小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te代表理事
湯浅正太
子どもの「生きる」を考える

記事【子育てと働き方】

#子育てと働き方 #子育て #小児科医 #湯浅正太

こんにちは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心に関わる物事を気ままに発信しています。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。

今日は、子育てと働き方についてお話ししたいと思います。

このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。

【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる

子どもの心の成り立ちのおさらい

早速コメントをご紹介します。ラジオネーム「メリー」さん。コメント、どうもありがとうございます。

「現在、第一子出産後育休の者です。 生まれた子供は想像以上に可愛くこれからの成長が楽しみで仕方ありません。 私は出産前昼夜土日問わず働いてきました。 復職後は出産前と同じようには働けませんものの、人手不足などもあり会社からは従前のような働きぶりを求められると思います。 ワーキングマザーの一日をインターネットで見ていると、皆さん千手観音かの如く仕事や家事育児をこなし、命を燃やしながら日々を過ごしているのがわかります。 私は期待されると能力以上に無理をするタイプなので、仕事と家庭の両立は難しいんじゃないかと不安に思っています。 取り分け、子供への心理的な影響を気にしています。昨今、共働きでなければ経済的に成り立たない家庭も多く、また、人生100年時代と言われる現代では、女性も積極的に働き続けるのが理想である事は承知しています。 時間の制約がある中で、子供にストレスを与えないように育てていくにはこれからどんな事に気をつければよいか、赤ちゃんのお世話の時期だけでなく教育が必要になる子供の時期も含めて、何かアドバイスを頂けると嬉しいです。」

メリーさん、コメントどうもありがとうございます。メリーさんにお伝えしたいのは、自分自身が人生を楽しむことを基準にして働き方を選択してもらいたい、ということです。心の平静を残していられる生活を選択してもらいたいと思います。それは、親の心の平静が子どもの一生に関わるからです。

子どもは成長する過程で、初めてのことを多く経験します。生活における基本的な習慣は、最初はすべてが新しいことだらけです。子どもが幼稚園・保育園・学校で生活するようになると、新しいお友達や先生に会います。そんな初めての経験には、不安がつきものです。つまり、子どもが生きる環境の多くに、不安がたくさんあるのです。

世の中には、愛着行動という考え方があります。それは、子どもは不安を抱えた時、自分が安心できる存在とつながって不安を解消するということでした。自分が安心できる存在とは、多くの場合、親です。生活の中で生じた不安を、親とつながることで解消していくのです。子どもが不安を解消するために必要不可欠な親の条件は、親が心の平静を保っているということです。親が心の穏やかな状態でいることが、子どもにとって欠かせないのです。もしも親が心穏やかに生活していなかったら、一緒に暮らす子どもはどうなるか。それは、子どもが怒りっぽくなったり、そわそわして落ち着かなかったり、不安が過度に強くなったり、そんな状態になります。子どもが生活する中で生じた不安を、親とのつながりで解消できなくなるからです。

そうやってしっかり子どもの心の成り立ちを理解したうえで、色々な子ども、そして親御さんに接していると、たいていわかるようになります。親御さんの様子を見れば、どんな子どもの心が育つかがわかるようになるものです。例えば、相手との距離感を掴みにくい親御さん、1か0かでしか考えられない親御さん、相手の気持ちを優先できない親御さんです。そういった生きづらさを抱えた方は、日常生活で心の平静を維持することは難しい。すると、そんな親御さんと一緒に生活する子どもは、やはり不安が解消されない。不安が解消されないから、落ち着いた行動を取れなくなってしまう。そのカラクリに間違いはありません。

そのカラクリを理解するからこそ、そんな親御さん自身も子どもの頃には、もしかしたら、同じような親子関係を経験していたのかもしれないと気づきます。そうやって、あらゆる行動は脈々と世代間でつながっていくのだと理解します。

その価値観に疑問をもつ

忙しく働く親御さんと、その子どもも同様です。働くことによって経済的に余裕がある暮らしをできたとしても、親が多忙で心の余裕がない状態でいると、その子どもには必ず支障が出ます。子どもが不安を解消したくても、それができないからです。

では、そうやって心の平静を保てない親御さんと、そのために不安を解消できない子どもがいたとして、それはその親子が悪いかというと、そうではないのですね。子どもはもちろん悪くありません。だって親の影響を受けて、不安を解消できていないだけですから。そして、その親御さんも悪くない。だって、親御さんを多忙にさせてしまう社会の環境があるからこそ、親御さんの心が穏やかになっていないからです。

そうやって、子どもはもちろんのこと、親も悪くないし、心の平静が必要ということを理解したうえで、今、そしてこれからの時代での子育てを考えたいと思います。日本人は、真面目にきっちり仕事をこなす、朝から晩まで働く、働くことがいいことという価値観をもっている。そんな日本人のイメージを聞いたことはありませんか。それがこれまでの日本社会の様子です。真面目にきっちり仕事をこなす。それはとても大切なことと思います。

でも、朝から晩まで働く、働くことがいいこと、という価値観は少し見直した方がいいと思っています。だって、そういった価値観をもった日本社会が招いた結果が、今の社会だからです。これまでの社会は、子どもを育てづらいと感じさせる社会をつくりました。少子高齢化や人口減少はもうずいぶん前からわかっていた。なのに、これだけ対策が遅れている。それは、社会の中に昔の日本社会での働き方を認めたい、という思いが残っているからです。朝から晩まで徹底的に働く。それがいいこと。そういう考えがまだまだ残っているからです。

