子どもの「生きる」を考える
子どもの「生きる」を考える
小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te
代表理事 
湯浅正太
みんなとおなじくできないよ

子どもへの理解に社会とのズレを感じたら

2022/04/25
#社会とのズレを感じたら #子どもへの理解に社会とのズレを感じたら #子育て #小児科医 #湯浅正太

記事【子どもへの理解に社会とのズレを感じたら】

こんにちは。絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心に関わる物事を気ままに発信しています。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。

今日は、子どもへの理解に社会とのズレを感じたら、というテーマで考えてみたいと思います。子どもへの理解に社会とのズレを感じたら、シンプルにそっと社会に伝えてみてください。そのことに触れていきたいと思います。

このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。

【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる

発達障害から考えるつながる社会

まずは、コメントをいただいたので、ご紹介したいと思います。ラジオネームみほさん、いつもありがとうございます。コメントを一部省略しながらご紹介させていただきます。お子さんについて、 「一見、障害はわかりません。不機嫌になることが多い子だなあと感じていましたが、個性と思って育てていました。突然不登校になり、不登校について本などで調べているうちに、もしかして・・と思い受診しました。はっきり診断は下されていませんが、生活する上で困難な事が多々あります。障害がはっきり見えないだけに、色々な壁があると思います」。

コメント、ありがとうございます。生活での生きづらさを抱えるお子さんについて、発達障害かもしれないということで病院を受診された、ということですね。発達障害は、なかなか外から見ただけではわからない事が多いですね。日頃その子に接している親御さんが感じるものと、初めて会う、あるいはたまに会うだけの他人が感じるものは、やはり違うこともあると思います。

僕は実は、この課題が社会にとって、人につながることを意識するための動機づけになったくれればと思っています。つまり、発達障害というものが社会に理解されていくことによって、周りから見ただけでは発達障害の有無やその困難がわかりづらいということを理解してもらいたいと思っています。そして、そのことで、「いやいや、発達障害に限らず、人ってそういうものだぞ」という理解に発展してくれればと思っています。

今の社会は人と直接つながることなく、その人を評価しようとしてしまうところがあります。人と直接話さずに、SNSなどを使ってコミュニケーションをとる。その人の顔が見えない状態で、相手のことを探りながら文字だけのやりとりをする。そのことが普通の時代になりました。

相手の表情も、声のトーンもわかっていないのに、わかったかのように誤解してしまうところがあります。直接の会話体験を多く経験してから、SNSを利用するという流れであれば、その誤解は生まれにくくなるのかもしれません。でも、幼いうちから、SNSでのコミュニケーションにさらされた子どもたちは、人を理解するということを誤解しかねない、そんな危うさをもっていると考えています。

今、発達障害と診断される人が増えています。そう診断される人の中には、人の感情を読み取る事が苦手な人もいます。すると、実際の会話よりも、SNSでのコミュニケーションの方が明らかに楽なわけです。感情を表情として表現するのが苦手な人もいます。でも、SNSによるコミュニケーションだと、声のトーンもわからなければ、表情も見えてこないため、やはり楽だったりするのです。

そんなSNSが普及している社会では、こんな事が起こります。SNSでは楽しいやりとりができて、その後直接会うことになった。直接会うようになって初めて、ようやくその人の特徴が明らかになった。そんなことは、珍しくありません。だからこそ、人としっかりつながり理解するとはどういう事なのかを考えたいと思います。その人の特徴が見えにく発達障害を理解することによって、人と直につながらなければ、その人の事が理解できないという認識をもてる社会ができてくればと思います。

そっとシンプルに

では、その見えにくい特徴を社会に理解してもらうために、どんな手段があるでしょうか。例えば、知能検査があります。知能検査を行うことによって、その人の得意・不得意の分野がわかります。もちろん全ての能力がわかるわけではありません。人への優しさなどを評価できるわけではありません。でも、ある特定の能力を評価する事ができます。

見て理解することが得意なのか、聴いて理解する事が得意なのか、一時的な記憶が得意なのか。そういった特徴がわかります。そういった子どもの特徴を示すことで、社会に理解を促すということもできるでしょう。

ちなみに少し脱線しますが、ここで少し子どもへの接し方をお話ししたいと思います。僕には、色々な生きづらさを抱える子どもたちや、その知能検査の結果を見ていく中で感じている事があります。それは、どんな子どもであっても、どんな特徴があったとしても、五感を通じてシンプルにそっと伝える、ということは失敗しないという事です。

人には五感があります。見て、聴いて、嗅いで、味わって、触る。この五感を通じて、人は情報を受け取っています。であれば、この五感を使わない手はありません。もちろんその感覚ごとに、情報の入手しやすさは人それぞれです。でも、使っていない感覚はないのです。だからこそ、五感を利用するという意識は大切と思っています。

