子どもの「生きる」を考える
子どもの「生きる」を考える
小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te
代表理事 
湯浅正太
みんなとおなじくできないよ

人とのつながりが物事の見方を変える

2022/04/10
#人とのつながりが物事の見方を変える #子育て #小児科医 #湯浅正太

記事【人とのつながりが物事の見方を変える】

おはようございます。絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心に関わる物事を気ままに発信しています。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。

今回は、人とのつながりが物事の見方を変える、ということについて触れたいと思います。

このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。

【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる

帰り道での出来事

あなたは、子どもの頃の学校への通学道のことを覚えていますか?人によって通学の方法が違っているかもしれません。徒歩で通っていた人もいれば、バスや電車に乗って通っていた人もいるでしょう。

僕は地元の小学校・中学校・高校に通っていました。そのため、小学校と中学校には徒歩で、高校には自転車で通っていました。

僕が住んでいた地域には、周りに雑木林や用水路がありました。春〜夏にかけて、朝登校すると、プ〜ンと樹々のいい香りが漂っているんですね。それはとてもいい香りでした。そんな香りに魅了されて、ぼーっとしながら学校へ通っていたような気がします。

学校からの帰り道はというと、例えば僕は中学校ではサッカー部に入っていたんですね。そうやって部活に参加すると、帰る時間帯は夕方〜夜でした。サッカーで汗を流して、お腹がペコペコになります。部活が終わると、そんな風にお腹をすかせながら、数名の友達と一緒に帰っていました。

ある時、友達の一人が「これ食べない?」と言って、何かをみんなに差し出してきたんです。何かと思ったら、その日の給食で出ていたふりかけでした。よくある、四角い小さなパッケージに入ったふりかけでした。

普段であれば、別に何とも思わないふりかけです。でも、みんな部活で走り回って、お腹はペコペコでしたから、そのふりかけが豪華なごちそうに見えたのです。みんな、「うわ〜」って嬉しそうに声をあげるわけです。でもただの、ふりかけですよ(笑)。

お友達が、四角いちっちゃなふりかけの袋を開けて、ちょっとずつふりかけをみんなの手のひらに分けてくれます。そして、みんな、そのわずかなふりかけをペロッと舐めるわけです。

するとみんなが口々に言うんですね、「うわ〜、うまい!」って。何度も言いますが、ただの、ふりかけですよ(笑)。そんなふりかけでも、「よくぞこんなに美味しいご馳走を給食から失敬してきてくれた」とばかりに、そのふりかけをゲットしてきてくれた友達にみんなで感謝するのですね。

ただのふりかけです。でも、部活が終わった帰り道に友人たちと味わったそのふりかけは、やっぱり豪華なご馳走なのです。いくらお金をはたいたいても味わえない、経験できない体験です。ふりかけが豪華なご馳走に変わるのは、やはり、友人とのつながりがそこにあるからです。

お金では買えないものの価値

あなたにも、そういった経験がありますか?いつまで経っても忘れない、貴重な経験。その思い出を振り返ると、心があったかくなる、そんな経験です。お金では買えない価値がある。どこかのCMのフレーズでもあったかもしれませんが、子どもたちがそのことに気づけるかどうかで、彼ら/彼女らの人生が大きく変わります。

これからの時代を生きる子どもたちって、これからどんな日本を経験するでしょうか。日本の経済力ってどうなるでしょうか。人口減少により、生産性が下がることが予測されても、劇的に向上することはあまり考えられません。

人口が減少したって、これからの時代はITがあるから大丈夫、と言う人もいるかもしれません。人口が減っても、ITの力を使って人手不足を穴埋めできると言う人もいるかもしれません。でも、ITをしっかり導入していく他国の様子を見る限り、日本が他の国よりも抜きん出て経済的に発展するということは、やはり考え難いです。

つまり、今の子どもたちが将来大人になった時に、世界の国々に比べて経済的な豊かさを感じられるとはあまり思えないのです。むしろその逆が考えられます。他の国の豊かさを感じるのではないか。そう思うのです。

その影響は、もうすでに子どもたちに現れています。あまりに現実的に将来を見定めようとするために、生きづらさを抱える子どもたちがいます。現実の世界よりも、ゲームの世界がいいや、空想の世界の方が気持ちが楽。そうやって、現実から離れる、学校から離れる。そんな子どもたちもいます。

そんな時代に生きる子どもたちに、身につけさせてあげるべきものは何でしょうか?気づかせてあげるべきことは、何でしょうか?

それはやはり、お金では買えないものの価値です。

人とのつながりで変わること

自分の心次第で、目の前のものの捉え方が変わる。心を通わせられる友達がいるだけで、豪華な旅行よりも価値のある空間を経験できる。つまり、人とのつながりが物事の見方を変える、ということです。そのことを子どもたちに経験させてあげること。それが、欠かせません。

IQが高いと幸せでしょうか?いいえ、そんなことはありません。色々な物事を考えられる能力があると、先のことを予想しやすくなるかもしません。でもそれって、いいとも限らないのです。だって、色々先読みしすぎて、自分の人生に途方にくれている人を見てきましたから。

そういった心配を抑えるために、事前準備を徹底的にしないと心に余裕が持てない人もたくさんいます。せっかく心が豊かになる時間があるのに、先の心配への対処ばかりに追われて、教科書や参考書ばかりに目を奪われてしまう人がたくさんいます。

本当の社会って、もっともっと人とつながるからこそ、生々しいんですよ。他人のことなんて分かりませんから、そんな他人と過ごすことによって事前には予想もできなかった出来事がいっぱい起きるんですよ。そして知らないことがあっても、人とつながりながら経験するからこそ楽しい世界もあるんです。

人とつながれることが、あらゆる価値を生み出していく。そのことを子どもたちに教えてあげることが、子どもたちにこれからの時代を託す大人の責任と思います。

全然話は変わりますが、次のチャプターに夜の田んぼ道の音が収録されています。僕は、この田んぼ道の大合唱が聴えてくるようになると、「あたたかい季節がやってきたんだな」と感じます。そうやって、季節の移り変わりを感じるのです。

そんな様々な四季を感じられる日本って、やっぱりいいなと思うんですね。子どもたちがそのことに気づけるかどうか。そうやって気づける教育を提供してあげること。それが大切と思います。

そんな風に色々思うところがあります。だいじょうぶ。まあ、なんとかなりますよ。

記事のポイント!

  • 人とつながれるから、世界が豊かになる
  • 偏った価値に惑わされない子どもの心を育てたい
  • 人とつながれると、物事の見方が変わる

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