記事【小児科医が文章を書くときの優先順位】
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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる書籍「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる
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こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。
最近僕の書籍「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の重版が決まりました。「重版」という言葉を知らない若い方もいるかもしれないので説明しておきます。重版とは、一度出版した本を再度印刷出版することを言います。一度印刷して出版した本が売れていって、もう一度印刷する必要が出た時に重版になります。
これは、執筆者にとっては嬉しいニュースです。例えば「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」という書籍は、社会を生きる若者たちに向けて書いた本です。社会を渡っていく上で大切と思うことを、色々と書かせて頂いた本です。その本が重版になってくれれば、より多くの若者たちの眼に触れる機会が増えます。
そんな今日は「小児科医が文章を書くときの優先順位」というテーマでお話ししたいと思います。
小児科医という仕事をしていて思うのは、医師の仕事は理系の仕事なんだか、文系の仕事なんだかわからない、ということです。もちろん、薬の計算をする、統計を使う、という理系的な面もあります。でも、それよりも何よりも文章を扱うことがとても多いんですね。
カルテを書く、紹介状を書く、診断書を書く、論文を書く、依頼原稿を書く。こんな風に文章を書かない日はありません。自分が書くだけでなく、他人の文章にも目を通します。チーム医療ですから他の医療スタッフのカルテを読む、紹介状を読む、薬や検査の説明書を読む。常に文章と睨めっこです。
最近つくづく思うのは、「漢字を忘れがちだなあ」ということです。診療中にはパソコンでカルテや紹介状や診断書を書きます。そんなときに文字をタイピングすると、自動的に漢字に変換されます。医療現場以外でも、自分のパソコンを使って文章を書きますから、やっぱり自動変換で漢字が現れます。
すると、自分の中で漢字を意識しなくても、自動的に漢字が書けてしまうんですよね。これはとても便利ですが、困った事態が起こります。漢字を忘れてしまうんです。
最近では、カルテはほとんど電子カルテになりました。つまり、パソコンで患者さんのカルテを書くんです。ほとんどの病院が電子カルテ。でも、中には電子カルテではないところもあります。例えば、バイト先の古い診療所などです。
ある時、こんなことがありました。僕がとある診療所に行った時、そこでは昔ならではの紙カルテしかなかったんですね。電子カルテに慣れている僕が、患者さんの所見を紙カルテに書こうとした。そうしたところ、「あれ?どんな漢字だったかな?」なんて、自分が書こうとしている漢字を忘れてしまっている自分に気がつきました。
そして、そんな紙カルテを使いながら、他の医師が書いていることを確認しようとしたら、他の先生の字が汚すぎて何が書いたあるのかわからなかったんですね。「昔の先生はよくこんな情報でチーム医療をしていたなあ」なんて思いました。
こんな風に、医師という仕事の大半が書くこと、と言っても過言でないと思っています。
そんな僕が少年時代から「書くことが好きだったか」「書くことが上手だったか」というと、まったくそうではありませんでした。文章を書くことについて褒められた記憶はほとんどないんですね。今は、書くことは嫌いではありませんが、書くことが上手とは思っていません。
でも、「自分の文章には伸び代がある」なんてポジティブに思っています。元々変な自信のようなものがあるのが僕なので、歳を重ねても、いつまで経っても、「まだまだこれからの自分に期待したい」なんて思っています(笑)
そんな風に毎日書いてばかりの暮らしを送っていると、「文章を書くときの優先順位」というのができてきます。あなたにもありますか?文章を書くときに、どんなことを意識して文章を完成させていきますか?
