子どもの「生きる」を考える
子どもの「生きる」を考える
小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te
代表理事 
湯浅正太
みんなとおなじくできないよ

心をフラットに保つ小児科医のコツ

2022/04/08
#心をフラットに保つ小児科医のコツ #子育て #小児科医 #湯浅正太

記事【心をフラットに保つ小児科医のコツ】

絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心に関わる物事を気ままに発信しています。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。

今回は、心をフラットに保つコツについてお話ししたいと思います。

このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。

【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる

心をフラットにするために

コメントで、「先生は心をフラットに保つためにどのような工夫をされていますか?」とご質問をいただいたので、お答えしたいと思います。はじめにその答えをおつ伝えしておくと、わざと神経を切り替えてつながりを感じられる心に誘導する、ということです。

僕はこれまでの放送で、子どもの愛着行動について触れたことがあります。愛着行動とは、子どもに不安が生じたら信頼できる人とつがろうとする行動です。それは、人が自分の心を守るためにもっている本能です。

この本能は、人の一生を通じて消えません。人は誰かとつながりながら、色々な物事を乗り越えていく作業をおこないます。

確かに、その対象は少しずつ変わるかもしれません。幼い頃は親とのつながりを求めます。そして学校で生活するようになると友人とつながり、社会に出ると同僚や上司とつながり、そして伴侶とのつながりへと発展するかもしれません。

いずれにせよ、自分に不安やストレスが生じた時には、安心できる誰かとつながることで、あなたは自分の心を落ち着かせようとします。それは、人の本能です。

つながることを考える

でも、考えてみてください。安心できる人が常に自分の横にいるわけではありません。学校に行けば、そこには親はいない。会社に行けば、そこには伴侶はいないのです。

携帯電話があればつながれるよ、と言う人もいるかもしれません。でも不安があったらいつも携帯電話でつながる、そんなことをしていたのでは、それはその相手に依存しすぎかもしれません。例えば、女の子とデートしていても、不安が生まれたらお母さんに電話する。そんな彼氏って、困りものです。

そう考えると、適度なつながりが大切なことがわかります。つまり、目の前につながる対象がいなくても、携帯電話で直接つながらなくても、適度なつながりを感じることができると、自分の心がある程度コントロールしやすくなるのです。生きやすさが生まれる、と言っても過言ではありません。

では、どうやって適度なつながりを感じるのでしょうか?それには、ちょっとしたコツがあります。つながる相手が横にいなくても、心の中でつながれるコツがあるのです。これをスキルというと少し味気ないものに感じられてしまいますが、心の中でつながるためには、実はポイントがあります。

例えば、あなたは疲れてイライラしていたとします。そんなあなたは思い出します。人はつながりを感じることで、自分の気持ちを克服するという性質があった。だから、心の中に誰かを思い浮かべてつながろう。でもそんな風に思って念じても、最初はなかなかそのことを達成できません。

「最初は」というのは、実はその作業に慣れるとつながれるようになります。でも、それには時間がかかります。最初からは、うまくいきません。だからこそ、知っておいていただきたいコツがあります。

それは、交感神経と副交感神経の作用を利用する、ということです。

神経の移り変わりを利用する

人には、交感神経と副交感神経という神経があります。この神経は人の感情に関わっています。

例えば、人がイライラしたり、運動して活発に動いている時には、交感神経が活発に活動しています。そのように、交感神経は攻撃態勢の時に働く神経といってもいいかもしれません。

一方で、副交感神経は休む時に働く神経です。お風呂につかってゆったりとリラックスしている時、あるいは好きな音楽を聴いている時、副交感神経が活発に活動しています。

面白いことに、攻撃態勢から休みの態勢に変わる時、つまり交感神経が活発な状態から副交感神経が活発な状態に変わる時、人とつながりやすい心の状態が生まれます。ふと懐かしい友人のことを思い出したり、親に遊んでもらった時のあたたかい記憶を思い出しやすくなるのです。

