子どもの「生きる」を考える
子どもの「生きる」を考える
小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te
代表理事 
湯浅正太
みんなとおなじくできないよ

“不登校”を考える

2023/01/11

記事【“不登校”を考える】

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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる書籍「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる

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「小児科医 湯浅正太 の診察室」、今日は 「“不登校”を考える」というテーマで、「不登校親子応援ねっと」の景山益代(カゲヤマ・マスヨ)さんが、ゲストです。

景山さんが代表を務めていらっしゃる不登校親子応援ねっとは、2008年に、不登校の子どもを抱えるお母様方3人が中心となり創設した完全ボランティア団体です。現在は不登校経験者や元教員がメンバーに加わり7人で活動していらっしゃいます。

現在そうした親子の支援に当たっている景山さんに、小児科医 湯浅正太が 聞きます。  

1)支援の現場から

湯浅:景山さんは「不登校親子応援ねっと」の代表を務めていらっしゃいますが、「不登校親子応援ねっと」はどのような活動をされているのですか?

景山さん:

不登校親子応援ねっとは、『不登校親子応援ガイドマップ』という冊子を編集・発行している団体です。この冊子は、千葉県北西部エリアにある、「フリースクール」や「子どもの居場所」、「親の会」、相談機関のほか、各市の教育委員会が設置している適応指導教室を紹介しています。今回2023年版を発行しますが、そこでは12の自治体にある民間46団体と15の公的機関を紹介しています。

特長は、私たちがすべての団体に訪問して代表者の方とお話をしたり、実際の活動の様子を拝見したりしてから原稿を依頼して、それを編集している点にあります。連絡先や団体の概要はもちろんですが、団体の方々からのお子さんや親御さんたちへのメッセージや活動の雰囲気を伝える写真なども掲載しています。

それから、年に一度、掲載団体の方々と交流会を行っています。不登校のお子さんへの関わり方を話し合ったり、行政の動きについて勉強したりしています。

2)不登校の現状

湯浅: 景山さんが不登校の支援にあたられて、不登校の実際の状況はどのようなものなのでしょうか。

景山さん:

2016年に「教育機会確保法」が公布されました。その背景にはやはり、学校に行けなくなっている子どもの数が増え続けていることにあります。昨年2022年度に発表された不登校児童生徒数は、小中学生で24万4940人、高校生で5万985人となっています。教室に1人はいるという計算になりますが、これは表面的な数字と言われていますし、コロナ禍でもっと増えていると感じています。

不登校親子応援ガイドマップは、前回は2019年に発行しているのですが、それからの4年間で、新しい団体がかなり増えました。この地域に限ったことではありますが、特に増えたのはフリースクールや学習の場所です。集団が苦手、ただそれだけで学習の機会を失うことがあってはなりません。それぞれの子どもに合った学びが必要とされています。「多様な学び方」を実践しているフリースクールが増えているということは、いわゆる普通の学校に行けない・行かない子どもが増えていることをよく表していると思っています。

3)不登校の現場における課題

湯浅:不登校になったお子さんやそのご家族を支援するにあたり、どんな課題がありますか?

景山さん:

不登校になって最初に直面するのは、親も子も、学校以外でどこに相談してよいかわからないということです。教育委員会に相談すれば、まずは適応指導教室、いまは教育支援センターといいますが、そこを紹介されるのですが、そこに行けない、なじめなかった場合、八方塞がりになることが多いと思います。先生方が不登校の子どもたちと親たちへの対応の仕方をあまりご存じないというのは、参加させていただく親の会などで聞いていて、私たちが活動を始めた15年前とほぼ変わっていないという印象です。まずは教育委員会が、地域の情報を持っていてほしいと思います。

次に家族の孤立です。不登校が増えてきたとはいえ、まだまだ少数であることは明らかです。親も子も近所を歩けない、親戚からいろいろ言われる、偏見の目で見られている気がするなど、だんだん自信を失い、社会とのつながりを自分からも否定してしまう傾向にあります。悩みを同じくする人と話せる親の会などにつながっていく必要があります。

それから、お金がない団体が多いことです。特にフリースクールや子どもの居場所は場所代や教材費にお金がかかりますが、通う方もたくさん出せるわけではない場合が多く、経営が厳しいのが現状です。この点について支援する仕組みを考えることが不可欠だと思います。

4)どうしてクラウドファンディングを始めたのか?

湯浅:最近景山さんはクラウドファンディングを始められましたが、どうしてアクションを起こそうと思ったのですか?

景山さん:

今は何でもインターネットで検索する時代なので、何もお金がかかる印刷にこだわらなくてもと思うのですが、実際には当事者の方や教育現場の方から、「冊子をいただきたいのですが」とか「今度いつ出るの?」というお声をいただき、「必要な方がいらっしゃるのであれば、やっぱり頑張ろう!」と思って作っているという状況です。

印刷物の良さは、手元に置いてぱっと見て分かること。それから私たちのガイドマップでは、同じ項目で質問設定がされているので、団体の比較がしやすい点が挙げられます。悩んでいる方の中にはパソコンやスマホになじんでいない世代の方々も多く、やはり印刷物が必要だと思います。

これまでは不登校経験者たちとバザーをやったり集会で寄付を募ったりして、なんとか4,5年に一度改訂して発行してきたのですが、新型コロナウィルスの影響でその機会がなくなってしまいました。

資金調達という面もありますが、クラウドファンディングで不登校に関する活動を社会に広く知っていただくためにもよい方法だと思ったことも理由の一つです。

クラウドファンディングREADYFORの応援コメントの中で「ムーブメントになるといいですね」というコメントをいただきましたが、そこにヒットしたなと思いました。

5)日本社会は不登校にどう向き合っていくべきか?

湯浅:不登校の現場を見てこられて、今後の日本社会は不登校にどう向き合ったらいいと思いますか?

景山さん:

もともとこのガイドマップは、私たち自身が学校以外の相談場所が分からなかったという経験から作りはじめたのですが、学校の先生方にも学校以外の場所にも学びの場があるということを知っていただき、地域の民間団体と連携してほしいという願いを込めて作成しているものです。

不登校にかかわる活動をしてこられた先輩方のおかげで、行政も動いています。実際、フリースクールに通う子どもの定期券のことや、特定のフリースクールに出席している場合の学校での出席扱いの制度は、その成果です。少しずつ行政を変えていけることを親自身が学び、その時代に合った子育てのやり方ができるよう行政に働きかけたりする必要があると思います。

学校に行けない子どもの増加が学校のあり方を変えていくと思います。不登校を取り巻く課題はたくさんありますが、それをひとつひとつ解決していくうちに、不登校という概念すらなくなるかもしれません。学校に行けなくなること、それは、優しさと勇気と希望に満ちあふれた社会を創り出す出発点だと思います。

湯浅:ありがとうございました。本日のゲストは、「不登校親子応援ねっと」の景山益代(カゲヤマ・マスヨ)さんでした。

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