僕が文章を書く場合、最も優先していることは、「ひとまず書く」ということです。「ああでもない、こうでもない」と悩んでいるよりも、思いついた文章でいいので「ひとまず書く」ということです。
下手でもいいんです。文章がめちゃくちゃな配列であってもいいんです。起承転結はひとまずどうでもいい。とにかく「ひとまず書く」ということです。
僕は、自分の文章を書くということ以外に、時々他人の文章の添削をさせてもらうことがあります。その時に最も困るのが、「そもそも文章が出来上がらない」ということです。そもそも文章が出来上がってこないと、文章を磨くステージにさえ上がれません。
「納得いく内容を書こうと思うと、なかなか書けないんです・・」なんて返事が返ってくる時には、「ひとまず書いてみよう」とお伝えします。最初から100点満点でなくていいんです。文章を作った後に色々磨いていく。すると、その人らしい文章が出来上がるものです。
「ひとまず書く」ということの次に、僕が大切にしていること、それは「一文をなるべくシンプルにまとめる」ということです。一文をつらつら長く書くのではなくて、できるだけ短くコンパクトに区切るようにしています。
一文が長いと、その文を理解するのに時間がかかります。「この言葉はどこの言葉の修飾を受けているんだろう」なんて考えて読む必要が生じてしまうんです。読むのに時間がかかる文章とは、つまり読みにくい文章です。だから、なるべくスラーと流し読みできるように、一文は短くまとめます。
そして、優先順位の3番目は、文章全体を読み直すということです。文章を読み直すことで、自分が気づけていなかった誤字脱字に気づきます。それに、パラグラフの配置の工夫ができるようになるのです。
こんな風に自分が社会人となって、頻繁に文章と向き合うようになって思うことがあります。それは、「国語」は大切だなということです。文章を作るというアウトプットも大切ですが、他人が作った文章を読んで学ぶというインプットも欠かせません。国語の授業の大切さがよくわかります。
それに、文章を書くようになって思うのは、どんな文章にもその人らしさがあって素晴らしい、ということです。子どもたちの書いてくれた文章を見ても、どの文にもその子らしさを感じます。その年齢、その時代、そういったものを背景にして、今しか表せないものがそこにはあります。
時々文章の添削とやらで、赤ペンで修正させられた作文を目にすることがあります。学校で作った文章だったり、あるいは進学用の推薦文だったりです。修正されすぎた文章には、やはりその子らしさは感じられません。修正ばかりされている文章は、添削した人の文章になってしまっています。それは、勿体ない。そう思ってしまうんですね。
やはり、その子らしさを大切にしながら、その子の文才を育てたいものです。そのことを意識できるためには、やっぱり自分で文章を書いてみることが必要なはずです。
僕の書籍「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」は、医師ばかりを対象にした本ではありません。これから社会人として歩もうとしている方に向けて書いた本です。社会に出る前に学生時代に知っておきたかったという内容を書かせていただきました。あなたもぜひ一度読んでみてください。
今日は「小児科医が文章を書くときの優先順位」というテーマでお話ししました。
だいじょうぶ、
まあ、なんとかなりますよ。
湯浅正太(ゆあさしょうた)
PROFILE
2007年 3月 高知大学医学部 卒業。小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。
『みんなとおなじくできないよ』
障がいのある「おとうと」がいる小学生の「ボク」。おとうとのことを好きだけど、ちょっと恥ずかしく、心配にも感じている。複雑な感情と懸命に向き合って「ボク」がたどり着いた答えとは?「きょうだい児」ならではの悩みや不安、孤独な気持ちが当事者の視点から描かれた絵本。湯浅正太著/1760 円(日本図書センター)
『みんなとおなじくできないよ』
診察する, 治療する, 命と向き合う, …医師として働くとはどういうことか, 患者さんにどう接するか, “正解”はなくとも「考えて答えを出していかねばならない」倫理的なテーマについて医学生/研修医に向けて解説。小児科医であり絵本作家でもある著者が, 医療現場のエピソードに沿った「物語」を提供し, 読者に考えてもらいながら倫理観を育んでいく。「明日からの診療に役立つ一言」も記載し, 躓いたとき, 迷ったときに心の支えとなる書籍。湯浅正太著/2420 円(メジカルビュー社)
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