小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te代表理事
湯浅正太
子どもの「生きる」を考える

親子にとってのちょうどいい暮らし

2022/05/09

記事【親子にとってのちょうどいい暮らし】

#親子にとってのちょうどいい暮らし #ちょうどいい暮らし #子育て #小児科医 #湯浅正太


おはようございます。絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心に関わる物事を気ままに発信しています。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。

今日は、親子にとってのちょうどいい暮らし、というテーマで考えてみたいと思います。

このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。

【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる

お金を手にすることとが安定しない

早速コメントからご紹介したいと思います。僕の法人のYukuri-teへいただいたコメントですね。お名前は出さずに、内容をちょっとだけご紹介したいと思います。

「小学6年生と3年生の孫がいる、61歳のおばあちゃんです」ということでご相談のコメントをいただきました。どうもありがとうございます。内容は、大人になった次女が、いまだに「生活費が足りないからお金を貸して欲しい」と親の手助けを求めてくる、ということでした。

情報があまりないので、このお話に登場する次女の方が、お金の使い方が派手で散財してしまう方なのかがわかりにくいところです。例えば、お金を手にすることと、お金を消費すること、両方の視点からこのケースを考えてみましょう。

まずは、お金を手にすることとが安定しない、という視点です。例えば、お金はあまり使わないのだけれど、なかなか仕事が安定しない、というケースがありますね。人とのコミュニケーションが苦手だったりすると、職場での人間関係がうまく維持できない。すると、就職しても、すぐにその仕事をやめてしまう。そんなケースがあります。

そんな人は、周りの人が思う以上にストレスを抱えているものです。「え、そんなことで?」と思うような些細なことでも、心の中ではとてもストレスフルに生活していることが少なくない。だから、会社に行く朝になると、身体が重く感じられて、会社に行くのが億劫になる。そんな人がいます。その人自身も、本当はうまく生活したいのです。でも、できない。

大人になると、うまく生活できないことがその人の責任になってしまい、その人が責められます。「なんで、体調管理ができないんだ?」「なんで、人とのコミュニケーションをしっかりとれないんだ?」「いったい、子どもの頃に何を学んできたんだ?」、そんな風に怒られてしまうこともあります。

僕は小児科医として、あらゆる年代の子どもの他に、そのご家庭の親御さん、おじいちゃん・おばあちゃんにもお会いします。すると、子どもや親御さんの生きやすさ、そして生きづらさなどが、どんどんつながっていくのです。人の行動のあらゆるものがつながっていく。

それを理解するからこそ、社会人として働く人たちを見ると、それまでに育ってきた養育環境を想像してしまいます。笑顔が絶えない人を見ると、笑顔に溢れた家庭を想像します。でも中には、一見笑顔が多いけれど、心がとても弱い人もいます。そんな人には、笑顔でいることでどうにか自分を保っていた養育環境を想像します。社会人になるまで一生懸命生きてきた、それまでの背景が想像できると、やはりその人を応援したい気持ちになるものです。

あるいは、ガミガミあらゆるところで怒ってばかりで、自分の型にハマらないと許さない、そんな心の余裕のない人もいます。そういう人が指導者になってしまっていると、その部下が可哀想で仕方ない。世の中の正義と言われるものが、意外と極端な正義なこともある。そんな心の余裕のない人を見ると、やはり余裕のない養育環境で育ってきたことを想像してしまいます。

心の余裕のある人にとっては「どんな風でもいいんじゃないの」と思ってしまうようなことが、心の余裕のない人の元では「こうでなければならない」になっていることもある。それが、この社会なのだろうと思っています。でも、そんな余裕のない人を見ると、やはり余裕のない養育環境で育ってきたことを想像する。養育環境から、社会がつくられる。そういったことを感じてしまいます。

そんなことを考えながら社会を見ていると、正直なところ、社会でうまく生活できないと言われてしまう人に対しては、やはりその人のせいにしてしまっては可哀想という気持ちが生まれます。「怒って直るならいいけれど、子どもの頃に経験できていなかったかもしれないつながりを、もっとつくってあげたらいいんじゃない?」と思ってしまうことが多いものです。

つまり、その人とつながって、安心感を生み出しながら、その人のいいところを見つけ出すことをしてみてもいいのではないの、と思うということです。そんなゆとりのある上司のもとでなら、その人ももっとうまく生活できるだろうと思ってしまいます。ということで、お金を手にすることが安定しない人の場合は、ひとまずその人とつながりながら、安心感を提供して、次のステップを探っていくことをしたいものです。

