小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te代表理事
湯浅正太
子どもの「生きる」を考える

記事【記憶と安全基地】

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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる

#記憶と安全基地 #子育て #小児科医 #湯浅正太

こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心に関わる物事を気ままに発信しています。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。

今日も、学会が開催されている群馬県のホテルで収録をしています。ホテルの室内でボソボソという声で収録しています。申し訳ありません。こんな風に医師が学会に参加するのは、知識の更新もありますが、昔一緒に働いた仲間に会うという大切な意味もあるのです。

そういった旧友たちと会う中で知るのは、みんなそれなりに苦労をしているということです。医師も社会人として、色々な苦労をしているものです。そんな日々経験する苦労を、久しぶりに会った仲間たちと共有する。そうやって、「みんな頑張っているんだなあ。自分も頑張ろう」と思えるようになるものです。

それでは、早速コメントをご紹介したいと思います。

ラジオネームみほさん。いつもありがとうございます。

「今回は記憶について知りたいです。私も先生と同じように、子どもの頃の思い出は嫌なこともあったはずなのに、楽しいことの方が鮮明に覚えています。長女に小さい時の思い出を聞くと、楽しい事もあったはずなのに、嫌だったことをはっきりと覚えています。夫に関しては、小さい時の記憶があまりありません。嫌な記憶を持ちながら成長したり、無意識にそれを脳が消去してたり…今現在、人とつながりをもつ事への障害になっているような気がしてモヤモヤしています」。

みほさん、どうもありがとうございます。子どもの記憶は興味深いですよね。皆さんにもたくさんの記憶が残っていると思います。いい思い出だったり、嫌な思い出だったり、たくさんあると思います。

人の記憶について、ぜひ知っておいていただきたいのは、人は自分の心を保つように記憶を整理しようとする、ということです。そうやって記憶を整理するにあたって、無意識のうちに嫌な記憶を心の奥深くへしまうということもあるでしょうし、あるいはその嫌な記憶を正当化しようとする心が働くことも少なくありません。そうやって自分の心が保てるようにする働きがあります。

そういうことを理解するとわかるのは、「覚えていない」や「知らない」ということと、「記憶から消えている」ということは実はイコールではないということです。

例えば、自分にとって嫌な体験があったとして、その体験の記憶から自分の心を守るために、その記憶を心の奥へしまおうとする。でもある時その記憶に出てくるシチュエーションと同じような光景を目にすると、その記憶が蘇る。そんなことは珍しくありません。つまり、記憶は消去されていたわけではなく、心の奥深く、無意識の世界にしまわれていただけということです。

記憶を「覚えていない」とすることで、自分の心を保っていることもあるのです。そういった時には、その記憶を無理に呼び起こす必要はありません。本人が「覚えていない」「忘れた」と言えば、「あら、そう」でいいのです。それが相手の心を尊重するということです。

例えば、自分にとって嫌な体験を正当化しようとする行動もあります。子どもが親から叩かれたりぶたれたりした嫌な体験があったとして、それを虐待ではなく、あえて「しつけ」として理解しようとすることもあります。虐待と理解してしまうと、自分の生きてきた過程を否定することにつながるからです。自分で自分のことを傷つけないために、自分の都合の良いように解釈する。そんな心の働きもあるのです。

そういった時も、あえてその解釈を否定する必要はありません。ただ、大切なことは、あなたがその子どもの安心・安全な存在であることを示すということです。そうやってその子どもにとって安心・安全な場所、つまり安全基地が確保されて、ようやく嫌な体験を振り返る挑戦ができるようになることもあります。

ですから、どんな嫌な体験があろうと、どんなに過去を覚えていないとしても、大切なことはその子どもの安全基地になってあげることを心がけるということです。それは地道な作業なのですが、子どもが抱える困難を乗り越えるには、その過程が必要不可欠なのです。

また、記憶の中でも、嫌な記憶をずっと覚えている子どももいます。夜眠る時にいつもその記憶が呼び起こされて、悪夢を見るという子どもがいるのですね。そういった記憶はエピソード記憶として、ずっと残っているためなかなか消えません。そういった場合には、その記憶を消そうという姿勢ではなくて、周囲の大人がその子の安全基地になってあげて、一緒にその記憶を乗り越えていく、という姿勢が大切です。嫌な体験を乗り越えさせてあげるには、以前お話しした安全基地が大切なのです。

嫌な記憶が残っていると子どもが言う場合、その記憶はほぼ無くなりません。でも、人生を歩んでいたら、そんな嫌な記憶はまたできてくるものです。ですから大切なことは、大人がしっかり子どもの安心・安全な存在になってあげながら、あらゆる体験を乗り越えさせてあげると言うことです。

例えば、「全然心を開いて話してくれない」という子どもがいたとしたら、それはまだ、その子にとっての安全基地が確保されていないからです。安心できる存在が確保できてようやく、子どもは心を開くようになります。そういうものです。

そして、その心の開き方は、年齢が増せば増すほど、ぎこちないものです。子どもの頃に安全基地が確保できていなかった子が、大人になってようやく安心できる存在に巡り会えたとした場合、やはりそこには心の出し入れのぎこちなさが顕著に現れます。それほど、子どもの頃に安心・安全な場所を確保させてあげることが大切なのです。

だいじょうぶ。

みんなでどうにかしていきましょう。

まあ、なんとかなりますよ。

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