記事【後半:自分の心を振り返ることができる人は人を育てることが上手】
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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる
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こんにちは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心に関わる物事を気ままに発信しています。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。
今日は昨日の放送の続きですね。昨日の放送をまだ聴いていない方は、昨日の放送から聴いてみてください。
昨日の「momo」さんのお話にあったように、そうやって悩みながら、みんな子どもを育てていますからね。「これでいいのかな?」「みんなと違うけどいいのかな?」、そんな風に不安があるのが当たり前ですね。多分「momo」さんのコメントを聴いて、みんな「そうだよね」「私もそう感じている」「僕もそう思ったことがある」って思っています。「momo」さんだけではない、と感じていてください。
そして、心身症のことや不登校の経験を教えていただいて、どうもありがとうございました。学校はどうしても、その環境に合わせなければならないという要素が多いですね。人によっては窮屈に感じてしまいます。それに、学校に集まるのは、自分の心をまだまだ操れない発展途上の子どもたちです。そんな子どもたちは、似た者同士で集まって自分たちを守ろうとするし、その集団と違う人を見つけたら排除したがるものです。子どもはそういった影響されやすい繊細な心をもっているからこそ、その心の行方を大人が導いてあげる必要があります。
そんな不登校の対策で気をつけたいことは、不登校の目標は、学校に登校することというよりも、健康的な生活を送れるようにするということです。いじめがあったり、不適切な教育がある場合には、それを修正しなければなりません。それを修正せずに、ただ子どもに登校を促すというのは、ただのお仕置きです。
子どもにとって不適切な環境があったとして、その環境を改善せずにただ子どもを学校に行かせたとしても、やはりうまくいかないものです。その子どもの周りの環境が何も変わらなかったら、その時はたまたま良かったとしても、そのツケはその後にやってきます。そういうものです。
だからこそ、不登校は周りの理解や対応を調整することで大きく変わりますね。しかも、その対策は早ければ早いほど効果的です。僕の外来にも不登校の子どもは何人もいます。でも、親子あるいは大人と子どものつながりを大切にしてもらうことで、多くの子どもは自分らしい生活ができるようになっていきます。
「momo」さんの子ども時代の経験を踏まえると、もしかすると「momo」さんには不安が生まれやすいのかもしれません。「momo」さんは自分のことを振り返れるようになっているので、自分自身のことを少しわかっていると思います。不安な気持ちを抱いた時にその不安に操られそうになる自分を感じたこともあるかもしれません。あるいは、周りの環境の変化によって自分に不安が生まれる様子を感じたこともあるかもしれません。
そうやって、自分の心に不安が生じた時の自分を感じる、ということはとても大切なことです。不安が生まれることは決して悪いことではありません。大切なことは、その不安を認識して、その不安を適度なレベルに調整することです。
子育てでは不安はつきものです。不安は決して悪いものではありません。逆に不安がない子育てほど、怖いものはありません。不安がない子育てでは、一方的な親のエゴで子育てを推し進めてしまっているかもしれないからです。そんな場合には、子どもの心は実は悲鳴をあげていることが少なくありません。だから、子育ては不安があっていいのです。不安があるから、親自身が自分を振り返って、そしてまた子どもに関わります。その繰り返しが大切なのです。
小児科医として色々な子どもの問題行動へ対処する過程で、子どもの状態がよくなるキーポイントがあります。それは、その親御さんが自分自身の行動を振り返れる、ということです。別に子どもへの関わりに失敗してもいいんです。葛藤するのが当たり前なのです。子育てで色々工夫しながらも、その都度自分自身の心を振り返れる親御さんのもとで育つ子どもたちは、必ずその行動が改善します。そんなものです。
「momo」さんは大切なことを教えてくれました。それは、この放送が「今では自分自身と向き合ったり過去の辛かった気持ちが癒される瞬間」になっているということです。実は同じようなことを、外来の親御さんたちも教えてくれます。「子どもへの関わりを気にするようになって、自分のことがわかるようになりました」「子育てをしていたら、自分を振り返れるようになって、自分の生活が変わっていきました」、そんな風に教えてくれる親御さんは少なくありません。