お金を消費してしまう

では次に、「生活費が足りないからお金を貸して欲しい」と親の手助けを求めてくる人が、お金を消費してしまう人である場合を考えてみましょう。お金を消費してしまうことを「散財」と言ったりしますね。医療者をしていると、生活支援が必要なご家庭に関わる機会も多いものです。そうすると、この散財をしてしまう人に出会うことは珍しくありません。

仕事のストレスが溜まった時などに、一気にお金を使ってしまう。自分でも「お金を使ってしまって申し訳ない」と思っていても、お金を使ってしまう。そういう人がいます。そういう人の背景には、発達障害なども含めた様々な個性が隠れていることが少なくありません。生まれもった個性や養育環境によって、子どもの時期からストレスを抱えやすい状況で育っていることもあります。本人も苦労をしながら育ち、ストレスフルになってしまうあまり、パチンコや競馬などの娯楽にお金を消費してしまう。

でも、ここでちょっと考えてみてください。僕の放送を聴いてくれているリスナーの方なら、ちょっとわかるかもしれません。子どもに不安が生じた時、子どもはどんな行動をとったでしょうか?そうです、親とつながることでその不安を解消しようとする行動をとりました。子どもは不安が生じたら、親と話をする、親に抱きつく、親に触れる、そうやって親とつながりながら不安を解消します。そして、子どもが成長すれば、不安を解消できるつながりは広がります。それは、親だけでなく、友人やパートナーとのつながりだったりします。

お金を使ってしてしまう人はいつの間にか、不安やストレスの解消法が人とのつながりではなく、他の別のものに変わってしまっています。他のものを手に入れるために、お金を使ってしまうということです。そう理解できると、人とのつながりの価値を実感できていないその人は、やはり可哀想なのです。

もちろん、人とのつながりの価値を感じられない裏には、発達障害などにより、人とつながりにくいその人らしさがあることも少なくありません。それに、その人にはどうしようもできなかった、人とのつながりを経験しづらかった環境があったかもしれません。

お金を散財してしまうクセというのは、実に厄介なものです。一筋縄ではいかないことが珍しくありません。その人の支援には、根気が必要ということです。しかもその根気には、つながりを大切にする根気が必要です。その人の心が落ち着くための手段が、ものに向かうのではなく、本来人が求める「人とのつながり」に向かうように、つながりを大切にします。

その人にお金を貸すということは、現実的には避けられない状況が多いものです。そうであれば、お金を貸すことに加えて、自分とつながることを提案してみてください。一緒に食事をする。一緒に旅行する。そうやって、その人に自分とのつながりを大切にする機会を提供してあげてみてください。そして、人とつながることで、不安やストレスが解消されるという経験を積ませてあげてください。

その人自身は、お金を使ってしまうことに負い目を感じているものです。自分でも直したいけれど、それができない。そういう気持ちを抱いています。適度な生活を送るためには、親子にとってのちょうどいい暮らしをするためには、やはり親子のつながり、人とのつながりを大切にするということと思います。

つながる力を育てる教育

ここで、最後に他にいただいたコメントをご紹介させていただきます。

ラジオネームみほさん、いつもありがとうございます。コメントを一部抜粋してご紹介します。

「子ども時代に家庭で獲得できないつながりの温かさを、社会や学校でも得られるようになると、本当に多くの家族、そして世の中は救われるだろうなあと感じます。先生のお話を聞くことで、自分の心を整理し自分を救い、そして家族も救われます。『鏡の法則』を意識しながら、今日も過ごそうと思います」。

どうもありがとうございます。本当は家庭の中での親子のつながりが一番ですけどね。でもどうしても親子ではつながりにくい、という家庭環境があることを理解しています。自治体、医療機関など、様々な人が協力して、一人の子どもを支援する。小児科医として、そんな状況を目の当たりにしています。

だからこそ、つながる力を育てる教育の必要性を訴えています。その子ども自身にも、親にもどうしようもできない環境がある。それを知っているからこそ、人を育てる教育から変えていきたい。そんな風に思っています。偏った価値観を生むのではなくて、人として大切なつながる力をしっかり育てられる教育の必要性を強く感じます。

そんな風に色々思うところがあります。だいじょうぶ。まあ、なんとかなりますよ。

記事のポイント!

  • 生活にうまく適応できない子どもには、つながって安心を与えてみる
  • 親とつながることで不安が解消される体験を積ませてあげる
  • つながる力を育てる教育が必要

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