子どもの「生きる」を考える
子どもの「生きる」を考える
小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te
代表理事 
湯浅正太
みんなとおなじくできないよ

多様性の中に見えてくるもの

2022/05/26

記事【多様性の中に見えてくるもの】

#多様性の中に見えてくるもの #子育て #小児科医 #湯浅正太

こんにちは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心に関わる物事を気ままに発信しています。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。

このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。

【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる

今日も早速コメントをご紹介したいと思います。

ラジオネームみほさん。コメントどうもありがとうございます。

「子どもの問題行動の奥にあるものに目を向ける。SOSをちゃんと受け取り、つながること。引きこもりがちな回避型の夫にも当てはまりそうです。不安型の私は意識して気をつけていたつもりですが、対応が間違っていたのかもしれません。先生の仰る通り、問題解決の糸口はシンプルに『つながり』なのですよね。色々困難はあるかもしれませんが、コツコツと諦めないことで、いつか『つながりを大切にする楽しい世界』を家族みんなで味わいたいです。今日も気づきをありがとうございます」。

みほさん、どうもありがとうございます。つながるというコンセプトを大切にすると、子どもたちへの関わりと、それによって導かれる子どもたちの行動が見えてくるようになりますね。そして、うまく感情を表現できない子どもというものも見えてきます。悲しいのに強がってみたり、嬉しいことをいたずらで表現してみたり。そんな不器用な中にも、子どもの純粋な心を感じるものです。

子どもの心は純粋なだけに、大人の影響を受けやすい。子ども本人が気づかないうちに、大人の世界に翻弄されてしまう。それが、子どもです。でも、そんな子どもの心のからくりが見えてくると、大人の心はどんなだろうという視点が生まれます。そして、「大人も結局同じではないか」と理解できるようになりますね。大人も、様々な相手の影響を受けて、自分の行動がつくり出されます。子どもも、大人も、基本的な心のからくりは一緒です。

子どもと、大人と、心のからくりに違いがあるとすれば、それは「大人は変わりにくい」ということです。子どもの頃から身につけてきた習慣や育ててきた性格は、なかなか変わりにくいものです。

そんな大人でも変わるチャンスがあります。それが、子育てです。相手の心を感じながら、自分の行動を変えようとする。すると、子どもも変わる。そんな、子どもとつながるという経験を通して、親も変わっていきます。やはり、人のすべてがつながるということで回っていくのですね。

では次に、ラジオネームひまちゅんさん。コメントどうもありがとうございます。

「視点・論点を見てフォローいたしました。7歳、3歳の親です。湯浅先生の意見に賛同、理解したいのですが、実際に自分が行動できるか、正直わかりません。同胞の方との関わりがなく未経験だからです。子どもと共に経験を積みたいのですが、アドバイス願います」。

ひまちゅんさん、NHKの番組を見ていただきどうもありがとうございます。「同胞の方との関わり」というのは、「障がいのある子どもとの関わり」ということだと理解しました。これからの時代には、自分とは違う個性を受け入れながら協力しあえる能力が欠かせないですね。

今の子どもたちの一生を考えると、つながりが大きなテーマになる時代を生きるということがわかります。コロナ禍を経験して、マスクを着用して、会話も制限されて、人の表情がなかなかわかりづらい社会を、今の子どもたちは過ごしています。つまり、つながりにくい社会です。

そしてそんな子どもたちが経験するこれからの社会は、少子高齢化・人口減少で大きく変わります。少ない人材で、多くの人を支える時代がやってきます。だからこそ、少ない人材でどうやってつながって、効率よく社会を回していくかを考えます。

そうやって、子どもの時期から大人の時期にわたって、一生を通してつながりを考える。それが、今の子どもたちです。だからこそ、つながりの価値を教育する必要があります。人とつながるとは、どういうことなのか。人とつながることで、自分の心がどれだけ豊かになるのか。そういったことの教育が必要です。

そういった子どもが置かれている状況を理解したうえで、ひまちゅんさんからいただいた「障がいのある子どもとの関わり」を考えたいと思います。

小児科医として色々な子どもたちに会うと、「普通な人なんていない」「普通って、何なんだろう?」と思うようになります。どんな人にもクセがあります。性格のクセがあるものです。それを個性と呼ぶでしょう。

