子どもの「生きる」を考える
子どもの「生きる」を考える
小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te
代表理事 
湯浅正太
みんなとおなじくできないよ

検査に操られず検査を操る

2023/01/18

記事【検査に操られず検査を操る】

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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる書籍「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる

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【待合室】

こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。

今日は、検査の意義について話す診察室の様子をお届けしたいと思います。

あなたは、発熱や喉の痛みで病院を受診したことはありますか?そんな症状がある患者さんの中には、溶連菌という細菌の検査を実施することがあります。リスナーの方の中にも「溶連菌と診断されて抗菌薬を処方されたことがある」なんて人がいるかもしれません。

でも、溶連菌陽性でも、実は溶連菌が発熱の原因でなかったりもします。検査はむやみに行わずに、選んで行うもの。そのことを、次のチャプターの診察室での会話を聴きながら考えてみてください。

色々迷うこともあると思いますが、

だいじょうぶ、

まあ、なんとかなりますよ。

【診察室】

湯浅:

今日はこれで終わりますね。鼻水や咳はしばらく続きますが、徐々に治ってきますからね。この年頃だと、風邪が治ってはもらい、治ってはもらいの繰り返しですね。そういうものですよ。その他に何かご質問はありますか。なんでも結構ですよ。

Aちゃんのお母さん:

え〜と、この子以前に溶連菌と診断されたことがあるんですけど、今回は溶連菌のチェックをしなくて大丈夫でしょうか?

湯浅:

以前に溶連菌にかかったことがあるんですね。今回は、溶連菌らしい症状ではないので、溶連菌の検査は行わなくていいと思います。実は、感染症の検査や、他のあらゆる検査は、むやみにアレもコレも行ってもあまりメリットがないんです。

Aちゃんのお母さん:

そうなんですか。溶連菌の検査をして、もしも陽性だったら、「やったあ、溶連菌を見つけたラッキー」っていうことにはならないんですか?

湯浅:

いいご質問ですね。そうなんです、ラッキーとはならないんです。

溶連菌は、正式にはA群β-溶血性連鎖球菌という細菌です。この細菌が感染して現れる典型的な症状は、発熱と喉の痛みです。鼻水や咳という症状ではなく、「喉が痛くて熱もあり辛い」という症状なんです。

今回のAちゃんの症状は、ちょっと微熱はあるかもしれないけれど、あとの症状は鼻水と咳ですよね。その症状は溶連菌感染を積極的に疑う症状ではないんですよ。

Aちゃんのお母さん:

なるほど、溶連菌の症状とは違うんですね。

湯浅:

それに加えて、知っておいていただきたい知識があります。それは、保菌という知識です。

実は、世の中には溶連菌の保菌者と言う状態の方がいます。保菌者というのは、喉に常に溶連菌がいる人のことを指します。喉に常在菌として溶連菌が定着しているんです。でも、その人自身は発熱などの症状は出ていないんです。細菌が体に悪さをせずに、ただ喉に定着しているだけということです。

興味深いことに、溶連菌が喉に定着しているだけで症状もない人に溶連菌の検査をすると陽性になります。

Aちゃんのお母さん:

え、体に悪さをしていないのに陽性になっちゃうってことですか?

湯浅:

そうなんです。だからこそ、検査はむやみに行わないんです。目の前の患者さんに「溶連菌感染らしい症状」があれば検査を行う。そうでなければ検査をあえて行わない。そういうスタンスがとても大事なんです。

こういう話は、医師になりたての若い先生に対してもお話しすることがあります。例えば、「溶連菌の検査を行って陽性だったので抗菌薬を内服してもらったんですが解熱しないんです」、そんな相談を若い先生から受けることがありました。そんな時にあらためて患者さんの症状を確認すると、たいてい溶連菌らしい症状ではないんですね。つまり、違う感染症だからこそ、溶連菌の治療をしても良くならないというわけです。

本当に溶連菌の感染症であれば、抗菌薬の治療を始めると24時間以内にスウッと解熱します。発熱と喉の痛みがあって、抗菌薬を内服したらスウっと解熱する。そういった経過が典型的な溶連菌感染症の経過です。

Aちゃんのお母さん:

そうなんですね。溶連菌らしい症状でなければ、検査を行って仮に陽性であってもその結果は当てにならないし、検査を行う意味がなくなりますね。

湯浅:

そうでしょう。検査を行ううえで大切なのは、その検査を行うだけの理由があるかということです。そういう根拠が揃った上で検査を実施するというスタンスが大切なんです。そういうスタンスを持っていないと検査結果に振り回されてしまいますよね。なので、「検査に操られず、検査を操る」ということを意識するんです。

Aちゃんのお母さん:

人が検査に振り回されずに、しっかり人が検査を実施するか判断するってことですね。わかりました。

Aちゃん:

ねえねえ、ママ、チックンしない?ママ、チックンしない?

湯浅:

Aちゃん、大丈夫だよ。チックンしないよ。じゃあ、今日はこれで終わりましょう。

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