいいですか】
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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる書籍「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる
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こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。
今日は、「こんな人への対応どうしたらいいですか」というテーマでお話ししたいと思います。
あなたは、人間関係で困ったことはありますか?上司が空気を読めない人とか、部下が敬語を使えない子とか。世の中には色々な人がいますよね。つまり、様々なパーソナリティを備えた人がいるってことです。
パーソナリティつまり人格とは、振る舞い方、考え方、他の人との関係の作り方、そういったものを示しています。ただ、そのパーソナリティって生まれてすぐに確立されるというよりも、その人の生まれつきの特徴に色々な経験が加わり、ストレスの存在もあったりして作られていくものです。
自分が今接している人がどんなパーソナリティを備えているのか。特にどんなパーソナリティの人には注意した方がいいのか。そんなことを知っているかどうかで、あなたの生きやすさが明らかに変わります。
僕は小児科医として色々な子どもやその親御さんに向き合います。これから自分らしさを発見しようとしている子どもたちもいれば、既に確立したパーソナリティに振り回されている親御さんもいるわけです。外来は、そんな色々なパーソナリティと積極的に向き合う場なんでです。
人と向き合うということは、少なからず目の前の人の影響を受ける可能性があります。だって、人の心ってうつりますから。僕が診察していると、その相手の心が僕にうつる可能性があるということです。ですから、そんな色々なパーソナリティに緩急をつけて、自分の心をコントロールしながら向き合います。診療って、そういうものです。
もしも患者さんが自己中心的で、あらゆる物事を自分の思い通りにしたがる方であったらどうでしょう。こちらが注意していなければ、その人に振り回されてしまう可能性が大きいんですね。でも、そういう方にお会いする度にこちらが影響を受け振り回されていたのでは、こちらの心が持たなくなってしまいます。相手の影響を受けっぱなしだと、相手の感情に振り回されて、結局こちらが行いたい治療もできなくなる。そういうものです。
ですから、僕が診療をする時には、必ず相手のパーソナリティーに注目します。どんな特徴を持っている方で、その人と接している僕は今どんな心の状態でいるのか。そんなことに注意しながら診療を進めます。それは、相手に自分の心を操作されないためにとても大切なことです。操作されないから、治療できるんです。
そんな前置きをした今日は、先日いただいたご相談について考えてみたいと思います。今回ご紹介するコメントは、僕の法人に送ってくださったものですね。
「学校ですごく物理的な距離感が近い子がいて、ずっと抱きつかれたり手を繋がれたり。 それだけではなくて『私にだけかまって』と言われたりします。冷たく対応しようと思っていたのですが、それも何だか可哀想だなあと感じてしまいます。どうすればいいか困っています。」
なるほど、ご相談いただいたリスナーさんにしつこく接してくる人がいるんですね。自分の気持ちの赴くままに突っ走ってしまって、社会的に上手な人間関係を構築できない人。そんな人の中には、発達障害とか、パーソナリティー障害とか、そういった診断がつきそうな人もいるものです。
その相手は、人の気持ちがわからない、人との距離感がわからない、独占欲が強い、そういう人なんでしょうね。コメントをくれたリスナーさんが困っているということは、おそらくそのほかにも困っている人はいるのだと思います。それが通常です。そして、困ったことをしている本人さんも、実は困っている状況に置かれているはずだけど、それを困っていると認識できないんです。
ここでは診断をするわけではないので、診断の話はしません。でも、やっぱりそういう方って、10年後、20年後には病院を受診していることも珍しくありません。それは、社会的な人との関係の作り方がうまくないので、ご本人も結局生きづらさを実感するようになるからです。そして病院を受診して何らかの診断が下る。そんなことが珍しくありません。
今回のコメントをくれたリスナーさんには、自分の態度を冷たい態度と思わなくていいので、普通の表情であっさりと「困る」と伝えてあげてください。まず大切なのは、困ることをしてくる人に、「あなたは困ることをしている」と認識させてあげることなんです。
この手の人に察してもらうのは容易いことではありません。おそらく察してもらうことを待っていると、あなた自身がヘトヘトに疲れてしまいます。あなたの心が疲れてしまうと、どうなると思いますか?結局はいつか「もうやめて!!」なんて、怒ってしまうかもしれません。つまり、感情的に対応してしまうということです。
でも、感情的にはなってもらいたくないんです。感情が動く場面では、正しい理解や行動の修正がしづらいからです。感情がある中での問題解決よりも、感情の揺れ動きの少ない中で問題解決した方がよりよく解決できるものなんです。そういうものなんです。
だから、冷静でいられるうちに、まずはしっかり自分の意見を伝える。「距離が近すぎるのは困る」、そのことを伝えてあげてください。あなたが冷静でいられていれば、もしも相手が感情的になっても、その感情をかわせます。感情に感情で返すという行為が避けられるんです。
今触れましたが、次に注意したいのが、相手が感情的になった場合の対応です。例えば、あなたが相手に自分の意見を伝えたら、相手が感情的になったとします。もしもそうなったら、あなたはどうしたらいいでしょうか?
