記事【小学生のキミに】
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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる書籍「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる
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こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。
ゴールデンウィークの今日をあなたはどんな風に過ごしているでしょうか。僕はというと、市内の「急病診療所」というところで働いていました。市内のクリニックの医師が協力しながら持ち回りで「急病診療所」に勤務しているんですね。そんな仕事が終わって、こうしてVoicyを収録しているところです。
そんな今日は、今小学生として頑張っている子どもたちに向けて、「小学生のキミに」というテーマでお話ししたいと思います。
小学生のキミは、今をどんな風に生きていますか?自分の将来にワクワクしながら生きていますか?小学生の今を楽しんでいますか?それとも、将来のことがちょっと心配になりますか?
今を一生懸命生きるキミが、楽しい将来を手に入れるために知ってもらいたいことがいくつかあります。それをちょっとお話ししてみたいと思います。
キミにまず知ってもらいたいことが、「こうでなければならない」ということはない、ということです。
例えば、僕は医師として働いています。小児科医と言って、子どもの病気をみるお医者さんをしています。そんな医師になる方法は色々あります。「中学校、高校、大学」へ通って医師になる方法もあります。でも、そういう人ばかりではありません。一度他の仕事をして、「やっぱり医師になりたい」と思って医師になる人もいます。
僕はというと、中学校に行って、高校に行って、大学に行って、という流れで医師になりました。それは僕が少年の頃には、そういう道しか知らなかったからです。一旦他の仕事を経験した後に医師になる人がいることを全く知りませんでした。
それに実はもっと色々な医師がいます。医師になるためには、大学の医学部っていうところに入る必要があるんですけど、例えば、日本の医学部じゃなくて、海外の医学部に入学して、それから日本に戻って医師の仕事をしている人もいます。
あるいは、医師になろうと思って医学部に入ってみて、「やっぱり自分には医師は向いていない」と思って、他の職業を目指す人もいます。
僕自身が医師になって、そういった色々な人に出会うことで、「こんな道もあるのかあ」なんて思ったものです。色々な人に会えば会うほど、世の中に「こうでなければならない」ということはなくて、「こうでなくてもいい」ということがいっぱいあることに気づきます。そういうものです。
では、次にキミに知ってもらいたいことの二つ目です。
一つの生き方にこだわらないで、どんな道を行ってもいいので、キミにぜひやってもらいたいことがあります。それは、キミがやりたいと思うことに全力投球してみるということです。
スポーツがやりたかったら、そのスポーツに全力投球する。カブトムシが好きで、カブトムシのことを知りたければ、徹底的にカブトムシを調べてみて下さい。
そうやって一つのことに打ち込む経験をすると、わかることがあります。「自分の興味のあることに徹底的に打ち込むことが、どれほど楽しいものなのか」、それがわかると思います。しかも、疲れを知らずに、自分が関心あることにどんどんエネルギーを注げることもわかると思います。
キミにとって、その経験はきっと将来役に立ちます。
そんな風に、好きなことに打ち込む時、ぜひ知っておいてもらいたいことがあります。それが、キミに知ってもらいたいことの三つ目です。
それは、いっぱい失敗をしていい、ということです。
学校の勉強だけしていると、ひょっとしたら勘違いしてしまうかもしれません。「テストで100点をとったら褒められる」「テストで0点をとったら叱られる」、そんな経験をしていたら、「間違っちゃダメなんだ」と思ってしまうかもしれません。そんなことありません。
キミは、かけっこして転んで膝を擦りむいて怪我をしたことはありますか?怪我をすることは、一種の失敗かもしれません。でも、転んだキミは、「次は転んで痛い思いをしないように気をつけよう」と考えます。そうすると、転ぶことが減って、スタスタ走れるようになるものです。失敗すると、結局最後にはうまくいく、ということです。
