記事【小児科医がハマったゲームから表情の大切さを考える】
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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる書籍「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる
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こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。
今日は、「小児科医がハマったゲームから表情の大切さを考える」というテーマでお話ししたいと思います。
あなたはゲームってしますか?僕が小児科医として外来に出ていると、「オンラインゲームにハマってたいへんなんです」「夜は友達とオンラインでつながってゲームするから、なかなか寝ないんです」なんて声を聞きます。
僕は大人になってほとんどゲームはしないんですけど、子どもの頃はファミコンで遊んで楽しんでいた頃がありました。僕はどちらかというと冒険を楽しむゲームが好きだったので、自分一人で楽しむ時にはドラゴンクエストとか、ファイナルファンタジーとか、そんなゲームをしていた記憶があります。
ただそういうゲームにハマっていた時期にも、友達といることが多かったので、友達とみんなでマリオのゲームを楽しむとか、集団でゲームを楽しんでいることをしていました。
例えば、ゲームをしながら友達と爆笑したり、笑っている友達の笑顔を見たり、それは楽しかったなあと思います。そうやって友達との交流を楽しめる空間であったことは間違いがありません。
あるいは、現実世界に疲れて、空想の世界でホッと一息する、なんてこともあったかもしれません。そういうストレスを発散する場所でもあるわけですね。
そんなことを思いながら、今ゲームに熱中する子どもたちのことを考えます。
今は、オンラインで友達とつながりながらゲームをするという状況があるわけですが、相手の顔を見れない状態でゲームの世界に没頭する状況も多いと思います。言葉や表情でのコミュニケーションがないまま、ゲームの世界に没頭する。そのことが子どもの心にどれほど影響するんだろう。そんな視点で見ています。
ただ、僕は「昔はよかった」とか、「今の子は・・」という言葉はあまり好きじゃないんですね。時代とともに生き方が変わるのは当たり前だし、暮らす時代によって当たり前が違うものと思っているからです。
今を生きる子どもたちが将来大人になった時には、さらに想像もつかない生活があると思います。ゲームの世界に現れる自分の分身であるキャラクター、つまりアバターですね、それがよりリアルな人物として登場すると思います。AIの技術も進歩して、現実世界と空想の世界の違いが分かりにくくなるほど、どんどんリアルなゲームの世界が実現できるようになるでしょう。
そんな発展の中で、子どもたちの心をどうやって育てるのかを、ゲームの制作会社さんに考えてもらいたいと思います。そのことを期待したいと思います。
子どもの心の成長のために、プレイヤー同士の言葉を交わす機会を増やす、表情を確認できる機会を増やす。おそらく大切なことだろうと思っています。大切な心の原石を磨いている子どもの時期には、感情と共に表情を確認できる機会はとても大切です。
例えば、世の中には表情が乏しい方がいます。言葉を発していても、表情が乏しい。言葉の抑揚がない。そういった方が子どもの指導者だった場合には、子どもの調子が崩れることもしばしばなんです。なんでだと思いますか?それは、表情や言葉の抑揚が乏しいと、その人の感情を察知しにくくなるからです。だから、子どもたちは困惑してしまうんです。嬉しいの?悲しいの?怒っているの?そんな感情が読み取りづらいから、子どもたちが困ってしまうんです。
僕は小児科医として色々な支援者の方々と交流します。学校の先生、発達支援事業所の方、子どもたちを支援するグループのスタッフの方。そんな方々の中にも、子どもを支援したい気持ちはあるけれど、実際に子どもに接すると、子どもの調子が崩れてしまう。そんな支援者もいらっしゃいます。
そんな支援者の多くは、子どもからすると感情を読み取りにくい要素を持っていらっしゃったりします。表情が乏しかったり、言葉の抑揚がなかったり。そういった特徴です。この方は子どもにつながりにくいだろうなというのは、お話しすればすぐにわかるものです。
「表情が乏しいことの何が悪いの?」と思う方もいるかもしれません。表情って、コミュニケーションの上でとても重要な要素なんです。「言葉の方が重要でしょ」と指摘する方もいらっしゃるかもしれませんが、言葉も大切ですが、何よりも表情なんです。
例えば、「ありがとう」という言葉を考えてみましょう。
笑顔で「ありがとう」と言う。無表情で「ありがとう」と言う。どうでしょう。「ありがとう」の言葉の意味の伝わり方が全く違いますよね。笑顔で「ありがとう」と言ってくれたら、こちらは心地いい感情を抱きます。逆に無表情で「ありがとう」と言われたら、「本当は感謝していないんじゃないの?」なんて思いますよね。「ありがとう」で伝えたいはずの感謝の気持ちが全く伝わりません。それどころか、不快な気持ちを抱かせてしまうかもしれないですね。
言葉よりも表情が大切。そのことを理解したうえで、子どもを育てる際の親の感情表現について考えてみたいと思います。
親の表情の豊かさ、それは、子どもが親の気持ちを察するうえでとても重要な手掛かりになります。子どもがコミュニケーションを学ぶ上で、身近な親の表情が豊かかどうかはとても大切な要素なんです。どんな時にはどんな表情をするものなのか。どんな言葉にはどんな表情がマッチしやすいのか。そんなことを親の表情を見ながら学んでいくんです。
喜びの感情を親から共有してもらいながら、子どもは幸せを感じます。そうやって親に安心感を感じながら、生活での不安を乗り越えていきます。その一つひとつの積み重ねを経て、子どもの心は大きく育っていく。そういうものです。
これから色々な楽しいゲームが開発されると思います。子どもにとって表情がどれだけ大切なのか、そのことを意識いただきながら新しい時代のゲームを作っていただけるとちょっと安心です。
今日は「小児科医がハマったゲームから表情の大切さを考える」というテーマでお話ししました。
だいじょうぶ、
まあ、なんとかなりますよ。
湯浅正太(ゆあさしょうた)
PROFILE
2007年 3月 高知大学医学部 卒業。小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。
『みんなとおなじくできないよ』
障がいのある「おとうと」がいる小学生の「ボク」。おとうとのことを好きだけど、ちょっと恥ずかしく、心配にも感じている。複雑な感情と懸命に向き合って「ボク」がたどり着いた答えとは?「きょうだい児」ならではの悩みや不安、孤独な気持ちが当事者の視点から描かれた絵本。湯浅正太著/1760 円(日本図書センター)
『みんなとおなじくできないよ』
診察する, 治療する, 命と向き合う, …医師として働くとはどういうことか, 患者さんにどう接するか, “正解”はなくとも「考えて答えを出していかねばならない」倫理的なテーマについて医学生/研修医に向けて解説。小児科医であり絵本作家でもある著者が, 医療現場のエピソードに沿った「物語」を提供し, 読者に考えてもらいながら倫理観を育んでいく。「明日からの診療に役立つ一言」も記載し, 躓いたとき, 迷ったときに心の支えとなる書籍。湯浅正太著/2420 円(メジカルビュー社)
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