小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te代表理事
湯浅正太
子どもの「生きる」を考える

学校を休むことができるという保証

2022/04/27
#学校を休むことができるという保証 #子育て #小児科医 #湯浅正太

記事【学校を休むことができるという保証】

こんにちは。絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心に関わる物事を気ままに発信しています。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。

今日のお話に行く前に、ちょっと触れたいことがあります。それは、実は4/24(日)のNHKラジオ「NHKマイあさラジオ」の「落合恵子の絵本の時間」というコーナーで、僕の絵本「みんなとおなじくできないよ」をご紹介いただきました。僕は知らなかったのですが、他の人から教えてもらいました。落合恵子さん、番組のスタッフさん、どうもありがとうございます。とっても嬉しいです。

たくさんの人にこの絵本を読んでいただき、共感していただけていることをとても嬉しく思います。戻ることできるのであれば、少年時代の僕自身に今のこの状況を伝えてあげたいと思います。「君の気持ちを理解してくれる人が、この世の中にはたくさんいるんだよ」と言ってあげたいですね。

少年時代の僕は、周りに人がたくさんいたとしても、心の中では「一人ポツン」という感じでした。こうやって話している今も、世の中のきょうだい児の中には、悩みを抱えている子どもも多いと思います。悩みを悩みと感じられていない子もいるかもしれません。誰が悪いというわけではない環境の中で、生きづらさを抱えてしまう子もいるのです。

もちろん、例えば「障害児」や「きょうだい児」という形で一括りにしたらその子のことがわかるかというと、そういうわけではありません。やっぱり、その子ども自身と対話してつながらなければ、その子のことはわかりません。ですから、僕の絵本をきっかけに、「その子のことを知ろうかな」と寄り添える機会につながれば嬉しく思います。

そんな、落合恵子さんのラジオについて触れた後に、今日は、子どもが密かなSOSを出している時に、学校を休むことができるという保証がどれだけ大切か、ということに触れたいと思います。

このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。

【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる

ストレスを感じたら

人はストレスを感じた時、何らかの方法でそのストレスを解消しようとします。その代表的な手段が「話す」という行為です。そのほかには、スポーツが好きな人であれば、体を動かすということもストレス解消につながります。音楽を聴くことが好きな人であれば、好きな音楽を聴きながらストレスを解消することもあるでしょう。

僕だと、音楽を聞くのが好きですから、音楽を聴きながら自分の心を整える、ということをしたります。しかも一つの曲を何度も何度も繰り返し聴くのが好きなので、「またこの曲、聴いているの」なんて笑われることもしばしばです。一つ「好き」ということが決まると、そのことがずっと続きます。

では、人がストレスを感じて、自主的にそのストレスを解消するまでの過程を考えたいと思います。自主的にストレスをコントロールすることを考えると、まず理解しておきたいことがあります。それは、ストレスに対処するには、そもそもストレスを感じる必要があるということです。

人はストレスを自覚するからこそ、そのストレスを解消する行動をとります。でも、ストレスをしっかり自覚するということでなくとも構いません。例えば「あ〜疲れた、気晴らしでもしようかな」というように、漠然と自分の心の負担を自覚するだけでいい、ということです。そうやって、何となく気持ちの疲れを感じて、自然と運動しに出かけたり、音楽を聴くなんて行動が取れればいいのです。

「ストレスを自覚するなんて簡単でしょ。そんなの誰にでもできるよ」という方がいるかもしれません。でも、そうでもないのです。ストレスを自覚できない人は、案外いるものです。自分では別に普通に生活しているつもりでも、実はストレスがあった。ストレスを意識できていなかったけれど、実はストレスがあって、知らず知らずのうちに身体が悲鳴をあげる。そんなことがあるのです。

自分でストレスを自覚できずにいると、人の身体はどうなるでしょう?頭痛が増えたり、腹痛が増える。あるいは、身体がなんだかだるく感じる。そんな現象が起きます。つまり、ストレスがあるのにそれを解消できないでいると、代わりに身体が悲鳴をあげるといことです。

例えば、新入社員が新しい職場で頑張って働いていたとします。毎日新しい出来事の連続です。でも必死にその仕事をこなそうと頑張っていました。人にとって新しい出来事は、何かとストレスが多いものです。ストレスが多いはずなのに、「新しい生活は大丈夫?」と言われても、「大丈夫」と返事をしていた。そうやってストレスを自覚できずに頑張っていた。

すると、どうなると思いますか?4月は頑張って切り抜けたけれど、5月頃から次第に朝に頭痛や腹痛を自覚するようになる。「アレ、また頭痛だ」「また、腹痛だ」。そうやって、ストレスを自覚できずに気分転換をしないでいると、代わりに身体が悲鳴をあげるのです。