それだけじゃありません。キミは怪我をして「痛い」という感覚を覚えます。そういう経験をするからこそ、相手の痛みもわかるようになるものです。友達が転んだら、「痛そう」と思える。それは、キミに失敗した経験があるからです。
体って、手や足だけではないですよね。頭の中には何がありますか。頭の中には「脳」があります。脳は何するところでしょう?脳は、考えたり、手足を動かす指令を出したりするところです。「脳で考える」「脳で思う」、そんな風に脳は「感じる」ところなんです。
その「脳」には、「心」も含まれます。嬉しい気持ち、悲しい気持ちを感じる心は、実は脳の中にあります。キミが嬉しい気持ちを感じるのも、悲しい気持ちを感じるのも、すべてキミの脳なんです。
膝を擦りむいてキミが怪我をするのと同じように、脳も傷つくことがあります。頭を直接ぶつけると脳を怪我することもありますが、そのほかにも脳が傷つくことがあります。それが、「心の傷」というものです。
キミが悲しいことや辛いことを経験した時、「心が痛む」なんて表現をします。それは、脳が怪我をしているようなものです。キミが何かに失敗した時、気持ちが落ち込むこともあると思います。そうやって脳が傷ついていた経験をするから、キミは相手の気持ちを察することができるようになります。「今悲しいのかな」「今不安なのかな」、そんな風に相手の心を感じられるようになるものです。
自分が失敗して傷ついたことがあるからこそ、同じ立場の相手の気持ちを思いやることができるようになります。
こんな風に、失敗は決して失敗で終わりません。「失敗は成功のもと」であり、「失敗は成長のもと」なんです。そういうものです。だから、失敗をダメなものとは思わないで大丈夫です。失敗したキミは、必ず新しいキミに生まれ変わるからです。
そして、最後にお願いです。
キミが転んで膝を擦りむいた時、キミはその傷をどうやって治しますか?傷口を洗って、治るのをそっと待ちますよね。傷口をずっといじっていると、傷口がもっと変に悪化してしまいますからね。そっとしておきますよね。
心、あるいは脳も同じなんです。もしもキミがちょっと辛い経験をして心が傷ついた時、ちょっと休むということが大切なんです。心を休める、脳を休めることで、その傷は治ります。
さらに、心を治すために、脳の傷を治すために大切なことがあります。それが、誰かに「相談する」ということです。自分だけで考えずに、他の人に相談する。そうすることで、心の傷は治りやすくなります。
世の中には色々な人がいます。考え方も違います。見た目も違います。ときには、人の陰口を言っている人を見て、なんだか嫌な気持ちを抱くこともあるかもしれません。自分とは違う人たちが社会にはたくさんいるので、キミは「ちょっと疲れたなあ」なんて思うこともあるでしょう。
そんな時は、ぜひ今日僕がお話ししたことを思い出してみて下さい。今日のことを理解してくれれば、楽しいことや嬉しいことを呟く余裕が出てくるものです。
今日は「小学生のキミに」というテーマでお話ししました。
だいじょうぶ、
まあ、なんとかなりますよ。
湯浅正太(ゆあさしょうた)
PROFILE
2007年 3月 高知大学医学部 卒業。小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。
『みんなとおなじくできないよ』
障がいのある「おとうと」がいる小学生の「ボク」。おとうとのことを好きだけど、ちょっと恥ずかしく、心配にも感じている。複雑な感情と懸命に向き合って「ボク」がたどり着いた答えとは?「きょうだい児」ならではの悩みや不安、孤独な気持ちが当事者の視点から描かれた絵本。湯浅正太著/1760 円(日本図書センター)
『みんなとおなじくできないよ』
診察する, 治療する, 命と向き合う, …医師として働くとはどういうことか, 患者さんにどう接するか, “正解”はなくとも「考えて答えを出していかねばならない」倫理的なテーマについて医学生/研修医に向けて解説。小児科医であり絵本作家でもある著者が, 医療現場のエピソードに沿った「物語」を提供し, 読者に考えてもらいながら倫理観を育んでいく。「明日からの診療に役立つ一言」も記載し, 躓いたとき, 迷ったときに心の支えとなる書籍。湯浅正太著/2420 円(メジカルビュー社)
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