記事【小児科医が発達障害について思うこと】
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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる書籍「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる
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こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。
今日は「小児科医が発達障害について思うこと」というテーマでお話ししたいと思います。
あなたは「発達障害」という言葉を聞いたことがありますか?僕は小児科医として、発達障害に関する講演をさせていただくことがあります。もう少ししたら、このvoicyでも僕が講演会でお話ししているような内容を共有したいと思っています。ただそれは、有料放送になるだろうと思うので、まずは発達障害について、僕が普段感じていることをここでお話ししておきたいと思います。
発達障害に関する社会的関心は、最近大きく変化しています。例えば芸能人の方が「私は発達障害のようです」と発信したり、「歴史上の人物が発達障害だったんじゃないか?」なんて書かれている記事を目にすることもあります。それほど、「発達障害」という言葉は有名になりました。
発達障害は、脳の発達に起因する一連の障害の総称です。主な発達障害としては、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)などがあります。これらの障害は、社会的交流の場面、学習の場面などで問題を引き起こすことがあります。
そんな発達障害について、もっと発達障害を正しく理解してもらいたい、そんな意識から、専門家、教育機関、メディアによる情報の普及や啓発活動が行われています。個人の経験が共有される場合もあります。発達障害を持つ個人やその家族が、自身の経験を積極的に共有することで、社会的な意識を高めています。
僕は医療現場で発達障害に向き合っていますが、発達障害の診断や治療方法が改善しつつあるのは間違いありません。ただ、まだまだ課題と改善の余地がある分野です。血液検査で白黒はっきりできる分野ではありません。だからこそ、診断の根拠がわかりにくい分野でもあるんじゃないでしょうか。
そんな発達障害について、小児科医である僕は「少し気をつけたいな」と思う側面がある。そんなことをちょっとお話ししたいと思います。
あなたに質問です。発達障害という言葉は何のためにあると思いますか?あるいは、障害という言葉は何のためにあるんでしょう?どうですか、あなたなら、なんて答えますか?
僕は、これらの言葉は、社会に支援が必要であることを示すためにある、と思っています。それは決して偏見やレッテルを生み出すためのものではありません。当たり前ですが、この認識はとても重要なことと思っています。
世の中には、ご本人は困っているにも関わらず、親御さんが病名にこだわるあまり、「この子は障害児ではない」といって子どもが適切な支援を受けられずに、その子が被害を被るというケースがあります。学歴社会を意識したり、優生思想にとらわれがちな親御さんの場合、特にそのことを顕著に感じます。
もちろん、お子さんの状態をどう捉えるかということは、その家族の思想によります。一方的に障害という枠組みで捉えることは良くない。そう思います。
ただ、本人がその障害で困っている場合、社会がその子を救うためには理由が必要です。国民の税金を使って支援を届けることが多いので、しっかりした理由がなければ行政は動くことができません。社会に対して支援を求める根拠が、診断です。この子にはこういう理由があるから、支援をお願いしたい。それが、診断と支援の関係です。
障害という用語は、決してレッテルを貼るための言葉ではありません。それは、必要な人に必要な支援を届けるための言葉です。
その子が生まれて死ぬまでの一生を考えたうえで、その子が困らないためにできることは何のか。それを考えた時に、障害という診断が必要であれば、診断する。逆に、診断しても、特に支援状態が変わらないのであれば、診断する意味はないでしょう。
そんなことを考える時に、どこに正解があるかといえば、その子の幸せにこそ正解があるのだと思います。その子の幸せよりも、例えば親御さんのエゴだったり、社会の偏見だったり、そういったものが目立ってしまうケースがあるんです。中には、子どもを助けるために児童相談所にもご相談する場合もごく稀にあります。
子どもの一生に渡った幸せを考えながら、発達障害を考えたい。レッテル貼りでも、なんでもなく、子どもの幸せを考えて、障害の言葉を用いる。そういうことを思うんですね。
今日は「小児科医が発達障害について思うこと」というテーマでお話ししました。
だいじょうぶ、
まあ、なんとかなりますよ。
湯浅正太(ゆあさしょうた)
PROFILE
2007年 3月 高知大学医学部 卒業。小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。
『みんなとおなじくできないよ』
障がいのある「おとうと」がいる小学生の「ボク」。おとうとのことを好きだけど、ちょっと恥ずかしく、心配にも感じている。複雑な感情と懸命に向き合って「ボク」がたどり着いた答えとは?「きょうだい児」ならではの悩みや不安、孤独な気持ちが当事者の視点から描かれた絵本。湯浅正太著/1760 円(日本図書センター)
『みんなとおなじくできないよ』
診察する, 治療する, 命と向き合う, …医師として働くとはどういうことか, 患者さんにどう接するか, “正解”はなくとも「考えて答えを出していかねばならない」倫理的なテーマについて医学生/研修医に向けて解説。小児科医であり絵本作家でもある著者が, 医療現場のエピソードに沿った「物語」を提供し, 読者に考えてもらいながら倫理観を育んでいく。「明日からの診療に役立つ一言」も記載し, 躓いたとき, 迷ったときに心の支えとなる書籍。湯浅正太著/2420 円(メジカルビュー社)
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