子どもの「生きる」を考える
子どもの「生きる」を考える
小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te
代表理事 
湯浅正太
みんなとおなじくできないよ

今の時代だからこそ大切なこと

2022/04/15
#今の時代だからこそ大切なこと #子育て #小児科医 #湯浅正太

記事【今の時代だからこそ大切なこと】

おはようございます。絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心に関わる物事を気ままに発信しています。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。

リスナーの方から、こんなコメントをいただきました。どうもありがとうございます。「いつもありがとうございます。学校が遠いため、中学に入学した長女にスマホを持たせました。学校以外の時間、宿題を終わらせてからはずっとスマホを触っています。学校が休みの日は、1日中触っています。」ということですね。

そうなんですよね、今この問題は、コメントを頂いたリスナーさんのご家庭だけではなく、全国の家庭が抱えている問題ですね。しかも家庭だけではなく、社会全体でスマホに関する問題が増えています。

今回は、昨日のSNSの話の続きで、スマホと子どもについて考えたいと思います。

このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。

【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる

子どもへ注意するということ

あなたは、子どもに「スマホ、そんなに使っちゃだめ」と言ったことはありますか?今世の中では、スマホに触れないと気がすまない子どもたちが増えています。あ、ごめんなさい、間違えました。子どもたちだけではありません。大人もです。スマホに触れないと気がすまない人が増えているのです。

僕が中学生の頃、当たり前ですが、「タバコは身体に悪いから、吸ったらダメだぞ!」と指導されていました。学校では、タバコ教育なるものがあって、タバコがいかに健康を害するかという内容の教育ビデオも観させられました。

「ほら、こんなにタバコは君たちの健康を悪くするんだ。だから、若いうちから、タバコを吸うことはやめなさい。」。ビデオを観た後にそんな風に言われて、廊下を通って職員室の近くに行くと、どんな光景があったと思いますか?そこには、禁煙室でタバコを吸っている先生に姿がありました。

どうでしょう。そんな光景を見て、子どもたちはどんな気持ちになるでしょうか?子どもたちにタバコを吸ってはダメ、と言っておいて、先生たちはタバコを吸うのか。なんだかおかしな世界だなあ。健康に悪いのは、大人でも同じはずだよなあ。そんなことを思うでしょう。そうやって呆れてしまったことを思い出します。

「スマホをそんなに使っちゃダメだぞ!」と指導されても、世の中でこれだけスマホを使っている人が多ければ、スマホを触っている大人が多ければ、子どもたちもスマホをいじりたくなります。

ところで、僕は一度もタバコを吸ったことがありません。それは、どうしてでしょうか。それは、タバコを吸うと先生に怒られるからでしょうか?いいえ、違います。それは、僕の周りの人に迷惑をかけたくなかったからです。

迷惑をかけたくない、というのは、タバコを吸ったら学校から呼び出される、そんなことを避けたい、というわけではありません。そうではなくて、僕がタバコを吸って、その煙が原因で弟が喘息の症状を起こしちゃったら申し訳ない。タバコを吸ってもいない弟の健康を台無しにしてはいけない。そう思ったからです。

自分の痛みより、相手の痛み

ここでちょっと脱線しますが、人の痛みというものを考えたいと思います。あなたは、怪我をしたことがあると思います。怪我をすると、当たり前ですが痛いですよね。あなたはこれまで何度も、自分の体の痛みを経験してきたと思います。

では、あなたにとって大切な人の身体や心が傷ついている様子を、あなたは目の当たりにしたことはありますか?その時、あなたはどんななことを感じましたか?おそらくあなたは、心にジーンと痛みを感じたのではないでしょうか。それを痛みと表現するかどうかは別として、何よりも耐え難い苦しみとして感じたのではないでしょうか。

例えば、あなたの子どもが、お遊戯会で思うようなパフォーマンスができなかったとします。そんな時、あなたは心が苦しくなる経験をしたかもしれません。子どもが学校に行きたくないと言った時、子どもの置かれた環境を想像することしかできなくて、もどかしい思いを抱いたかもしれません。

このように人は、自分が痛い経験をした時よりも、愛する他人の苦しむ様子を見た時の方が、辛く痛く感じるものです。

ちょっと脱線してしまいましたが、では、スマホはどうでしょう。スマホには、大切な人の苦しみを生じるような何かがあるでしょうか。他の人に迷惑をかけているから、スマホの使用をやめるような指導が使えるでしょうか?