子どもを育てるとは、人を育てるということです。面白いことに、その人というのは、子どもだけでなく、親自身も含みます。子どもはもちろん必ず親の関わりの影響を受けるものです。でも同時に、子どもの影響を受けて、親自身も育ちます。「自分の心も、こうやって育ったんだなあ」と気づくようになるものです。そんな風に自分自身の心を振り返れるようになった親御さんは、子育てだけでなく、社会生活でも自分の良さを発揮できるようになります。自分を振り返ることで、自分が成長していくということです。
すると次第に自分の歴史が紐解けるようになってきます。子どもの頃の様々な出来事を乗り越えることができた、そのカラクリが一つずつ明らかになっていくものです。そんな風に自分の歴史を振り返れるようになります。親やその他の人たちから受けた一つひとつの関わりが、自分の心の成長につながっていたことがわかるようになるものです。
そんな風に、子どもを育てる過程で、親は必ず自分自身を振り返るという体験をしています。あるいは、そうする必要があります。そうやって、子育てとともに、親自身も成長するのです。時には「私の対応が悪かったんじゃないか」と振り返ることもあります。でも、それはそれでいいのです。「私の対応は完璧」なんて思っていると、逆に痛い目にあいます。
そういった一つひとつの振り返りの際に、過度に自分を責めない心を維持できるかは大切ですね。不安を強く感じる人は、自分を責める姿勢も強いものです。だからこそ、不安を軽減できる術を身につけてみてください。以前の放送でもお話ししましたが、不安を軽減するために大切なことは、安全基地をもつことです。自分が安心できる存在をわざと用意しておく。それを大切にしてください。
そして安心できる存在を感じながら、不安を適度なレベルに調整するために、「こんなことに困っているんです」とその安心できる存在に伝えてしまってください。そうやって不安を吐き出して、自分の不安を調整してください。このVoicyで伝えていただくのでもいいですし、安心できる身近な人に不安を伝えるのでもいいです。自分の中だけに溜め込まずに、不安を外へ出してください。そうやって、心の平静を保ちながら進む、ということを大切にしたいものです。
人の想像の世界は、実際の世界の影響よりももっともっと強いものです。一人で考えると、想像が想像を呼んで、どんどん想像の世界が膨らみます。そういうものです。ですから、安心できる人にあえてちょっと話してみる。
そうやって自分の心を操作してください。
子どもがわがままであろうと、どうであろうと、大切なことは、そうやって心を調整して安定した親が子どもの安全な存在でいることです。いたずらをしたり、わがままを言ったりするけれど、でもいつも安全な味方でいてくれる。そういった安全な存在がいるからこそ、子どもは色々な社会を経験できるようになります。
これから、幼稚園や保育園、小学校を経験する中で、子どもは色々な人に出会って、新しい体験を積みます。それは、不安の連続なわけです。そんな環境でも、自分の心の中に親という安心できる存在がいるからこそ、子どもたちは頑張って生きていこうとします。そういうものです。
でもそれは、子どもだけではありません。親だって、自分にとって安心できる存在をもっているからこそ、子育てや色々な物事を経験していけるのです。そうやって、みんなつながりながら成長しているのです。人って、そういうものです。
ちなみに、安心できる存在が心の中にいる子どもは、イヤイヤ期を過ぎるとスウっと自信をもった人として生きるようになります。5〜6歳くらいになってくると少しずつ変わってくるのです。そうやって、後になって「これがイヤイヤ期の後の、たくましい子どもの姿かあ」と理解できるようになるものです。そういった見通しを持ちながら、自分の心を大切にしてください。
毎回放送の最後には、「だいじょうぶ。まあ、なんとかなりますよ。」なんて言っていますが、そんな心持ちの方が物事がうまくいくものです。面白いことに、「大丈夫かな?大丈夫かな?」と不安が多い人の周りには、不安な心をもった人たちが集まるものです。「まあ、なんとかなりますよ」って考えている人の周りには、安定した心をもった人たちが集まるものです。みんな似た者通しが集まるものなのです。
あるいは別の見方をすると、人の心は鏡のようなものなので、不安や心の余裕は伝播していくのです。だから、結果的に似たもの同士になる。そんな捉え方もあるでしょう。
習慣的に「なんとかなるよ」という心に触れるということで、そんな心に触れている自分にも心の余裕が生まれるものです。面白いですが、そういうものなので、定期的にこの放送を聴いてもらえたらと思います。
だいじょうぶ。
まあ、なんとかなりますよ。
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