そんな風にストレスを自覚できない人は、意外といるものです。そしてそれは、人生経験が浅いうちに起こりやすいものです。つまり、人生経験が浅い子どもは、注意が必要ということです。周りの大人からすると、ストレスを感じても当然という場面でも、子ども自身は意外とケロッとして張り切ってこなそうとすることも少なくありません。心が感じているはずのストレスが、なかなか自覚されないということです。

気持ちを言葉にすることが苦手なら

そんな、ストレスがあるだろうけれど頑張ってしまう子どもに対しては、そっと「ちょっと休もうか」と言って、休憩を促すことも大切です。あるいは、「お母さんだったら、あるいは、お父さんだったら、ちょっと息抜きしたくなるかも」と言って、一般的にどんな風に感じることが当然なのか、疲れを感じてもいい、といったことをポロッと言ってあげます。

ここがポイントです。ポロッとということです。しつこく何度も何度も指摘するのではありません。「大丈夫?大丈夫?」と過度にストレスを気にしてあげる必要はありません。それでは不安を煽ってしまうことになります。そうではなくて、そっと、ポロッと、支えてあげるイメージです。すると、「そう言われてみれば、自分は疲れているのかも」と、ストレスを適度に自覚しやすくなるのです。

ではここからは、子どもがストレスを感じたとして、子どもがそのストレスを言葉にして誰かに伝えることを考えましょう。あなたは、自分の気持ちを誰かに伝えることは得意ですか?「もう疲れちゃったよ〜」「今日はヒヤヒヤしたことがあったよ〜」「あ〜ストレスがたまる」。そんな風に自分が感じたことを、言葉にして表現することは得意ですか?

断っておきますが、自分の気持ちをどの程度言葉にして表現した方が良い、という決まりはありません。その人その人によって、言葉での表現の適量というのがあるものです。中には、ブツブツ文句を言うことで自分の心を保つ人もいるでしょう。誰かに喋りまくると言う人もいるでしょう。その様子は人それぞれです。

少なくとも、自分の中に抱いた不安や葛藤の気持ちなどを、どんな程度でもいいので、その人なりの程度で言葉にして外に発散できることが大切です。でも、子どもに限らず、自分の気持ちを言葉にして表現することが苦手な人がいます。そんな子どもは、「おとなしそう」とか、「寡黙」とか、そんな言葉で表現されていることも少なくありません。

ですから、気持ちを言葉に変えて表現することが苦手そうな子ども、あるいはそんな大人がいたら、その子やその人の気持ちを言語化してあげてください。「ちょっと大変だったね」「ちょっと緊張したね」。そんな風に、その子あるいはその人が思っているのかな、という気持ちをわざと言ってあげてみてください。

すると、そうやって気持ちを言語化してくれた経験は、「そんな風に言えばいいんだ」ということを学ぶ機会になります。また、そうやって自分の気持ちを言語化してもらうことで、あたかも自分の気持ちを聞いてもらったかのような体験をしてもらえるので、やはりその子の心は楽になります。

休んでもいいんだよ

でも、周りの人がいつもその子の気持ちを言語化できるかというと、そうもうまくはいきません。すると例えば、新学期が始まって、4月は頑張っていたけれど、5月になって頭痛や腹痛が増えて、朝にはなかなか起きてこない日が増えるようになる。そんなことがあります。自分の抱えている気持ちをなかなか周りにアピールできずにいる子どもに多いパターンです。

そんな時は、「ちょっとずつでいいよ」という安心感を子どもに与えてください。そして、子どもが頭痛や腹痛などを通して訴える心のSOSを感じながら、「ちょっと学校を休んでもいいよ」という保証をお子さんに与えることも考えてみてください。

世の中には、学校を休まずに耐えるという経験も大切、という意見もあります。もちろん適度なストレスを感じながら、そのストレスを克服していく経験は大切です。でもそれは、その子どもをしっかり支える体制があり、ストレスが過度ではないなら、の話です。親御さんも学校も、困難を抱える子どもの気持ちを察しながらささやかな支援をできて、子どものストレスが適度に乗り越えられるくらいであれば、の話なのです。

そういった支援を工夫したり、適度なストレス状態にもっていくことが難しいなら、学校を休める保証を子どもに用意してあげることも大切です。どんなストレスも、やはり適度がいいのです。これから5月を迎えます。4月頑張っていた子どもも、5月になると疲れが出てくるものです。会社の新入社員もそうです。

学校を休みがちだったから、社会では通用しないということでもありません。社会人になると会社を休むということはなかなかできないでしょうけれど、だからこそ、義務教育期間を通じて適度なストレスで子どもの心をコントロールするということを考えたいものです。心のマネージメントを含む色々な経験は、必ず大人になってから生かされます。

そんな風に色々思うところがあります。だいじょうぶ。まあ、なんとかなりますよ。

記事のポイント!

  • 子どもは、ストレスを認識しにくいこともある
  • 子どもは、気持ちを言葉で表現しづらいこともある
  • 休めるという保証は大切

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