なかなか、難しいと思います。もちろん、歩きスマホなど、他の人に迷惑をかける行為をやめるようには促せます。でも、スマホを使うこと自体で、他の人の迷惑をかけたり健康を害するということまでは、なかなか言えません。

世の中には、スマホの電波は健康に悪いと主張する人もいます。ただ、そのことを目で見える形で立証することが難しく、スマホ=健康を害するとまでは、強く主張できない状況です。何十年もタバコを吸った後の汚い肺を見せるというように、スマホによって身体が痛めつけられたような画像を示すことができないのです。

でも、そうやって害がわかりにくいから、大丈夫かというと、実際にはそうではありません。子どもたちの生活には、大きな変化が現れています。スマホを介したコミュニケーショントラブルが生じたり、スマホを利用した犯罪も発生しているのです。

つながりを教育すること

このように、スマホにはややこしいところがあるのです。スマホは、確かに生活を便利にしました。しかも、身体に害を及ぼすことを、目で見える形で示しにくいのです。こうしてみると、僕たちが向き合っているスマホという問題が、タバコよりも厄介であることがわかると思います。

では、そんなスマホを使うことによって、一体どこに問題が生じているのでしょうか?それは、人と人とのつながりです。

誰とでもつながれて便利、健康に害が及ぶことが目に見える形でわからない、そんなスマホは、つながる手段なのです。人類がつながりたい生き物だからこそ、手に入れた手段が、スマホなのです。

問題は、人とつながるということが、どういうことなのか、という教育がされていない状況で、つながる手段が普及してしまっていることです。だから、どんなつながり方も同じつながること、と認識されてしまいます。つながりやすければ、それでいい。そう捉えられてしまいます。つまり、子どもの頃からつながり方を議論できていないと、どれもあたかも同じつながりと勘違いしてしまうのです。

でも、違います。スマホでつながるのと、直接話をするのとでは、人として得るもの、与えるものに違いが出ます。直接会うということは、現実世界の情報をそのまま利用して、相手とコミュニケーションをとるということです。でも、スマホを利用したつながりでは、想像の世界も利用したコミュニケーションです。相手の表情はこんな感じかな。そんな想像とともに、相手の感情を探ります。

想像の世界は如何様にでも操作できます。無いものも、あるかのように工夫されてしまう。喜びの感情があっても、怒りの感情にすり替えられてしまうことだってあります。

つまり、つながりと想像の世界ということを、しっかり子どもに教育する必要があるということです。スマホの使用制限をかけるということは、使用がエスカレートしないために必要です。でも、その効果は限定的です。

問題の本質はそこには無いからです。つながりを考える、現実の世界と想像の世界の違いを理解する。そのことが教育されないままに、何かを積み上げても、スマホへの関心は増し乱用が進む一方です。

自然を感じることの意味

つながりを考えたり、現実の世界と想像の世界を考えるために、ヒントになる行動があります。それが、自然に触れるということです。

山に登り、山頂から街を見下ろす。そうやって、日々の暮らしも、いかにちっぽけなものかを実感できます。想像の世界とは違う、ものの見方を経験できる。川や海に生息する生き物を感じる。必死に生きようとする命を感じて、痛みも感じて、命の尊さを学びます。

そういった体験を通して、人と人とのつながりを経験できます。手と手を取り合って、協力すること。他人の苦労を目にしながら、助けようとすること。そして、助けられて、ありがたいという気持ちを抱くこと。

そうやって、現実世界で生々しい記憶を作ることこそが、スマホを使う時代には欠かせないと考えます。もちろんこれは、特別なことではありません。これまでの世代で、当たり前に行われていたことこそが、今は当たり前ではなくなってきている。

おそらくこのまま、自然に触れるということを意識しなければ、人類は想像の世界に没頭していきます。この状態を僕は、危機的状況と考えています。それは、子どもたちの心が健康ではなくなっていく状況を小児科医として目の当たりにしているからです。便利ということばかりが強調されて、子どもたちが抱えている危機が見えない時代なのです。

現実の世界を、想像の世界で表現し、その想像の世界で暮らそうという試みもされています。でも、人はやはり、現実の世界に触れることなしには、健康的な心を保って生活できない生き物なのです。人という生き物が健康的な心を保つことは、現実世界のつながりなしには、達成できないのです。

そうやって、スマホを使う世代の教育を考えていただければと思います。

そんな風に色々思うところがあります。だいじょうぶ。まあ、なんとかなりますよ。

記事のポイント!

  • 便利でわかりにくい危機がある
  • 自然に触れることを意識する
  • 子どもを現実世界に触れさせる

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