人は、自分の心を保つために、自分が置かれた環境を受け入れよう、正当化しようとします。それはごく自然な心の働きです。だって、自分の置かれた環境や自分の行動を否定することは、自分を否定することにもつながりかねないからです。だから、これまでの時代を社会人として生きてきた方には、自分たちの生き方を認めたいという心が自然と働きます。そしてその心は、今の社会を変えにく方向に働くかもしれません。それに、これからの社会は高齢化社会です。これまでの社会を働いて生きてきた方達が、社会の多数を占めるということです。しかも企業の指導人の中には、これまでの時代を生きていた人たちがまだまだ多く存在する。だからこそ、なかなか働き方は変わらない。

一方で、今子育てをしている世代は、社会で汗水流して一生懸命働いています。その世代は、「子育てしにくいよ」「働きにくいよ」「働き方をどうにか変えたいよ」と嘆いています。今子育てをする世代は「自分たちがこれだけ生きづらいと感じているのに、どうして社会は変わらないのだ」と違和感を感じているはずです。それは、社会を制御している世代と、実際に子育てをしている世代が違うからです。メリーさんからの「時間の制約がある中で、子供にストレスを与えないように育てていくにはこれからどんな事に気をつければよいか」というご質問に、僕はこうお答えします。それは、価値観を修正することをお勧めする、ということです。これまで正しいとされてきた価値観に疑問をもつ、ということです。

親が楽しく過ごす

小児科医として目の当たりにしている現実は、親が、家庭のために、子どものために忙しく働いたとしても、結局子どもが生きづらさを生じてしまうという現実です。子どもが生きづらい様子を見て、親も苦しくなります。すると、「いったい何のために働いているのだろう?」という疑問を抱くことになります。家族のため、子どものために働いていたにも関わらず、親が働きすぎてヘトヘトになり、心の平静が保てないばかりに、子どもの生きづらさを生み出してしまう。そのサイクルにはまっていたのが、これまでの時代です。

いくら社会でお金を稼いでいても、親子の心のカラクリを知らない家庭では、子どもの不安が親子の関係で解消されずに、子どもが生活に適応できなくなってしまう、ということも珍しくありませんでした。しかも、それまでの暮らしを見直すべきだったと気づくのは、子どもが成人になった頃。後になって、家族や子どもの幸せに必要なものは、お金ではなくて、もっと他にあったと気づくということです。そういう現実がありました。

そのことを知ってしまっている僕としては、親が楽しく過ごせるということを基準にして、働き方を選択することをお勧めします。そこで必要なのは、先ほどお伝えした「価値観を修正する」ということです。なぜなら、これまでの価値観が、どうしても自分の働き方を変えづらい方向へと導いてしまうからです。これまで受けてきた教育の影響が心のどこかに根強く残っているということです。

週5日働くことが当たり前、朝から晩まで働くことが当たり前、そんな価値観がどうしてもあるはずです。その働き方で招いた結果が、今の社会です。変えないといけないとわかっていながら、変えられない。人の心にはそんな性質があります。

週3日でもいい、朝から昼まででもいい。そうやって、これからの時代ならではの生き方を模索していく必要があります。そのためには社会が親子の心のカラクリを理解しなければなりません。社会にそういった理解が普及するには、日本の教育から変わっていかなければなりません。教育により人の心のカラクリを理解できる国民が育つからこそ、社会は人の心を理解した世の中に変わっていくのです。

これからの時代には、これまでの働き方は絶対に通用しません。でも、まだまだこれまでの働き方を正当化する意見は残るでしょう。社会は急には変わりません。それは、人は変わらないからです。大人はなかなか変わらないのです。大人はなかなか変わらないからこそ、働き方を変えにくい環境がこれからもまだ続くと思います。それはそういうものです。

だからこそ、今の子育て世代から、社会へどんどんアピールする必要があると思っています。声を上げる、ということです。「この働き方では、子育てができません」。そういった声を一つひとつ積み重ねていくことが大切な時代と思っています。

こんなことを話している僕自身はというと、小児科医をしながら、作家の活動もして、法人の活動もしています。そして、息子たちの親でもあります。そんな僕の生活は、とても楽しい生活です。でもそれはもちろん、周りの理解がなければできません。だからこそ、周りの方々にはとても感謝しています。感謝しながら同時に、子どもの心のカラクリを理解するからこそ、世の中の親の働き方を変えなければならない、この社会を変えていかなければ、子どもたちの幸せはないと思っています。

社会を変えようと思うと、大事なことは教育が変わるということです。子育て世代が生きやすくなるには、日本の教育から変わる必要があります。「子どもの心って、こうやって育つんだよ」「人って、つながりを求めて生きているんだよ」「だから、心の平静を保てる働き方がとてもとても大切なんだよ」。そんな教育があるからこそ、人が生きやすい社会を求める大人が育ちます。そして、そんな大人たちが新しい社会をつくるのです。

今はそういった新しい時代への過渡期です。過渡期には、変わりにくさがあるものです。そんな風に子育てと働き方について話していたら、こんな時間になってしまいました。今日はこのへんで終わろうと思います。

色々ありますが、だいじょうぶ。変えていきましょう。まあ、なんとかなりますよ。

記事のポイント!

  • これまでの価値観に疑問をもつ
  • 親が楽しく生活することこそ大切
  • 働き方を変えよう

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