その場合は、基本的に感情的にならずに冷静に毅然と対応するということです。「どうしてそんなことを言うの!!」なんて怒ってきたら、「だって人ってそう言うものよ」と伝えてあげれば大丈夫です。
実は、パーソナリティ障害の特徴を持っている人は、感情的になりながら自分の都合の良い方向に物事を操作しようとしたりすることが少なくありません。そういう方は病識がないことも珍しくないので、そもそも病院受診していないものです。なので、病院の利用の有無に関わらず、社会的な人との関係性の維持しづらさがあれば、通常のコミュニケーションでは健全な関係は維持できないと思うことも大切です。
それは、あなた自身を守ることにもつながります。相手のパーソナリティに注目することなく、ただ普通のコミュニケーションを求めようとすると、うまく関係を維持できなかった時に「自分が悪いのかも」なんて、自分を責めてしまう形になってしまうものです。相手のパーソナリティに原因があるにも関わらず、いつの間にか自分のせいにしてしまう。それは、もったいないですよ。
今日のまとめをすると、困った関わりをしてくる人に対しては、まず普通の表情であっさりと「困る」と伝えてあげてください。その時には、あなたは感情をフラットにしてください。相手がもしも感情的になってきても、感情はフラットなままです。その方が解決しやすいものです。
最後に一つ付け加えます。今回のコメントをくれた方はまだ学生さんかもしれないですが、社会人になるともっと色々な人に遭遇します。「え〜」って驚くくらい、自分にはない色々なパーソナリティの方に巡り合います。
そんな色々なパーソナリティに、子どもの頃の親子関係も影響していることに気づけるようになるかもしれません。相手を求め続けてしまう満たされない心を持つ人が、実は子どもの頃に親の愛情に恵まれていなかった。そんなこともあるものです。それほど、子どもの頃の親子関係って大切なんです。
今回のケースに出てきた相手の方には、子どもの頃に親を求めたが応えてもらえずに満たされなかった過去を感じてしまいます。困ったことをしているその人も、実は被害者だった。そんな現実があることを最後に添えたいと思います。ある犯罪の背景には、子どもの頃の歪な家庭環境が隠れていることも少なくありません。
そういうことを理解すると、被害者が被害者を生むカラクリが見えてくるものです。結局親子の関わりのないところ、別の言葉で表現すると愛のないところには、人の生きやすさは生まれてこないということです。家庭で豊かな関わりを与えられなかったツケを、社会が払うことになる。そんな風に捉えることもできるかもしれませんが、僕はどちらかというと、社会が子育ての価値を理解していなかったツケを社会が払っているのだと思います。
今日は「こんな人への対応どうしたらいいですか」というテーマでお話ししました。
だいじょうぶ。
まあ、なんとかなりますよ。
湯浅正太(ゆあさしょうた)
PROFILE
2007年 3月 高知大学医学部 卒業。小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。
『みんなとおなじくできないよ』
障がいのある「おとうと」がいる小学生の「ボク」。おとうとのことを好きだけど、ちょっと恥ずかしく、心配にも感じている。複雑な感情と懸命に向き合って「ボク」がたどり着いた答えとは?「きょうだい児」ならではの悩みや不安、孤独な気持ちが当事者の視点から描かれた絵本。湯浅正太著/1760 円(日本図書センター)
『みんなとおなじくできないよ』
診察する, 治療する, 命と向き合う, …医師として働くとはどういうことか, 患者さんにどう接するか, “正解”はなくとも「考えて答えを出していかねばならない」倫理的なテーマについて医学生/研修医に向けて解説。小児科医であり絵本作家でもある著者が, 医療現場のエピソードに沿った「物語」を提供し, 読者に考えてもらいながら倫理観を育んでいく。「明日からの診療に役立つ一言」も記載し, 躓いたとき, 迷ったときに心の支えとなる書籍。湯浅正太著/2420 円(メジカルビュー社)
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