記事【不登校を考える第2弾】
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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる書籍「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる
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「小児科医湯浅正太の診察室」、今日は 「“不登校”を考える 第2弾」というテーマで、「訪問看護ステーションしんえい」の今野玲子(コンノ・レイコ)さんがゲストです。
今野さんが務めていらっしゃる「訪問看護ステーションしんえい」さんは、今月1月に千葉県浦安市で開所した訪問看護ステーションです。母体となる伸栄学習会では、40年前に学習塾を開講して、通信制高校、フリースクール、その他、発達障がいをお持つお子さんに向けた学習支援施設を運営しています。現在は看護師さんや心理カウンセラーさんなどの5人で活動していらっしゃるそうです。
不登校のお子さんたちの支援も行う「訪問看護ステーションしんえい」の今野さんに、 小児科医湯浅正太が 聞きます。
1)支援の現場から 「訪問看護ステーションしんえい」さんのご紹介
湯浅:今野さんは看護師さん・保健師さんとして「訪問看護ステーションしんえい」に務めていらっしゃいますが、「訪問看護ステーションしんえい」はどのような活動をしていらっしゃるのですか?
今野さん(以下、敬称略):ご紹介ありがとうございます。看護師の今野です。私たちの訪問看護ステーションでは、不登校や発達障がいを持つお子様のご自宅にお伺いし、よりよい生活ができるように必要な支援を提供したいと考えております。具体的には、健康状態のチェック、生活リズムの改善、お薬の管理、登校支援、心理カウンセリングなどです。また、訪問看護ステーションとしては珍しいかもしれませんが、弊社の今までの取り組みを活かして、学習支援や集団生活に向けたトレーニング、親子関係のアドバイスも行いたいと考えております。一人ひとり状況は異なると思いますので、お子様本人やご家族の様子をしっかりと受け止めつつ、今必要な支援を提案していきたいと思います。
2)不登校の現状
湯浅:今野さんたちから見た「不登校の実際」を教えていただけますでしょうか。
今野:弊社が運営する通信制高校や放課後等デイサービスでは、不登校のお子様、または過去に不登校だった方が多くいらっしゃいます。きっかけは友達との関係、学業不振、体調不良、昨今では新型コロナウイルスの影響など様々ですが、いくつかの要因が絡み合っているケースが多いです。知らず知らずのうちに限界に達して「学校に行けない」というかたちで表面化しているように思います。一般的には「不登校」そのものに着目されがちですが、不登校に至るまでの過程に着目することが大切だと感じています。文部科学省の定義によると、不登校とは「病気や経済的な理由などといった特別な事情がなく、『年間の欠席日数が30日以上となった状態』を指します。不登校の良し悪しはともかく、30日間学校に行かない期間が続くと、家では親子関係が悪化し、更にお子様が追い込まれていきます。不登校は初期対応が大切だと感じています。なるべく早めに相談して欲しいと感じています。
3)不登校の現場における課題
湯浅:不登校になったお子さんやそのご家族を支援するにあたり、どんな課題がありますか?
今野:そうですね、課題はたくさんありますが、最近感じている課題が2つあります。1つ目は「不登校の支援は、事実を正確に把握した上で適切な支援をすることが難しいこと」です。不登校になるまでは様々な過程があり、要因も一つでないと感じています。また、学校の様子だけでなく、家庭の様子も把握する必要があります。ご本人はもちろん、ご家族や学校の先生、病院の先生など、ご本人を取り巻く人たちと実際にお会いして話を聞きたいと思っています。そのために、ご自宅に行くことは問題解決の糸口になると考えています。 2つ目は「不登校になった後、学習に遅れが生じ、いざ学校に戻ろうと思ったときに学習への不安が募り、結果的に戻れなくなるということ」です。文部科学省の調査でもそうですが、私たちの実感としても「学業不振」は不登校の大きな原因となっていると感じています。経営母体が学習塾ということもあり、まずは学習面の不安は払拭したいと考えております。不登校は心身を休める上で必要な時間だと思いますが、学習の遅れという別の不安が大きくなり、戻れなくなる・・・ということは何とも残念です。学校に戻りたいと思ったときに、いつでもスムーズに学校の授業に入ることのできるよう、学習を継続することが大切だと考えます。ただ、家にいてもなかなか学習を進めることができません。そのようなときに自宅に伺い、学習を支援する人の存在が必要だと思っています。
4)どうして「訪問看護ステーションしんえい」を始めたのか?
湯浅:今野さんたちは「訪問看護ステーションしんえい」を始められましたが、どうしてアクションを起こそうと思ったのですか?
今野:はい、今まで通信制高校やフリースクールを運営する中で、教室に来るお子様は支援できるけれど、教室に来れないお子様には支援できないという歯がゆさがありました。保護者様が「明日から通いますね!」と言ってくださっても、本人の足がどうしてもこちらに向かない。結果的に支援ができないということが何度もありました。そのような中、ご自宅で支援する方法はないか?とスタッフみんなで考え、今回、訪問看護ステーションを開設しました。不登校は本人だけでなく、ご家族も苦しんでいます。少しでも不登校生徒とご家族が、新しい一歩を踏み出せるようサポートできればと考えております。
5)日本社会は不登校にどう向き合っていくべきか?
湯浅:不登校の現場を見てこられて、今後の日本社会は不登校にどう向き合ったらいいと思いますか?
今野:新型コロナウイルスのパンデミックにともない、リモート授業やテレワークが一般的になりつつあります。そもそも教育の場は学校だけではありません。『教育機会確保法』には、学校への登校を強制せず、それぞれにあった学習環境を保障する、とあります。ですので、学校に行かない、という選択はあってもよいのが当然です。ただ、いずれにしても子どもたちから学びの機会を奪うことがない社会になって欲しいと思います。学齢期にしか学べないこともたくさんあります。学びをストップしてしまうと、その分将来の選択肢も減っていきます。学校に戻れればもちろん良いですが、フリースクールや通信制高校、学習支援教室など、お子様が居心地よく学びを継続する教室が見つけられればと思っています。今回、開所した訪問看護ステーションで、そういった教室への橋わたしもしていきたいと考えております。不登校のお子様は皆さんキラリと光る個性をお持ちの方が多いです。感受性も豊かで、優しく、まじめな子が多いです。その個性を無駄にせず、どんどん伸ばしていきたいです。私たちがその一助になれれば嬉しいです。本日は、貴重なお話の機会をいただきありがとうございました。
湯浅:ありがとうございました。本日のゲストは「訪問看護ステーションしんえい」の今野玲子(コンノ・レイコ)さんでした。不登校の子どもたちの支援、みなさんも考えてみてください。
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