記事【きょうだい児が表現する感情】
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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる書籍「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる
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こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。
病気や障がいのある子どものことを「同胞」、その兄弟姉妹をひらがなで「きょうだい」あるいは「きょうだい児」ということがあります。
昨日の土曜日には宮崎県できょうだい児のお話をさせていただきました。歓迎してくださったスタッフの方々、講演会に参加してくださった方々、どうもありがとうございました。
羽田空港から飛行機に乗る時にはとても寒かったんですが、宮崎空港に着くととても暖かったので驚きました。出迎えてくださった方々の心もとても温かくて、感謝です。
講演を終えて帰ってきた日曜日の今日は、きょうだい児が表現する感情、というテーマで短くお話ししたいと思います。
ただ、きょうだい児の話は、決してきょうだい児だけに限ったことではないですね。きょうだい児は、生活背景における悩みが原因で心を乱す可能性がありますが、どんな子どもであっても、悩みを抱えれば同じように心が乱れることはあるものです。
つまり、子どもの心のカラクリは、きょうだい児であろうと、どんな子どもであろうと同じで応用できるということです。
きょうだい児の中には、病気や障がいのある同胞に対して冷たくあたってしまう子どももいます。そんな様子に親御さんが困って、「そんなこと言ってはいけないでしょ」なんて、きょうだい児を叱ってしまうこともあるものです。
でも、実際のところきょうだい児たちの心の中には、同胞を愛する心があります。その心を純粋に表現できない背景には、社会での価値観があるのですね。
きょうだい児たちは、家庭で同胞に対する愛を学びます。みんなと同じようにできなくても、その子の個性を大切にすること。そういった価値観を自然と学ぶものです。
でも一方で、きょうだい児たちは学童期以降、家庭以外の場所、つまり学校でより多くの価値観を学ぶようになります。その多くが、みんなと同じようにできることをよしとする価値観です。
そういった価値観を学ぶからこそ、きょうだい児の心の中には動揺が広がります。「みんなと同じでなくてもいいのか」「みんなと同じでないといけないのか」、そういった葛藤を抱くものです。
その葛藤は、きょうだい児本人にはどうしようもできないものです。家庭や社会での価値観に翻弄されながら、きょうだい児たちも何が正義なのかがわからなくなる。そういうものなのです。
でも、さらに言うと、色々な人たちによって作られる社会って、様々な価値観で溢れた世界なので、多種多様な価値観の中で生きるって、実は当たり前のことなのです。大切なことは、様々な価値観に振り回されて心を乱さないということです。
そういうことを理解すると、きょうだい児たちにとって大切なことは、何だと思いますか?それは、きょうだい児たちのアイデンティティを育てる、ということです。
社会とは、多種多様な価値観があるもの。そんな価値観の中でうまく身をこなしながら、堂々と自分を表現できるだけのアイデンティティを育てる。それが、きょうだい児あるいは子どもたちに欠かせません。
そういったアイデンティティをしっかり育てるために、色々な人たちと交流する機会を提供し、そしてきょうだい児のその子らしさを認めてあげる。そういった経験が大切なのですね。
今日は、きょうだい児が表現する感情、というテーマでお話ししました。
だいじょうぶ、
まあ、なんとかなりますよ。
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