記事【強みの現れ方知らないんですか】
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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる書籍「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる
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こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。
今日は「強みの現れ方知らないんですか」というテーマでお話ししたいと思います。
あなたには強みはありますか?仮に自分の強みを理解できているとして、その強みにはいつ気づきましたか?周りの大人は、あなたの強みに気づいてくれていますか?どうでしょう。
人には承認欲求というものがあると言われています。「自分を認めてもらいたい」という欲求ですね。特に子どもたちはその欲求が強いものです。この「子どもを認める」という点で、とても大切なことがあります。
それは、子どもの身体のカラクリを理解する、ということです。今日はそのことを少し考えてみたいと思います。
当たり前のことですが、医師として治療を行うには、人の身体のカラクリを理解する必要があります。この治療を行うと、身体はどう反応するのか。今の身体の調子は、今後どんな経過を辿るのか。そんなことを理解しながら、目の前の患者さんの治療にあたります。
すると、改めて理解しするのは、人の身体には、その身体が治るパターン、改善するパターン、発展するパターンがやはりある、ということです。そこにはある程度決まった原則があるんです。このパターンを意識できているかどうかは、目の前の患者さんを治療する上でとても大切なことなんです。
なんでだと思いますか?身体がどんな風に変化するものなのかを意識できることが、治療者にとってとても重要な意味を持つんですが、どうしてでしょうか?
それは、見通しを持って、心を穏やかに保ちながら相手に向き合えるからです。
医師としてそういう経験をする僕が、子どもたちの問題に向き合う中で感じるようになったことがありました。それは、この子どもの身体の変化への見通しって、親にとってもとても大切なことなんだ。そう気づくようになったんですね。
どういうことか、ちょっと説明しますね。
これまでの放送で何度もお話ししていますけど、毎日子どもに接している親御さんって、毎日子どもたちにカウンセリングを行っているようなものなんです。そのカウンセリングがいい効果を生み出すポイントは、カウンセリングを行っている人が穏やかな心でいることでした。
つまり、毎日子どもたちに接している親御さんについても、同様のことが言えます。毎日子どもに接している親御さんは、心が穏やかな状態で子どもたちに接することができれば、子どもたちの心も良い状態へと変化します。
そんな風に、親御さんが心穏やかにいられるために、欠かせないものがあります。何だと思いますか?それは、見通しです。
子どもの状態がこれからどんな風に変化するのか。そういった見通しが持てていると、親御さんの心に余裕が生まれます。「子どもたちはきっとこういう変化を起こす」、そんな見通しがあれば、心を穏やかにしながら、子どもたちを見守れるものです。
そこで、先ほどの身体の変化のパターンの話に戻ります。
僕たち小児科医あるいは医師は、身体の変化のパターンを知っています。これから目の前の患者さんの身体がどんな変化を迎えるのか。それを理解しているからこそ、落ち着いて焦らずに治療を行えるんです。
それと同じように、例えば親御さんが子どもたちの言葉の発達のパターンを理解していたら、どうでしょう?子どもたちの発達を楽しみながら、色々な関わりを工夫できるかもしれません。
そこで、あなたに特に知っていただきたいのは、「突然ふっと前進する」という人の身体の変化です。
例えば、子どもたちの発達を考えてみましょう。子どもたちの発達は坂道のようにスルスル〜っと発達しているわけではありません。ある時は横ばいに停滞して、しばらくして突然ふっと物事ができるようになります。単語を喋れなかった子どもが、ふっとある時突然単語を喋ります。独り歩きできなかった子が、ある時ふっと突然独り歩きできるようになります。
ある時、ふっとできるようになるんです。それは、発達だけではありません。身体の回復もそうです。
風邪をひいたことがある人は多いと思います。その風邪が治る時、スルスル〜っと良くなっていくというよりも、最後のある段階からふっと身体が楽になる時があったと思います。「あ、今日からはずいぶん楽になった」、そんな風に感じたことがある人は少なくないと思います。
そのように、発達や治癒といった身体の変化は、突然ふっと良くなる時点があるものです。
それを理解していただくと、「子どもの強み」ってどんな風に現れると思いますか?そうです、ある時、ふっと現れるんです。それまでは、そのことに気づかずに能力が停滞しているかもしれません。でも、ある時ふっと能力が身についているものです。
例えば、テストの点数です。よく言われることですが、学習を続けていると、しばらくは成績が伸び悩む時期を経験しながらも、ふっと成績が上がる時期を迎えることがあります。やっぱり、人の能力って、ある時ふっと良くなるんです。
つまり、何を言いたいかというと、「子どもの強み」にはなかなか気づかずにいても、信じていれば、いつかふっとその強みを獲得してくれるものなので、それまでは辛抱強く見守ってあげてください、ということです。
世の中に「大器晩成」なんて言葉がありますね。こんな言葉があるということは、先祖の人たちは子どもたちの能力が後になっていつの間にかふっと現れることを知っていた、ということだと思います。しかも、そのことを後世に伝えたかったからこそ、この言葉が残っているんでしょう。
ご先祖さんたちは、親になる後世の人たちに「子どもたちの可能性を信じてもらいたい」という願いを込めて、この言葉を残してくれたんだと思うんですね。それは、今回の話をしている僕の気持ちと同じです。
子どもたちの強みの現れ方を理解していないと、「どうせできないわよ」「どうせ、蛙の子は蛙なの」、そんな風に子どもたちに接してしまって、成長のチャンスに気づけないかもしれない。それは、その家庭にもったいないどころか、人類にとって大きな損失です。
子どもたちの成長のパターンを理解することで、じっくり子どもたちに向き合えるようになります。「大丈夫かな?」なんて不安に操られずに、しっかりと子どもたちに笑顔を見せられる。それは、子どもたちの健全な発達にとって、とても重要なことなんです。
今日は「強みの現れ方知らないんですか」というテーマでお話ししました。
だいじょうぶ、
まあ、なんとかなりますよ。
湯浅正太(ゆあさしょうた)
PROFILE
2007年 3月 高知大学医学部 卒業。小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。
『みんなとおなじくできないよ』
障がいのある「おとうと」がいる小学生の「ボク」。おとうとのことを好きだけど、ちょっと恥ずかしく、心配にも感じている。複雑な感情と懸命に向き合って「ボク」がたどり着いた答えとは?「きょうだい児」ならではの悩みや不安、孤独な気持ちが当事者の視点から描かれた絵本。湯浅正太著/1760 円(日本図書センター)
『みんなとおなじくできないよ』
診察する, 治療する, 命と向き合う, …医師として働くとはどういうことか, 患者さんにどう接するか, “正解”はなくとも「考えて答えを出していかねばならない」倫理的なテーマについて医学生/研修医に向けて解説。小児科医であり絵本作家でもある著者が, 医療現場のエピソードに沿った「物語」を提供し, 読者に考えてもらいながら倫理観を育んでいく。「明日からの診療に役立つ一言」も記載し, 躓いたとき, 迷ったときに心の支えとなる書籍。湯浅正太著/2420 円(メジカルビュー社)
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