そして、やはりシンプルにそっと伝える事が効いてきます。ガミガミ言われたい人なんていません。矢継ぎ早にアレもこれも指示されたい人も少ないでしょう。どんな特徴があろうと、シンプルにそっと伝える事は大切です。

すると、日本の伝統的な「おもてなしの心」は、子どもを育てるうえでとても大切な学びになります。見て、聴いて、嗅いで、味わって、触るという五感を大切にしながら、シンプルにそっと伝える。子どもを育てるとはおそらく、そんなちょっとしたおもてなしの心も必要と考えています。

この姿勢は、未来への希望を託す子どもという宝を、「この世の中に誕生してくれてありがとう」という感謝の気持ちをもちながら関わることにつながるからです。大切なものだからこそ、子どもたちを乱暴には扱いません。また、甘やかすというのとも違います。子どもが誤ったことをしたら、そっと諭す。子どもが失敗しても、人生の生きやすさを注ぐようにそっと関わる。教育という中にも、やはりどこかそういった奥ゆかしさがあります。子どもへの甘やかしではない、子どもに対する正しい意味でのおもてなしの心は、やはり日本の文化を背景にするからこそ理解できるものではないかと思います。

ちょっと脱線しましたが、先ほどの知能検査の話に戻りましょう。知能検査は、検査をしている人が子どもと直接会話をして検査を実施しています。しかも、その子が安心できる状態で検査を行うようにします。つまり、安心できる環境で、検査をする人が子どもと直接つながりながら、その子どもを評価しているのです。つまり、やっぱりその子を知ろうとすると、安心感の中で直接つながらなければその子の事はわからないのです。そうやって、つながってわかった特徴を、文字という見える形で表しています。そうやって、子どもの特徴を見える形に変えることで、社会に示しやすくしているのです。

人と直接つながらなければ、その人の事はわからない。この認識は、とても大切と思っています。

みんなでつながる

昨日もお話ししましたが、診断名よりも、その子その子の特徴を知ることの方が大切とお話ししました。一つの診断名をとってみても、実は同じ診断名をもつそれぞれの人は微妙に特徴が異なります。それは当たり前です。だって人間なのですから。

もちろん注意欠如多動症というと、ちょっと落ち着きがないのかな、注意がそれやすいのかな、なんてことを想像します。でも落ち着きがないということの背景には、言われたことを覚えておく事が苦手という特徴があったり、見たものを捉えることが苦手だったりするわけです。

例えば、自閉スペクトラム症というと、空気が読みにくいのかな、視線が合わせにくいこともあるだろうな、一つの物事にこだわることもあるのだろう、と推測します。でもやっぱりその背景は色々で、耳で聞いて理解することが苦手なこともあれば、一時的な記憶が苦手なこともあります。

しかも生活の場面場面で、その様子が現れやすくなったり、静まりやすくなったりします。物が整理されている落ち着いた空間であれば、その子どもの心も穏やかになるかもしれません。ゴミが散乱していて、整理整頓できていない部屋だと、ちょとイライラしやすくなるかもしれません。

そんなことを考えると、子どもがうまく生活するためには、安心できる環境を調整しながら、その子どもにつながってもらう工夫を一つひとつ作り上げていく事が大切である事がわかります。

子どもへの理解に社会とのズレを感じたら、ぜひ親御さんに試してもらいたい事があります。それは、親御さんを通じて、社会にその子の特徴をシンプルにそっと届けてあげるという事です。幼稚園に伝える。学校に伝える。その時に大切なのは、やっぱりシンプルにそっと伝える、です。

幼稚園の先生も、学校の先生も、社会で働く人はどの人も、当たり前ですが、人間です。どんな人に伝えるのであっても、シンプルにそっと伝えるのがいいのです。ガミガミした親御さんを見ると、先生も抵抗感を感じます。ソワソワした親御さんを見ると、先生の側も落ち着かなくなってしまいます。人の心は鏡のよう、コレも以前の放送でお伝えしました。

親御さんの心の平静を保ちながら、学校にそっとシンプルに伝える。すると学校も心の平静を保ちながら、安心した空間を子どもたちに提供できる。そこから少しずつ、学校から子どもへつながる機会が増えれば、子どもの特徴が理解されやすくなります。

スタートは、親御さんの心からです。そっとシンプルにつながる感覚を、親御さんから学校に届けてください。子どもの教育や、その環境調整にあたって、日本の伝統的な「おもてなしの心」は、親御さんにとっても、社会にとっても、とてもいい学びになります。

そんな風に色々思うところがあります。だいじょうぶ。まあ、なんとかなりますよ。

記事のポイント!

  • 人はつながらないとわからない
  • 五感を通じてそっとシンプルに伝える
  • お互いがそっとシンプルにつながる

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