記事【電子機器と早起き早寝がタッグを組む】
こんにちは。絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心に関わる物事を気ままに発信しています。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。
今回は、電子機器と早起き早寝がタッグを組む、ということについて考えたいと思います。
このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。
【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる
電子機器に依存する子どもたち
あなたは、朝起きるのは得意ですか?それとも苦手ですか?朝起きるのが苦手な人も、こんな経験をしたことはありませんか?明日は楽しい遊園地へ行ける、なんて楽しみにしているものが翌日にあると、その日は早く起きれた。
そんな風に、人の「楽しみ!」という期待は、すごい力をもつものです。子どもたちの「楽しみ!」という期待が生じやすいものに、電子機器があります。ここ数日お話ししているスマホなども、そうですね。
スマホも、ゲームも、本来は人が操るものですよね。人が電源を入れて、あらゆるボタンをいじって楽しむものです。そういったものが普及し始めた頃は、スマホに人が操られたり、ゲームに人が操られるなんてことはない、と思っていたかもしれません。
でも今外来で、「スマホが子どもたちを操るんですよね」と言うと、「そうなんですよね」と頷く親御さんがほとんどです。
逆に「スマホやゲームが人を操るなんてこと、ありえないですよね?」なんて言ったら、「え、何言っているんですか?スマホやゲームは人を操るんですよ」なんて答えが返ってきそうです。
そうです、「電子機器が人を操る」ことは、もう当然のことと認識されているのです。
昔懐かしいアニメなんかを見ると、美味しい食べ物につられて、主人公が誘導されるシーンが出てくることがあります。スルメイカを吊るしながら、ザリガニを誘き寄せるような感じです。
今であれば、スマホやゲームを吊るしておけば、主人公が釣られる、そんなシーンが出てきてもおかしくありません。視聴者が納得してしまうほど、子どもは電子機器に操られてしまうからです。
子どもは電子機器に依存的になりやすいのです。電子機器がないと、イライラしてしまう、落ち着かなくなってしまう。そして電子機器を手にすると、ほっとする。それは、やはり依存症です。
朝使う電子機器
このように、スマホをいじる、ゲームをいじるといった行為は、なかなか変えにくいものです。子どもは心から電子機器を欲してしまう。そして、そのことを放置しておくと、たいてい次第に現れる行動があります。それが、夜更かしです。夜遅くまで起きている、ということです。どうしてでしょう?
スマホやゲームをする時には、光をあびます。その画面に夢中になっているあまりあまり気づきませんが、電子機器から出ている光って、強いものです。光をあびることによって、人の行動が変化します。眠くなりにくくなる、という変化が現れるのです。
あなたは夜、眠気を感じることがあると思います。その眠気を感じるためには、大切なことがあります。それは、光を浴びないことです。逆に朝起きると、眠気がひきます。それは、あなたが太陽の光を浴びるからです。
海外旅行に行った時のことを想像してみてください、普段であれば眠くなっている時間であっても、時差のせいで、太陽がさんさんと降り注いでいる中で過ごしていると、不思議と眠気が引くものです。それは、太陽の光が眠気を抑えてくれるからです。
そんな海外旅行をしなくても、今では自宅で同じ体験ができます。それが、電子機器を使った夜更かしです。これから眠るぞという時に、スマホをいじる。すると、スマホの光を感じて、あなたの眠気は抑えられます。
スマホをいじっていると、眠気が抑えられて、夜眠るのが遅くなる。すると、朝起きるのがしんどくなります。朝起きるのがしんどいから、学校にいくのも嫌になります。スマホやゲームに依存的になる子どもたちに起きている現象は、このようなことです。
子どもたちがスマホやゲームを使う生活をする時、意識していないと、自然に夜の眠気が妨げられ、朝起きられない、というサイクルへ変化します。「スマホを使うのをやめなさい」というのは簡単ですが、なかなかそのようには切り替えられないものです。
であればせめて、スマホの「夜使う」を「朝使う」に切り替えてみてください。
朝から変わる習慣
実は、朝の時間は最強の時間です。最強の時間とは、人の頭が最も働く時間ということです。朝に暗記をするのと、夜暗記するのとでは、明らかに朝の方が効率がいい。文章を書くにしても、朝書いた方が明らかにはかどります。そういうものです。
なるべく朝に活動できる体を作ることで、人生が変わります。それほど、朝は最強の時間なのです。ですから、もしも電子機器を使うのであれば、夜ではなく、朝にする。すると、電子機器につられて、朝起きられる体ができてきます。
面白いものですが、「朝起きなさい」と言っても起きない子どもでも、「朝だったらスマホ使っていいよ」と言うと、朝に起きられるようになります。「いかに禁止するか」というよりも、「いかに使うか」を考えてみるということです。
世の中には、不登校になっている子どもたちがたくさんいます。その子どもたちに多い傾向は、夜更かしの傾向です。そしてたいていそこに登場するのは、電子機器です。夜に電子機器に触れながら、夜更かしをする。そういった不登校の子どもたちがとても多いのです。
僕の外来にも、何人も不登校あるいは登校しぶりの子どもたちがいます。みんな真面目な子どもたちです。そんな子どもたちの中にも、電子機器で夜更かしをしてしまう子たちがいます。
そういった場合には、もちろん今回のようなお話をします。電子機器による夜更かしから、電子機器による朝起きへのチェンジです。するとやはり、電子機器を使えるから朝起きる、という具合に変わる子どもがいます。
そして面白いことに、電子機器による朝起きを続けた効果は、大抵半年後に現れます。少しずつ学校へ行くようになる。うまくできなかった生活が、できるようになる。そう変わるのです。
早起き早寝で変わる
しかも、これには続きがあります。朝に起きて行動するということが習慣化すると、日中の思考にも変化が生まれるものです。自分で電子機器との生活を工夫できるようになる子どももいます。
ちなみに、最後にちょっと脱線しますが、「早寝早起き」の順番ではありません。「早く寝るから、早く起きられる」という順番ではないということです。「早起き早寝」の順番です。起きることから、生活習慣が変えられるということです。
生活リズムが崩れる順番は確かに、夜に遅く眠るようになって、朝に早く起きられなくなる、というパターンです。
でも、それを修正するときのパターンは、朝に早く起きることにチャレンジして、夜に早く眠れるようになる、という順番なのです。生活パターンを修正する時には、朝から修正するとうまくいく、ということです。
これには理由があって、睡眠にはやはり疲れも必要だからです。夜更かしが続いている子どもが、ある時頑張って朝に早起きすると、どうなると思いますか?日中に疲れがドーンとたまって、夜になった時の眠気が普段の何倍も増します。だから、早く眠れるようになるのです。
そうやって、夜更かしを修正する時のコツが、「早起き早寝」の順番にあることを理解する。すると、やはり電子機器に操られた子どもたちの行動を修正するポイントは朝にある、ということも理解いただけると思います。
子どもたちが電子機器に操られるのではなく、子どもたちが電子機器を操れるようにする。電子機器に睡眠のサイクルを乱されるのではなく、あえて電子機器を使って睡眠のサイクルを朝方にもっていく。そうやって、電子機器を操る習慣をトライしてみてください。
きっと半年後の子どもたちは、変わっています。
そんな風に色々思うところがあります。だいじょうぶ。まあ、なんとかなりますよ。
記事のポイント!
- 電子機器に依存的な子どもが増えている
- 朝に使うという習慣へシフト
- 朝が変わると、良いリズムが生まれる
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