子どもの「生きる」を考える
子どもの「生きる」を考える
小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te
代表理事 
湯浅正太
みんなとおなじくできないよ

AIは子どもの気持ちがわかるか

2023/02/26

記事【AIは子どもの気持ちがわかるか】

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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる書籍「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる

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こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。

2023年2月26日の今日は、「AIは子どもの気持ちがわかるか」というテーマで短くお話ししたいと思います。

僕は小児科医として、あるいはYukuri-teという法人の代表として、子どもやその家族を支援する活動をしています。そんな活動をしていると、時々こんな相談をいただくことがあります。

家族の中に障がいのあるお兄ちゃんと、不自由なく生活している弟さんがいて、「弟が障がいのあるお兄ちゃんに辛く当たるんです。弟は障がいのあるお兄ちゃんのことを本当に嫌いなんでしょうか」、そんなご相談です。

あるいは、こんなことを教えてくれた親御さんもいます。「家庭に障がいのある兄弟姉妹がいたとすると、不自由を感じていない兄弟姉妹は自分のことを犠牲者のように感じるのが当たり前なんじゃないですか」、そんなコメントをいただいたこともありました。

みなさん、こんなコメントを聞いてどんな風に思いますか。

僕は、ご家庭に障がいのある子どもがいて、その兄弟姉妹という立場の子どもたちをたくさん知っています。子どもたちだけではなくて、成長されて大人になった方たちもたくさん知っています。いわゆる「きょうだい」という立場の人たちですね。

そんな経験をもとに冒頭の質問にお答えすると、「本心ではどうでしょう?」とお答えします。つまり、「本心では、きょうだいという立場の子どもたちは障がいのある兄弟姉妹のことを思っているものですよ」ということです。

そのことがわかるエピソードをご紹介しましょう。このエピソードは一つのご家族からだけでなく、多くのご家族からいただくことがあるエピソードです。このエピソードを通して、表に現れない子どもの心を理解いただければと思います。

そのご家族には、障がいのあるお兄ちゃんと、不自由なく生活している弟くんがいました。いつもその弟くんはお兄ちゃんに対して、「のろま」とか、「何言っているのか、わかんない」とか、お母さんに聞こえるように愚痴を言っていたそうです。

お母さんはそんな弟くんに「そんなこと言わないで、お兄ちゃんも頑張っているんだから」と言いながらたしなめて生活する日々が続いていました。そんな毎日の中で、お母さんは弟くんに対して「この子はお兄ちゃんのことを本当に嫌いなんだろうか」と不安に思っていたそうです。

そんなある日、学校の先生からお家に電話連絡がありました。学校でいつもはおとなしい弟くんがお友達を殴った、という連絡でした。先生が弟くんにその殴った理由を尋ねても、はっきりした理由がわからないということだったのです。

「学校ではいつも真面目に生活していた子なのに、どうしてお友達を殴るなんてことをしたんだろう」、お母さんはそう不思議に思いながら、不安を感じながら下校時間に学校へ弟くんを迎えに行ったそうです。その際に職員室の隣の部屋で、担任の先生とその弟くんと一緒に椅子に座りながら話し合いました。

お母さんが弟くんに「どうしてお友達を殴ったの?」と聞きました。でも、弟くんは最初はなんだかモジモジしていたそうです。しばらくして、弟くんはゆっくりとしゃべってくれるようになりました。そして、弟くんは下を向きながら、恥ずかしそうに申し訳なさそうに、でも「僕は間違ってない」と言わんばかりの頑なな表情も残しながら、ボソボソっと教えてくれたそうです。

「だって、バカにしたからだよ」、そう教えてくれたんだそうです。

最初はその弟くんのことをお友達がバカにしたから殴った、という話なのかと、担任の先生もお母さんも思ったそうです。でも、よくよく聞いてみると、そうではなかったのです。弟くんは言いました。「お友達がお兄ちゃんのことを、みんなのようにおしゃべりができなくて運動もできないってバカにした。だから、そのお友達を殴った」、そう弟くんは教えてくれたんだそうです。

普段はおとなしくて、誰かに手をあげる子ではない弟くんでした。そんな普段の弟くんを知っている先生やお母さんは、よっぽどのことがない限りお友達を殴るなんてことはしないだろう、と思っていました。

お友達が自分のお兄ちゃんをバカにしたから、その仕返しをした。つまりそれは、弟くんにとって「よっぽど」の出来事だったのです。それを聞いて、お母さんは泣いてしまいました。その涙には、障がいのある息子をバカにされて悔しいやら、兄をかばった弟の気持ちが嬉しいやら、なんだかグチャグチャな心境が混ざっていたそうです。

もちろん他人に危害を加えることは良くないことですが、少しホッとした、とお母さんはおっしゃっていました。お家では普段からお兄ちゃんに辛くあたっていた弟くんも、実はお兄ちゃんのことを思っていたんだ、ということがわかって、ホッとしたということだったのです。

どうでしょうか。あなたは、この弟くんの心と行動が珍しいと感じますか。僕は、まったくそうは感じません。子どもって、そういうものです。

他のお友達から大切な兄弟姉妹が侮辱されたり辛い目に遭わされたら、そのほかの兄弟姉妹には悔しい気持ちが湧くでしょう。兄弟姉妹同士がお互いにきつい言葉で喧嘩していても、心の奥深いところでは兄弟姉妹を大切に思う心が残っているものです。

子どもたちは不器用だからこそ、自分たちの気持ちにも気づけないからこそ、その気持ちをうまく表現できません。でも、心の底では、兄弟姉妹で一緒に楽しく遊びたい、大切な存在なんだ、そんな風に感じているものです。

それは、障がいの有無に関わらず、同じ屋根の下で暮らす兄弟姉妹に育つ心です。

親御さんあるいは大人の中には、「子どもたちはきっとこうなんだろう」「障がいや病気のある兄弟姉妹に対して、きっとこんな風に感じているんだろう」、そう決めつけてしまう方がいます。それはおそらく、ご自身の経験に基づいたパターン認識でもあるのだろうと思うのです。

そんなパターン認識が得意なものといえば、最新のテクノロジーと言われるAIです。こんなシチュエーションの時は、人はこんなことを考えるだろう、そんな様々な状況に対して膨大なデータからパターン認識しながら情報を選び出します。そして、その情報をもとに巧みに言語化できるようになっているから驚きです。

人の心をパターンで読むことは、なかなか難しいものだと思います。でも、子どもの心の可能性をちょっとでもパターンとして覚えてもらえるなら、記憶に留めておいてもらいたい心のパターンがあります。

それは、兄弟姉妹はお互いを思うもの、というパターンです。

そして、そのパターンが本当に崩れているとしたら、それはその子の心がSOSを出し始めている証拠かもしれません。本人もSOSだと思っていないであろうそのSOSに、大人が気づけるか。子どもの時期がその人の一生に影響するからこそ、子どもの本当の心を社会に知っていただきたいと思います。

今日は、「AIは子どもの気持ちがわかるか」というテーマでお話ししました。

だいじょうぶ、

まあ、なんとかなりますよ。

湯浅正太(小児科医、Yukuri-te代表 https://yukurite.jp/)

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