小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te代表理事
湯浅正太
子どもの「生きる」を考える

子どもへの対応に感じるその人が育ってきた社会

2022/05/07

記事【子どもへの対応に感じるその人が育ってきた社会】

#子どもへの対応に感じるその人が育ってきた社会 #子育て #小児科医 #湯浅正太

こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心に関わる物事を気ままに発信しています。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。

今日は、子どもへの対応に感じるその人が育ってきた社会、というテーマで考えてみたいと思います。

このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。

【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる

珍しくないその反応

毎日100人以上の方にこのラジオを聴いていただいて、本当にそれはすごいことだなあと思います。多くの人に子どもの心のカラクリを知っていただく。そうすると、子どもの心だけではなく、親自身の心のカラクリも理解するようになります。すると、「人の人生って、そうやってつながっていたのかあ」と理解します。その世界をぜひ楽しんでいただければと思います。

それでは、コメントをご紹介します。ラジオネームみほさん、いつもコメントありがとうございます。今日は少し内容が重いかなと思いますが、とても大切なことが詰まっていると感じているので、あえてご紹介しながら一緒に考えていきたいと思います。

「いつも心に響くコメント返しに感謝します。そうなんです。先生のおっしゃる通り、タイプの違う家族は、順調な時はお互いの違いが楽しく感じられます。しかし、問題を抱えた時、捉え方の違いにがく然としてしまいます。それでもつながり続け、人生の終わりの時に『安心だった』と感じる・・まさに私の目指すところです。

しかし、夫からの言葉、『長女は病気なんだろ。何やっても無駄なんだろ。諦めて放っておけ』。長女に聞かれたこともあります。言われる度に私は心がえぐられる感覚でした。一度はメールで謝ってきた夫。水に流してしまえば良いと思いながらも、長女を傷つけたことを考えると、簡単には許せません。私の心にもシコリとして残っています。

過去の写真を見るとそこには優しい夫もいます。つながり続けるためには、今を乗り切るしかないと分かっているのですが、葛藤します。すべて許して受け入れられる神様みたいな心が欲しいです」。

みほさん、どうもありがとうございます。ショッキングな内容でしたけれど、あえて取り上げさせてもらいました。それは、いただいた内容に、親と子どもの大切な反応の鍵が隠れていると理解しているからです。そして、小児科医の立場からお父さんの対応に感じるのは、お父さんの罪というよりも、お父さんが育ってきた社会の罪です。

みほさんが教えてくれたように、家族みんなの心が快適な時には、みんなに笑顔があります。そこに困る人はあまりいないでしょう。一方で、その逆も同じなのです。家族の誰かの心が落ち着かずに悲鳴をあげていると、その心に同調して他の家族も心が落ち着かなくなるものです。心は鏡のようなもので、次から次へと心の様子が伝播していくのです。

例えば、子どもの心が落ち着かずに、助けを求めている時のことを考えてみてください。子どもが助けを求めていれば、その子どもを助けてあげればいい。頭では、そう思うでしょう。でも、実際にはどんなことが起こりやすいと思いますか。それは、助けを求める子どもを見て、それを見た大人も心が落ち着かなくなってしまい、落ち着かない心に対して、落ち着かない心で返すという反応です。本当は子どもを助ける必要がある場面で、なぜか辛く当たってしまう。そういうことが起きます。

この現象は、決して珍しくないのです。意識して親子の心の反応に目を凝らしていると、子どもが助けを求める場面で、その助けを跳ね除けてしまうように対応してしまう親御さんは、実は少なくありません。

不安を抱える子ども

心を診るという訓練をしていると、自分の心が無意識のうちに操られないように注意するようになります。目の前に助けを求めている子どもがいる場合、自分の心が乱れてしまうかもしれない。そうならないように少し意識します。特に、不意に助けを求められた時などは、注意が必要です。突然助けを求められると、反射的に冷たくあしらってしまうことがあるからです。

そういう理解があるからこそ、子どもがSOSを発している時に、冷たいコメントをしてしまうお父さんの行動は、実は不思議ではありません。特に、SOSに優しさで応えることに慣れていない人は、そういった反応を起こしてしまうのです。このパターンは、実は社会でよく見かけます。どこの会社にも、実はそのようなやりとりがあるものです。

先ほど、SOSに優しさで応えることに慣れていない人は、子どもの不調な心に同調して、冷たい態度であしらってしまうことをお話ししました。ここでいう、SOSに優しさで応えることに慣れているかどうかは、幼少期の親子の関わりが関係します。ここはとても大切な部分です。

