子どもの「生きる」を考える
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小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te
代表理事 
湯浅正太
みんなとおなじくできないよ

小児科医が心がける子どもたちの心理的安全性の作り方

2023/06/11

記事【小児科医が心がける子どもたちの心理的安全性の作り方】

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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる書籍「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる

#心理的安全性の作り方 #子育て #小児科医 #湯浅正太 #しょーた #Yukuriーte

こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。

今日は、「小児科医が心がける子どもたちの心理的安全性の作り方」というテーマでお話ししたいと思います。

あなたは、自分の心の動きを感じることはありますか?自分の心が今は穏やかでないな、とか。自分の気持ちがたかぶっているな、とか。そんな風に自分の心がどんな状態なのかを気にすることはありますか?

小児科医という仕事は、子どもたちに触れ合う仕事です。子どもたちの身体的な病気の治療だけでなく、心理的な健康も目標にしながら関わるわけです。子どもたちの心の健康を目指そうとすると、子どもたちにとって安心・安全な存在でいる必要があります。つまり、子どもたちに接する自分の心をコントロールする必要がある、ということです。

社会人の方々も、そんな風にきっと自分の心を俯瞰的に観察しながら、自分の心を整えることをしていると思います。例えば、取引先の方と交渉したり面談する際には、自分の心をなるべく穏やかに保ちながら接するようにしていると思います。

ここまでは、自分の心の話でした。それでは、今度は子どもの心を穏やかに保つことを考えてみたいと思います。

例えば、予防接種です。注射の針で体を刺される予防接種は痛いですよね。大人でも苦手な方が多いと思います。予防接種が好きなんて人はまずいないでしょう。そんな予防接種の際に、子どもの心をどうやって穏やかに保とうとするかを考えてみたいと思います。

子どもたちにとって、不安や恐怖を乗り越えるために欠かせないものが安心・安全な存在でした。心の拠り所になるものがあるから、困難を乗り越えられる。そんな安心・安全な存在になり得るものが、親です。

小児科医が子どもたちに予防接種をする時に気をつけるのは、安心・安全な親御さんにそばにいてもらうということです。親を身近に感じられるからこそ、子どもたちは痛い経験も乗り越えられるからです。心の中に安心・安全な親がいれば、子どもたちはチャレンジングな場面を乗り越えられるんです。

そんなことを考えながら予防接種をしていると、時々こんな子どもに出会います。親に対して「僕頑張れるから、大丈夫」「私は一人で大丈夫」と言ってくれる子どもたちです。

通常は身近に親がいなければ、なかなか困難を乗り越えにくい子どもたちです。でも、そんな親に「一人で大丈夫」と言える精神状態。どうでしょう。あなたなら、そんな子どもたちの心をどんな風に捉えますか?

色々な子どもたちに接している僕がそんな子どもに出会うと、「おそらく日頃から親子の関わりが充実しているんだろうな」と考えます。だから、「一人で頑張れる」なんて教えてくれる子がいたら、見えない糸でその親子がつながっているんだろうなあなんて思っています。口にはしませんけどね、でも「嬉しいな」なんて思っています。

そんなケースとは、真逆のケースがあります。不安が高まりやすい子どもたちです。予防接種でも、保育所でも、どこでも不安が高まりやすい子どもはいます。中には、子ども自身のパーソナリティのために、そんな反応を示す子どもがいます。でも、中には親子の関わりが薄いからこそ、そんな風に不安が高まりやすい子どもがいることも事実です。

子どもたちの心理的安全性をどう作るか。それは、子どもへの関わり方次第です。挨拶やスキンシップがどれほど効果的な関わりかは、多くの子どもたちをみてきたからこそわかります。本に書いてある何か特別な関わりに秘密が隠されているかというと、実はそういうわけではありません。ごくごく当たり前な温かい笑顔にあふれた関わりにこそ、子どもたちの心理的安全性を作り出すヒントが隠されています。

今日は「小児科医が心がける子どもたちの心理的安全性の作り方」というテーマでお話ししました。

だいじょうぶ、

まあ、なんとかなりますよ。

湯浅正太(ゆあさしょうた)

PROFILE
2007年 3月 高知大学医学部 卒業。小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。

一般社団法人 Yukuri-te(ゆくりて)

『みんなとおなじくできないよ』

障がいのある「おとうと」がいる小学生の「ボク」。おとうとのことを好きだけど、ちょっと恥ずかしく、心配にも感じている。複雑な感情と懸命に向き合って「ボク」がたどり着いた答えとは?「きょうだい児」ならではの悩みや不安、孤独な気持ちが当事者の視点から描かれた絵本。湯浅正太著/1760 円(日本図書センター)

『みんなとおなじくできないよ』

診察する, 治療する, 命と向き合う, …医師として働くとはどういうことか, 患者さんにどう接するか, “正解”はなくとも「考えて答えを出していかねばならない」倫理的なテーマについて医学生/研修医に向けて解説。小児科医であり絵本作家でもある著者が, 医療現場のエピソードに沿った「物語」を提供し, 読者に考えてもらいながら倫理観を育んでいく。「明日からの診療に役立つ一言」も記載し, 躓いたとき, 迷ったときに心の支えとなる書籍。湯浅正太著/2420 円(メジカルビュー社)

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