記事【その子にとっての幸せ】
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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる書籍「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる
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こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。
放送に対するコメント、ありがとうございます。子どもに対する接し方は、大人にも通じることですね。本当にそう思います。「子ども」と「大人」、それは人が決めているラベルに過ぎませんからね。「子ども」も「大人」も、一人の同じ人間であるわけです。
成長して社会のカラクリが理解できるようになって、物事を多角的に捉えられる能力を獲得していくかもしれません。でも、心の反応は同じわけです。小児科医として子どもたちや親御さん、あるいは子どもを支援する専門家の方々に接していると、「結局、心の反応は皆同じ」ということを理解するようになります。
つまり、子どものことを知るということは、人間の性質を理解するということです。子どもの一つひとつの行動や病気、障がいを理解すると、様々な出来事がつながるわけです。そうなると、社会の見方が変わっていきます。
面白い話をすると、例えば、僕がある作品を読んだとします。その作品を読み進めていくと「物事をこう捉えるこの作家さんは、人生の中でこんな経験をしているかもしれない、精神的にはこんな心理状態を経験したのかもしれない」、そんな風に一個人が作った作品にまで人の心とのつながりを想像するようになります。物事を捉える世界が広がるということです。それは実に面白い世界なのです。
そんな風に僕は「結局子どもも大人も同じ人間」というスタンスで生活しています。そんなスタンスで、今日は「その子にとっての幸せ」というテーマでお話ししたいと思います。「大人だからといって偉そうな態度はとらないでくださいよ」なんて話をしたいと思います。
ちょっと脱線しますが、あなたには生活の中で大切にしている物事があったりしますか。例えば、僕は紅茶を飲むことが好きなので、毎日欠かさず紅茶を飲みます。別にたいそうな準備をするわけではなくて、安くて気軽に飲める紅茶でいいので、ちょっと温かいミルクティーにして飲むのが好きなのです。
それは、僕にとってのルーティンと言えるかもしれません。
子どもたちにもそんなルーティンがあるものです。特定のシャーペンを使いたい。特定の服を着たい。食事を食べる時にはこの食器を使いたい。そんな風に「その子にとっての決まりごと」があるでしょう。それは別の言い方をすると、「その子が落ち着く、その子にとってのちょっとした幸せ」かもしれません。
小児科医として大切にしたいと思うことは、その「子どもたちのちょっとした幸せ」です。その子が大切にしているもの、その子の心が落ち着くその子独特の行動、そういうものを大切にしたいと思っています。
でもそれは、大人も同じです。会社に通勤したら、まずはコーヒーを一杯飲んでから仕事を始める、とか。ある時間になったら決まってトイレに行く、とか。その人なりのルーティンがあるものです。
そんな風に、子どもも大人も同じで、自分の心が落ち着くように、自分の幸せを維持するための決まった行動があるものです。
でも、です。そんな風に子どもも大人も、心が落ち着く行動があるはずですが、子どもと大人とで、その行動のとりやすさが違うんです。そのことをお話ししたいと思います。
大人って傲慢ですから、自分のやりたいようにやろうとしてしまうんですよね。子どもが大人の指示に従わなければ、大人の都合に合わせようとしてしまう。「なんでいうこと聞けないの!」なんて、子どもに怒ってしまう。小児科医になり感じるのは、そんな身勝手な大人の姿です。
子どもを支援する、という現場にもそんな側面があります。子どもを支援するというと、なんだか高尚な素晴らしいことのように聞こえますが、子どもの支援の現場を見ていると「ん?これは、大人の一方的な思いを子どもに押し付けているだけではないか?」なんて思うことも少なくありません。
大人にも個性があります。一歩引くことが難しい大人、自分の意見を通さずにはいられない大人はいるものです。そういう大人が子どもを支援するとどうなるか。「子どもへの支援」のはずが、「子どもへの強制」になっていたりします。
そういう現場で子どもたちはどうなるでしょう。子どもたちは心が不安定になります。そりゃそうですよね、一方的に物事を押し付けられるんですから、子どもは落ち着かなくなり、そういう大人の元には行きたくなくなります。
その子にとっての「幸せ」「大切なこと」を考える。
大人の一方的な都合で子どもを操作しない。
子どもたちの心に寄り添う仕事をしていると、そういう思いを抱くことが少なくありません。ですから、もちろん自分のことも振り返るわけです。自分が子どもたちにどんな風に接しているのかな。そんな風に自問自答しながら、俯瞰的に自分を見ることに努めるわけですよね。
自分の正義を相手に押し付けていないか。自分が正しいと思い込んでないか。客観的に見て、自分の意見は納得いくものなのか。そんなことを思うわけです。
面白いことに、このことは大人の世界にも通じることです。上司の立場の人たちが自分の正義を部下に押し付けていないか。そんなシチュエーションが大人の世界にもあるものです。
やっぱり子どもも大人も同じ生き物なんですね。
今日は、「その子にとっての幸せ」というテーマでお話ししました。
だいじょうぶ、
まあ、なんとかなりますよ。
湯浅正太(小児科医、Yukuri-te代表 https://yukurite.jp/)
湯浅正太(ゆあさしょうた)
PROFILE
2007年 3月 高知大学医学部 卒業。小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。
『みんなとおなじくできないよ』
障がいのある「おとうと」がいる小学生の「ボク」。おとうとのことを好きだけど、ちょっと恥ずかしく、心配にも感じている。複雑な感情と懸命に向き合って「ボク」がたどり着いた答えとは?「きょうだい児」ならではの悩みや不安、孤独な気持ちが当事者の視点から描かれた絵本。湯浅正太著/1760 円(日本図書センター)
『みんなとおなじくできないよ』
診察する, 治療する, 命と向き合う, …医師として働くとはどういうことか, 患者さんにどう接するか, “正解”はなくとも「考えて答えを出していかねばならない」倫理的なテーマについて医学生/研修医に向けて解説。小児科医であり絵本作家でもある著者が, 医療現場のエピソードに沿った「物語」を提供し, 読者に考えてもらいながら倫理観を育んでいく。「明日からの診療に役立つ一言」も記載し, 躓いたとき, 迷ったときに心の支えとなる書籍。湯浅正太著/2420 円(メジカルビュー社)
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