子どもの「生きる」を考える
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小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te
代表理事 
湯浅正太
みんなとおなじくできないよ

【こうやって理解する】子どもの検査の注意点

2022/07/05

記事【こうやって理解する 子どもの検査の注意点】

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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる書籍「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる

#子どもの検査のアレコレ #子育て #小児科医 #湯浅正太

こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心に関わる物事を気ままに発信しています。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。

今日は皆さんが小児科を受診した時の色々な検査についてお話ししたいと思います。小児科医がどんな風に検査結果を見ているかなんて、あまり聞かないじゃないですか。そんなお話をしながら、小児科医が子どもたちの体調の見通しをどんな風に手に入れているのかを知っていただこうと思います。

皆さんは、お子さんを病院に連れて行ったことがありますよね。お子さんが病院を受診した際に、検査を受けたことはありますか?例えば、発熱が続いて、その熱の原因を調べるために迅速検査や血液検査をしたことはありますか?

熱が続いた時に確認したいことは、もちろんその熱の原因ですね。熱が感染症によって起きているのか、何か他の原因によって起きているのか。そんなことを知りたいものです。でも、そんな検査は闇雲に行うべきものではありません。

例えば、発熱も何も症状がない子どもに、あるウィルスの検査を行ったとしましょう。そんな場合でも、検査では陽性と表示されることもあるものです。つまり、症状がなくても、検査ではウィルスに感染している可能性があると表示されてしまうこともある。でも、症状がない場合であれば、検査キットが誤って陽性と表示させてしまっていることも少なくないのです。

そのことを知っているので、小児科医としては症状もない子どもに検査をしようとは思いません。

また逆もあります。もしも家族内であるウィルスが流行っていたとしましょう。ある日お父さんもお母さんも弟もみんな発熱があって、検査をして同じウィルスに感染していたことがわかったとします。その翌日に、それまで無症状だったお兄ちゃんが発熱したとすると、家族みんなが感染しているウィルスがうつった可能性が高いですね。

そんな場合には、そのお兄ちゃんに検査をして仮に陰性だったとしても、検査キットが誤っているだけで、ウィルスにかかっていることを疑うわけです。であれば、そもそもみんなの後に発熱したお兄ちゃんは、検査をしなくても、ウィルスにかかっているとして対応するのが利口です。

こんな風に、小児科医は検査の限界を知ったうえで、検査結果に惑わされることがないように、検査を行うべきかそうでないかを決めているのです。本当は感染していても、検査で誤って陰性となることもあるし、本当は感染していないのに、検査で誤って陽性になることもある。そういった経験を積んでいるものです。

医療機関は検査を行う方が収益が増えるため、検査を行った方が病院経営にとってはいいでしょう。病院の収益になるにも関わらず、あえて検査を行わないという背景には、その検査結果に医療者も患者さんも混乱させられてしまうことは避けたい、という思いがあります。そう思っているので、あえて検査を行わないこともあることを知っておいてください。

闇雲に検査を行って患者さんを混乱させてしまうことの他の例としては、例えば知能発達検査があります。今は発達障害という言葉が広く知られるようになりました。そうやって発達障害が有名になると、「この子は発達障害なのではないか?」と指摘する人が増えるわけです。

中には、親御さんは何とも思っていなくても、「あなたの子どもは発達障害かも知れないから、病院に行って検査を受けるべきだ」と指摘してしまう人も出てくるわけです。でも、親御さんが望んでいないのに、一方的にそういった検査を行っても、良いことはないのですね。親御さんやご家族の混乱を招くだけで、結局子どもの支援につながらないこともあります。

それに、子ども自身がある程度検査に集中できない場合、きちんと検査を行えないこともあります。すると、その検査結果はあくまで参考程度になってしまうのです。その検査結果をもって、その子のことが100%反映されていると思ってもらっても困るのですね。検査結果が、実際の様子を反映するかどうかは注意して考えたいところです。

こんな風に、検査は闇雲に行っても混乱を招くだけなのですね。そういった経験を何度も何度も経験しているからこそ思うのは、最も大切なのは見て聞いて話してわかった所見です。やっぱり、そうやって子どもとつながってみることが最も大切。子どもをつながったうえで、検査をするべきかどうかを考えます。

ぜひ、検査結果ばかりに振り回されませんように。

色々あるかも知れませんが、だいじょうぶ。

まあ、なんとかなりますよ。

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