冷たい対応をしたお父さんに目が行きがちですが、僕の目はお父さんには向いていません。僕が注目するのは、お父さんが育った社会であり、そこで行われてきた教育です。

例えばそれは、素行の悪い少年をどのように捉えるか、ということに似ています。盗みなどの問題行動をする少年を見て、その原因を少年に求めるかというと、そうではありません。それもやはり、少年が育った社会です。

もちろん、少年と大人とでは、責任の所在が違います。それに、親になるということは、親の権利という親権を手にします。それは、とても重い権利です。大人の責任、親の責任。ある程度の規律を設けなければ、社会が成り立たないためやむを得ない。でも人の行動の多くが、その人が生きた社会にあることも理解したいものです。

子どもの頃というのは、わからないことだらけです。世の中の仕組みがわからず、物事の見通しもわかりません。わからないことが多いと、人は不安を抱くものです。つまり子どもの時期には、不安があって当然ということです。

そもそも人は不安と付き合っていくもの、とお話ししたことがありますが、子どもの頃は特に不安があるものです。そんな子どもの頃に経験しておくべきことは、生じた不安を親との関わりで解消していくということです。不安があるから、親のもとに駆け寄り、ギュッと抱きしめてもらう。手をつなぐ。話をする。不安を抱いた時に、親がどのように関わってくれたかはとても大切なのです。

子どもが乗り越える不安

ここで、僕の思い出話をしてみます。僕は小学校4年生の頃に、引っ越しのために転校を経験しました。転校する前には、お友達から「別の学校に転校するって、なんだか心配じゃない?がんばってね」なんて、声をかけてもらうことがありました。そんな優しい声をかけてもらった時、僕は見栄を張って「大丈夫だよ、へっちゃらだよ」なんて言って誤魔化していた記憶があります。本当は、まったく知らない学校に転校することに大きな不安を抱えていました。

「新しい学校で、うまく生活していけるかな?」「お友達は、みんな優しいかな?」なんて、不安に思っていました。そんな不安をもちながら、新しい小学校での生活がスタートしました。確か転校して、1日目か2日目の時だったと思います。転校した先の学校では、転校前の学校よりも早く進んでいました。算数の授業の時に、「はい、じゃあ、ドリルのここを解いてみようか」と先生が言った途端、クラスのみんなは黙々と計算問題を解いていく。でも、僕はわからない。そんな雰囲気の中で、僕は授業中に泣いてしまったんですね。僕だけ授業を理解できていないという不安な思いでいっぱいだったからです。

そんな日がしばらく続いたある日、うちに帰って勉強がわからないってことを泣きながら母親に言ったんですね。そして、母親にギュッと抱きしめてもらったことがありました。小児科医として子どもの発達を学んで、色々な困難を抱える子どもたちの心の反応を理解するようになって、あの頃の自分の行動と親に抱きしめてもらったという経験が、僕の心の成長にとってどれほど大切なことだったかを感じるようになりました。そして、大切な経験だったからこそ、今でも覚えているのだろうと思います。

ここで、先ほどの話に戻ります。子どもが心が落ち着かずに助けを求める時に、冷たく反応するのではなく、しっかり子どものSOSに応えてあげられる大人になるために必要なこと。それは、その大人が子どもの頃に、不安を抱えた時に親に助けてもらったという経験です。大人自身に、子どもの頃に親に救ってもらった経験が必要なのです。

ですから、お父さんのお子さんへの反応をうかがった時に僕が感じることは、そのお父さん自身は子どもの頃に同じような経験をもっているのではないか、ということです。親にいっぱい遊んでもらった経験、不安を抱えた時にいつも親がそばにいてくれたという経験が、豊富に感じられるかというと、ちょっと違うのかなと感じてしまいます。

それがお父さんのせいかというと、実は違う。実際には、お父さんにはどうしようもできなかった幼少期の体験に原因があるのかもしれない。でも社会という枠組みの中で、親権を手に入れた親という立場も考慮すると、どうしてもお父さんに目が向いてしまいます。親のせいになる、というカラクリは、そのようにできています。

そして、発達特性があるから、それは病気だから、何をしても無駄だろう、というのは、つながりの力が理解できていれば、避けられる考え方です。つながることの力を理解すれば、発達障害というラベルで解釈するのではなくて、少し違った角度からその人を理解できるようになる。そこにも、つながりを大切にしてこなかった教育の責任を感じます。

今、社会の中で当たり前とされている物事、ラベルで判断されている世界への解釈は、つながる力が育っていれば、大きく変わります。そういったカラクリを一つひとつ発信しながら、子どもたちの教育を変えていきたい。


そんな風に色々思います。だいじょうぶ。まあ、なんとかなりますよ。

記事のポイント!

  • 心のクセがあるもの
  • 大人の子どもへの反応に、その人が育った社会を感じる
  • 子どもはつながり方で変わるもの

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