記事【子どもの便秘症はこうやって解消する】
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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる書籍「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる
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【待合室】
こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。
今日は、「便秘症」の診察室を覗いてみたいと思います。
あなたは、便秘になったことはありますか?便秘は、長い間便が出なかったり、排便があったとしても出にくい状態のことを言いますね。そんな便秘は子どもでも珍しくありません。例えば、離乳食を開始する頃や終わる頃、トイレトレーニングの頃、あとは学校へ通い始めた頃などです。そんな時期には便秘になるお子さんがいるものです。
それに時々、「おばあちゃんに、『浣腸は便秘の癖になるからやめておきなさい』って言われました」なんて誤った情報をもらって、さらに便秘が悪化してしまうケースもあります。そうならならないように、正しい理解のもとで子どもたちの便秘に対処してほしいと思います。
この診察室の会話を聴いてもらえれば、
だいじょうぶ、
まあ、なんとかなりますよ。
【診察室】
湯浅:
Aちゃんのお母さん、こんにちは。今日はどうされましたか?
Aちゃんのお母さん:
便秘症のことを相談したくて受診しました。この子、ウンチがなかなか出ないんです。時々お腹がキューって痛くなるのか、何だか不快な表情をすることもあるんです。
湯浅:
そうですか、便秘症があるんですね。子どもの便秘症は珍しくないですからね。離乳食を始めた頃や離乳食を卒業する時期、それに入学したての時期にも便秘症になることがありますね。
Aちゃんのお母さん:
え、そうなんですか。そういえば、以前に離乳食を調整していた時期に便秘がひどくなったことがあります。
湯浅:
そうなんですよ。食事内容が変化する時期には、ウンチの性状も変わりますからね。便秘症にもなりやすいわけです。でも、便秘症に関係するものは、食事の内容だけじゃないですよ。例えば、お子さんの心の変化も影響するんです。
Aちゃんのお母さん:
子どもの心の変化ですか?
湯浅:
そうです。例えば、小学校に登校し始めた頃のことを考えてみましょう。小学校に入学した、あるいは新しい学年に変わった頃には便秘がちになったりするんです。何でだと思いますか?
Aちゃんのお母さん:
え・・と、何ででしょう?
湯浅:
僕たち人間って、新しい環境で生活するようになると、少し緊張しますよね。大人だって、新しい職場で働き始める時には、ちょっとソワソワして落ち着かないものです。それは、子どもも同じです。子どもも、新しい環境で生活するようになると緊張します。
新しい小学校に入学したり、新しい学年になったりすると、緊張して普段できていたことも少し苦手になっちゃうものです。お家ではトイレに行けていたけど、新しい学校という環境ではトイレに行けなくなってしまう。新しい学年に上がると、馴染みのトイレではなくなって何だかトイレに行けなくなってしまう。そういうお子さんがいるものです。
Aちゃんのお母さん:
普段トイレに行けていても、慣れない環境ではトイレに行きにくくなったりするんですね。わかる気がします。
湯浅:
そうなんです。それに、これは単純にトイレに行きにくくなるということだけが問題ではないんです。それ以外に、緊張なんかの精神的影響が関わってくるんです。精神状態は自律神経にも影響します。ですから、自律神経が関わっている腸の働きにも影響するものなんです。
そうやって、新しい環境で生活することによって、トイレに行きにくくなったり、精神的な影響で腸管の働きが変わってくる。すると、便が普段より出づらくなる。そういうこともあるんです。
前置きが長くなりましたけど、Aちゃんの便秘の原因はどんなところにあるか、まずは確認したいですね。
Aちゃんのお母さん:
先生のおっしゃったように、学校に入学してから便秘の様子が強くなった気がします。それに、水分もあまり取らないんです。水筒を持たせても、中に入れている麦茶がちっとも減っていないんです。
湯浅:
そうですか。新しい環境での緊張や水分摂取の状況が影響しているようですね。
便秘症を治療する上で、お母さんに知っておいていただきたいことがあります。子どもの便秘症の治療で最も大切なことは、「第一に安心感を作ること、第二に便を柔らかくすること」なんです。
もちろん、腸管の中に便が溜まっていて、便秘症の状態を一旦リセットする必要がある場合には、「ひとまず便を出す」ということが大切になります。だから、浣腸をおこなって便を出すわけですね。
でも、これから着実に便秘症を改善させていくことを考えた時に、最も大切なものは「子どもの安心感」なんです。その「安心感」という土台の上に、便を柔らかくする工夫を積み重ねて、その結果「便を出す」という結果につながる。そう理解してください。
子どもの安心感が保たれていなくて、かつ、便も柔らかくない状態であれば、強制的に便を出させてもキリがありません。また再発します。便を出すことで便秘症は改善するわけですけど、便が固いまま排便させても、肛門が痛くなっちゃうので子どもは不快に感じたり、怖がってしまうんです。排便が不快ということになると、やっぱりウンチをしたくなくなってしまいますよね。「便が溜まれば出せばいい」ということではないんです。
Aちゃんのお母さん:
子どもって、やっぱり安心感が大切なんですね。何だかわかる気がします。旦那は「ウンチを出せばいいんだよ」なんて言いますけど、子どもの気持ちを考えたら何だか乱暴な考え方だなって思いますね。この子もきっと学校で緊張しながら頑張っているんだろうなって思うと、ちょっと切なくなる部分もありますね。
湯浅:
そうなんです。でも、それが子育てですよね。子どもの課題を解決するベースには、必ず「安心感」が必要なんです。だから、小学校に行く前の玄関では、ちょっと手を握ってあげて「いってらっしゃい」なんてしてあげるのもいいですね。そうやって挨拶やスキンシップで子どもの心の中に親を感じさせてあげる。すると、学校での行動も変わっていくものです。
小学校で水筒の麦茶を飲むことにまだまだ抵抗があるようなら、お家に帰ってきた時に親御さんと一緒にちょっと麦茶を飲んでみる。そうやって親と一緒になって、安心感を感じてもらいながら、少しずつ便秘への対応を行えたらいいですね。
Aちゃんのお母さん:
わかりました。少しずつ「安心感」を作ってみようと思います。
Aちゃん:
ねえねえ、ママ、うんち。
Aちゃんのお母さん:
え、今日はウンチ出るの?
Aちゃん:
うん、「安心感」をもらったから出るんだよ。
Aちゃんのお母さん:
嘘でしょ。
湯浅:
Aちゃん、教えてくれてありがとう。じゃあ、ママと一緒にトイレに行ってきてね。今日はお薬や浣腸のお話はできませんでしたけど、この続きは、また今度お話ししましょう。
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