記事【子どもたちの環境を変えるには大人の環境を変えること】
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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる
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こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心に関わる物事を気ままに発信しています。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。
今日も早速コメントをご紹介したいと思います。
ラジオネームみほさん、「記憶と安全基地」という放送に対するコメントですね。ありがとうございます。
「お忙しいところコメント返し、ありがとうございます。人間の脳って本当に不思議ですね。心と言えど脳の働き。私が母として妻として、色々な役割の中で、他の人の安全基地になるには、自分の心の安定と余裕が大切なんだろうと思います。不安はそれらを崩します。以前の放送で教えていただいた、自分の安全基地の保ち方とつながりますね。人間にとって安心安全な場所、安全基地は無くてはならないもの。今までは、愛情や安らぎとか、ぼんやりと感じていましたが、意識することで変わっていく気がします。」
コメントどうもありがとうございます。そうですね、自分や相手の心の世界を意識するようになると、人生の楽しみ方が変わっていきますね。安全基地を用意して不安に対処できることで、世界の見え方が180度変わる。そんなものです。
世の中には不安をあおるような物事はたくさんありますね。そんな不安にいつも翻弄されていたら、人生がもったいない。世の中には「こうでなければダメ!」なんて主張する人たちもたくさんいますが、「本当にそうなの?」って冷静に考えてみると、意外と「そうでなくてもいい」ということがたくさんあることがわかります。そんなものです。
大人になってみるとわかりますが、大人が主張する物事の中には、もちろん間違っていることもたくさんあります。融通がきかない大人だからこそ、一方的なカタイ主張しかできないことを理解するようになります。大人になると、そういう世の中のカラクリがわかるようになりますが、人生経験の浅い子どもたちは、そうもいかないですよね。
子どもたちは、良くも悪くも、大人の影響をもろに受けますね。大人の言っていることを「正義」と捉えてくれます。だから、その正義を信じて、自分の行動を変えようとしてくれます。大人の感情の影響も、もろに受けますね。大人がイライラしていれば、子どももイライラする。大人がニコニコしていれば、子どももニコニコします。
そんな純粋な子どもたちを理解するからこそ、子どもに大きな影響を及ぼす大人は、自分たちの心を操作できる術を身につける必要がありますね。小児科医として子どもたちに向き合ったり、社会人になりたての若者に向き合うたびに、そんな風に思います。大人である自分が目の前のこの子たちを振り回さないようにしたい。そう思うのですね。
では次に、ラジオネームいまちゃんさん。いまちゃんさんのコメントは、「インクルーシブな社会を実現できていない大人がインクルーシブな教育を実現できるか」という放送に対するコメントですね。
「こんにちは。ボイシー聴きました。題名の通り、ですね。数年前に学習サポーターで支援に入った時に、教員が足りていないのはとても感じました。教育事務所からも、働けないかとよく連絡が入ります。今は、自分の子どものことを考えていられますが、長い時間働きに出るとなると、心配な部分もあります。話は変わりますが、我が家の主人も、前の勤務地の時はよく学会に全国に飛んでいました。子どもが小さい頃はついて回っていた母子です。旅に出た土地の方に挨拶をしてみたり、触れ合うことが私は息抜きでした。旅先の思い出は忘れません」。
どうもありがとうございます。今は、これまでの働き方でやっていけるという時代ではないですね。それに、これまでの働き方が子どもたちの心をうまく育てていたかというと、そういうわけではないと思っています。子どもに接する人には、どうしても心の余裕が必要ですね。心の余裕を生み出すためには、時間的な余裕だったり、経済的な余裕、そんな色々な余裕が欠かせません。
社会はそのことをあらためて考える必要があります。生徒の心を育てたかったら、その生徒に接する大人に心の余裕がなければなりません。それは、絶対です。親も、教師も、誰であろうと、子どもたちに接する大人には心の余裕が必要不可欠なのです。
そういった心のカラクリを理解しない社会では、子どもの行動を子どもの責任と勘違いしてしまうことだってあります。もしも生徒が学校の校舎の窓ガラスを割っていたとしたら、何か物を盗んでいたとしたら、それは生徒からのSOSなわけですね。「僕たちの心の悲鳴を聞いてほしい!」「私をもっと見てほしい!」というサインなわけです。そのことに、社会は気づけていましたか?と問いたいですね。
生徒の問題行動の原因を、その生徒にばかり求めていませんでしたか?生徒の問題行動の裏には、必ず何か原因があります。生徒がそうせざるを得なかった原因があるものです。そういった問題行動はたいてい、生徒と大人のつながりの乏しさから生まれてくるものです。
そして、そういった子どもと大人のつながりが養えない環境のさらに裏には、大人の心の余裕の無さが隠れているものです。大人が働きすぎて、心の余裕が無くなって、子どもとのつながりを養えない。そういった環境があるものです。
だからこそ、大人の心の余裕を生み出して、お互いが触れ合える機会を大切にしたいですね。ゆとり教育も、インクルーシブ教育も、子どもの環境を変えようとしても、なかなか成果は生み出せませんよ。だって、大人の側に、ゆとりもなければ、インクルーシブな社会もないのですから。
子どもの心を育てるためには、大人から変わっていかないといけないのです。多様性を認め合う豊かな心を子どもたちの中に育てようと思ったら、まずは大人が心の余裕を持つ。心の余裕ができると、見ている相手も豊かな方向へ変わってきます。そりゃあ、子供も変わるし、環境も変わります。そういうものです。
でも実は、若い人たちは薄々感じています。大人の社会が変わらないと、子どもたちは変わらないのではないか。そう感じています。社会の構造はどうしてもトップダウンなのです。ですから、管理職の立場の方から変わってください。組織を管理する立場の大人たちが変わらなければ、今の大人の社会は変わっていきません。これは、子どもの生きやすさを真剣に考える小児科医の切なる願いです。
でも、だいじょうぶ。
これからこういった声がますます多くなっていきます。
大人の社会が変われば、子どもの社会も変わります。
まあ、なんとかなりますよ。
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