記事【あたたかい季節になって小児科医が思うこと】
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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる書籍「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる
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こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。
今日は、「あたたかい季節になって小児科医が思うこと」というテーマでお話ししたいと思います。
最近はだいぶ暑くなってきました。季節が少しずつ夏に近づいているんだなあ、なんて思います。ところで、あなたは気温が変わること以外に、季節が変わっていることを感じることってありますか?例えば、カエルの鳴き声とか、蝉の声なんていうのも、そうかもしれません。夏に近づいているなあなんて感じますよね。
小児科医として働いていると、流行っている感染症によって、「季節が変わったんだなあ」なんて感じるようになります。
例えば、「ヘルパンギーナ」と言われる感染症や「手足口病」という感染症です。どちらもエンテロウィルスという種類のウィルスによって起こることが知られています。そして、特に初夏から流行り始める感染症なんです。そんな「ヘルパンギーナ」「手足口病」が流行ってくると、夏になりつつあるんだなあと感じます。
あるいは、「インフルエンザ」です。寒くなってくる時期に流行りやすいですよね。受験勉強の子どもを抱える親御さんは、いかに子どもがインフルエンザにかからないようにするか、ということを考えると思います。
そんな風に季節によって流行る感染症も違うので、ある感染症の流行を感じて季節を感じる。そんなことが少なくありません。
感染症ばかりではありません。例えば、便秘症です。暑くなってくると、体は汗をかきやすくなります。体の水分が飛んでいって、便に含まれる水分も少なくなって固くなります。だから、気温が高くなってくると、便が固くなりやすく便秘症が悪化しやすくなる。便秘症の患者さんが症状が悪化しやすい夏の時期には特に、「水分は意識してとってくださいね」なんてお願いをします。
そして、起立性調節障害という病気も暑くなってくると悪化します。身体から熱を発散するために汗をかきます。そうした体の反応に合わせて血管は拡張します。血管が広がるということです。そうすると、頭から血がサーとひきやすくなる。フラフラなりやすくなるんです。
そんな風に、便秘や起立性調節障害などのように、季節によって症状の具合が変わるものって、意外と多いんです。
こういう知識を持っていると、何に役立つかというと、見通しを持って対応できるというメリットがあります。この季節になったら、体調はきっとこう変わる。そんな風に体の理解ができていると、体の様子が変化しても不安が起きにくくなります。「まあ、そうだよね」って思えるようになるんですね。
季節が夏に近づいてきて、子どもの体調が変化しても、落ち着いて対応できるようになるかもしれません。大人の側が落ち着いて行動できるので、子どもに対して「大丈夫」という言葉がけができるようになる。すると子どももホッとする。そういうものです。
体や病気のことがわかるって、本当に面白いんです。
今日は「あたたかい季節になって小児科医が思うこと」というテーマでお話ししました。
だいじょうぶ、
まあ、なんとかなりますよ。
湯浅正太(ゆあさしょうた)
PROFILE
2007年 3月 高知大学医学部 卒業。小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。
『みんなとおなじくできないよ』
障がいのある「おとうと」がいる小学生の「ボク」。おとうとのことを好きだけど、ちょっと恥ずかしく、心配にも感じている。複雑な感情と懸命に向き合って「ボク」がたどり着いた答えとは?「きょうだい児」ならではの悩みや不安、孤独な気持ちが当事者の視点から描かれた絵本。湯浅正太著/1760 円(日本図書センター)
『みんなとおなじくできないよ』
診察する, 治療する, 命と向き合う, …医師として働くとはどういうことか, 患者さんにどう接するか, “正解”はなくとも「考えて答えを出していかねばならない」倫理的なテーマについて医学生/研修医に向けて解説。小児科医であり絵本作家でもある著者が, 医療現場のエピソードに沿った「物語」を提供し, 読者に考えてもらいながら倫理観を育んでいく。「明日からの診療に役立つ一言」も記載し, 躓いたとき, 迷ったときに心の支えとなる書籍。湯浅正太著/2420 円(メジカルビュー社)
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