記事【はじめてみよう子どもへのこんな工夫】
このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。
【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる書籍「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる
#完璧じゃないけどはじめたい #はじめてみよう子どもへのこんな工夫 #子育て #小児科医 #湯浅正太 #しょーた #Yukuriーte #イーズファミリークリニック本八幡
こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。
2023年3月8日の今日は、「はじめてみよう子どもへのこんな工夫」というテーマで短くお話ししたいと思います。
あなたは、あなたらしい今のコミュニケーションをどうやって獲得したと思いますか。自然と身についたと思いますか。それとも、誰かに教わったと思いますか。
あなたのコミュニケーションの土台は、あなたの親御さんとの会話です。だからこそ、あなたの言葉の端々に、あなたの親御さんの口調が宿ります。そういうものです。
つまり、子どもたちの会話の口調を聞いていれば、家庭での親御さんの口調がわかります。家庭での親御さんの会話が柔らかい落ち着いた感じなのか、それとも尖った鋭い感じなのか、お見通しということです。
時々「流行の喋り方を真似するんです。こんな言葉を覚えちゃったら、どんな大人になるのか心配です」なんて、相談を受けることがあります。大丈夫。子どもたちが将来話す会話には、子どもの頃に培った家庭でのコミュニケーションの面影が残るものです。子どもが一時流行語ばかり喋っていても、結局成長した後にはその家庭独特のコミュニケーションがまた姿を表します。
ですから、それだけ、家庭でのコミュニケーションは、子どもへ大きく影響するんです。
例えば、自分の気持ちを相手に伝えることが苦手な子がいたとします。そんな子どもが自分の気持ちを抑えながら控えめに生活する様子を目の当たりにすると、親御さんはどんな気持ちを抱くでしょう。「もっと自分を主張すればいいのに」なんて歯痒い気持ちを抱くことも珍しくないでしょう。
じゃあ、そんな子のコミュニケーションを改善するには、どうすればいいんでしょうか。
それは、家庭で、楽しい雰囲気の中で、その子の気持ちをちょっと口にしてあげることを繰り返すことです。
例えば「明日の遠足楽しみね」とか、「今日の晩御飯は、あなたの大好きなカレーね」とか、そんな些細な会話で構いません。その子が思っているだろうなということを、ちょっと口にしてあげる。楽しい雰囲気の中で、です。そうやって、その子の気持ちを外に出すことを経験させてあげてください。
そんなことを家庭で繰り返してあげたら、今度は外でそんなことを行なってあげます。お友達といる時に「お友達とこのボールで一緒にサッカーをやりたいんだよね」とか、「一緒に遊べて嬉しいね」とか、その子の表情を見ながら、その子の気持ちを言葉でそっと口にしてあげます。それも、楽しい雰囲気の中で、です。
そうやって、気持ちを言葉で表現することを、楽しさや気持ちよさとともに感じさせてあげます。
これは「食事」と少し似ているところがあります。「食事」も、子どもにモリモリ食べてもらうために必要なことは、まず「食べることを楽しむこと」です。
親御さんの笑顔を目にしながら、食材の色や香り、そして味を楽しみます。そうやって「食事」の楽しさを演出してあげるからこそ、子どもたちは食事の時間を気持ちよく感じ、食欲もアップするものです。
「食べなさい!」と叱られたり、険悪な雰囲気の中で食べる食事は美味しくありません。食が細い子どもに、モリモリ食事を食べてもらいたいと思ったら、「食べなさい!」という言葉よりも、ニコニコした親御さんの笑顔と、一緒に食材を触ったりこねたりしながら、食材を楽しむことです。
それと同じように、会話にも楽しみが必要です。会話が少し苦手な子どもがいたら、その子に必要なことは会話を楽しませてあげることです。「自分の気持ちを相手に伝えることで楽しい時間を過ごせた」という経験こそ、子どもたちのコミュニケーションが発展するために必要なことなんです。
今日は、「はじめてみよう子どもへのこんな工夫」というテーマでお話ししました。大人の関わりで子どもたちは明らかに変わります。子どもたちの生きやすさは、子どもたちが勝手に獲得するものではありません。そこには、ある程度親子の関わりに関する正しいコンセプトが必要なのです。
でもこのことは、実は子どもだけではなく、大人にも当てはまります。職場のコミュニケーションも、同じ工夫をすることで明らかに変わっていきます。もしもそばにコミュニケーションが苦手な若手社員がいたら、今回のことを実践してあげてください。きっとその子も変わります。
だいじょうぶ、
まあ、なんとかなりますよ。
湯浅正太(小児科医、Yukuri-te代表 https://yukurite.jp/)
湯浅正太(ゆあさしょうた)
PROFILE
2007年 3月 高知大学医学部 卒業。小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。
『みんなとおなじくできないよ』
障がいのある「おとうと」がいる小学生の「ボク」。おとうとのことを好きだけど、ちょっと恥ずかしく、心配にも感じている。複雑な感情と懸命に向き合って「ボク」がたどり着いた答えとは?「きょうだい児」ならではの悩みや不安、孤独な気持ちが当事者の視点から描かれた絵本。湯浅正太著/1760 円(日本図書センター)
これからの時代を生きる子どもたちの心を育てたい。当法人の活動に賛同くださり、ご支援いただける場合は、右の「寄付ボタン」からお願いいたします。ページが表示されるまで、少々時間がかかる場合がございます。