障がいのある子どもと、その兄弟姉妹を考えた時に、その兄弟姉妹を「健常な兄弟姉妹」と表現する方がいます。僕はそれを聞くと、「健常って、何だろう?」と思うのですね。先ほどお話ししたように、どんな人でも個性があります。障がいのない兄弟姉妹と話す中で、その子の個性を感じます。例えば、人と話すことが苦手だったり、落ち着かない子もいます。色々な兄弟姉妹がいる中で、「健常って何なんだろう」と感じるようになるのですね。

そうやって、「障がいって、何だろう?」「健常って、何だろう?」と考えていくと、やっぱり子どもたちが見えなくなってしまうことに気づきます。「障がい」も「健常」も、人が社会の中で決めたラベルに過ぎませんからね。子どものことを知れば知るほど、ラベルではその子のことがわからない、ということがわかるようになります。

では、そうやって「障がい」や「健常」などのラベルではなく、人とつながるということを理解できるようになるには、どうしたらよいのか。それは、例えば、障がいということにとらわれずに回っている社会を経験させてあげる、ということです。そのためのチャンスは、世の中に山ほどあります。

例えば、芸術やスポーツの世界をのぞいてみる、ということです。芸術家やスポーツ選手の中にも、病気や障がいを公表していらっしゃる人がいます。そういった方たちの活動を通して、病気や障がいがあったとしても、素晴らしい絵を書いたり、素晴らしい音楽を披露してくれたり、巧みなスポーツの技を披露してくれるということがわかります。そういった世界を目にすることで、病気や障がいでは見えにくい、その人らしさを理解できるようになるものです。

例えば、病気や障がいのある子どものための家族会というのが、世の中にはたくさんあります。そういった家族会の中には、支援を求めて一般の方も参加できるイベントを企画していることもあります。そういったイベントの機会を通して、温かいつながりの中で、病気や障がいを理解する機会がもてるはずです。

これまでの社会では、「障がいがある人は、助けられる人」という勝手なイメージがつくられがちでした。でも、実際にはそうではありません。障がいがあっても、様々なものを社会に提供してくれます。先ほどの芸術やスポーツはわかりやすい例と思います。そうやって芸術やスポーツを通じて、障がいに関係なく素晴らしいものを社会に提供してくれる。そんなことが少なくありません。

そうやって、障がいというラベルではなく、人とのつながりに価値を置いて考えると、実際には色々な働き方ができることに気づくものです。

例えば、言葉がカタコトでもコミュニケーションがとれるレベルの知的障がいのある人がいたとしましょう。そんな人にも、ご高齢の方がいる福祉施設で働いてもらえると、スタッフはとても助かると思います。難しい話にこだわらずに、みんなと和やかに会話も楽しめることもあります。知的障がいのあるその人のゆったりとしたペースが、なんだかその空間を温かくしてくれる。そういった世界を想像できます。そこには明らかに価値があるはずです。

社会人として働くようになって、社会が一方的に社会の機能を狭めてしまっているところが意外と多いのだなと理解するようになります。「この人の、この能力をいかしてもらえれば、もっとイキイキとした空間になるだろうに、何で社会はその良さを引き出そうとしないのだろう」と思うことが少なくないのですね。偏った能力を育ててしまったこれまでの教育の成果が、そういった今の社会なのだろうと理解するようになりました。

ですからぜひ、障がいというものにとらわれずに回っている社会を経験させてあげてください。そうやって、障がいをみるのではなく、その人自身の良さを見出している世界に触れさせてあげてください。様々な世界に子どもたちを触れさせてあげてるということですね。

そういった経験ができるようになってくると、実はもっと面白い反応が起きます。色々な人の価値に気づけるようになると、そういった世界に触れた子どもたち自身が自分の様々な価値に気づけるようになっていくのです。そんな風に、多種多様な生き方を模索できる心が育って、自分にある様々な可能性を見出せるようになるのです。

これからの社会を楽しめる子どもたちの心を育てていけたらなと思います。

だいじょうぶ。

まあ、なんとかなりますよ。

記事のポイント!

  • 子育ては、大人が変わるチャンス
  • ラベルではなく、その人の良さを目の当たりにできる経験の大切さ
  • 多様性を理解するからこそ、自分の可能性を見出せる

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