あなたも経験がないですか?何かスポーツをした後、音楽を聴いたり、お風呂に入ってリラックスし始めた時に、昔の懐かしい記憶を思い出すってこと。おそらく体験していると思います。

交感神経から副交感神経に変わるタイミングには、そうやって過去の懐かしい癒される記憶とつながるチャンスがあるのです。だからこそ、作家や音楽家、画家など、芸術の分野で活躍している人もその時間帯を利用しているものです。交感神経と副交感神経の移り変わりの時間帯を利用して、過去とつながりながら、その記憶をヒントに作品を作ったりしているものです。

僕の思い出

僕には、僕ならではの、副交感神経を活発にして自分を落ちつかせる行動があります。それは、紅茶やコーヒーの香りを楽しむということです。実は僕は、紅茶やコーヒーの香りがとっても大好きです。だから、自分が緊張していたり、不安があると、あえて紅茶やコーヒーの香りを楽しむことをしています。

紅茶やコーヒーの香りをかぐと、副交感神経優位の心が誘導できます。すると、ふっと過去のあたたかい思い出とつながって、心がフラットになるんです。

僕は学生の頃に医学部を休学して、海外留学にいったのですね。その時には海外の複数の研修病院で医学生として研修をさせていただきました。知らない世界を経験できるので、ワクワクしていましたが、でもさすがにちょっと緊張もするわけです。

そんな研修病院では、朝によく、グランドラウンドカンファレンスというのが行われていました。それは、研修医や医学生向けの勉強会のことです。そういった勉強会が、どの病院でも朝に用意されていました。

そして、素晴らしいことに無料の朝食付きなのです。僕は学生でしたから、もちろんお金はありません。お金はないけれど、朝にその勉強会に参加すれば朝ごはんがゲットできたわけです。さらに素晴らしいことに、紅茶やコーヒーが用意されていて、その香りがその空間に漂うわけです。

異国の地で学びながら緊張はあるけれど、紅茶やコーヒーの香りを感じながら癒される。そういった経験を毎朝していました。それはまさに、緊張のために交感神経が活動しながらも、紅茶やコーヒーの香りのおかげで落ち着きながら副交感神経が働くようになる環境だったのです。

今全国の病院を訪れてみると、その病院の一階には、カフェテリアが設置されているところが多いと思います。それが香りを意図的に利用した配置なのかはわかりませんが、カフェテリアから漂う紅茶やコーヒーの香りをかげることで、病院を受診した患者さんの気持ちもリラックスするはずなのです。

ですから、いただいたご質問の「先生は心をフラットに保つためにどのような工夫をされていますか?」については、つながりをつくる作業をする、そのために交感神経から副交感神経に移行するようなことをわざとしている、ということです。

好きな音楽を聴いたり、紅茶やコーヒーの香りを楽しんだり。そうやって自分がリラックスできる状態をわざと用意する。すると、交感神経から副交感神経優位の状態へ移ります。その時が、つながりのチャンスです。自分のあたたかい思い出を振り返るチャンスが巡ってきて、記憶の中のあたたかい思い出の人とつながれるのです。するとイライラした感情は、いつの間にか軽減します。

そうやってあえて自分の心を操作してみてください。きっと日頃のイライラとも、うまく付き合っていけます。だいじょうぶ。まあ、なんとかなりますよ。

記事のポイント!

  • 心をフラットにするためにつながる
  • どこでもつながれるように神経を変化させる
  • 神経の変化を感じる

これからの時代を生きる子どもたちの心を育てたい。 当法人の活動に賛同くださり、ご支援いただける場合は、右の「寄付ボタン」からお願いいたします。     ページが表示されるまで、少々時間がかかる場合がございます。

寄付ボタン

友だち追加

お問い合わせについて

         

施設/事業所サポート

         

子どもの保育/教育/支援に関わる施設/事業所様を応援する当法人のサポート情報は、「施設/事業所サポート」ページからご確認ください。

施設/事業所サポート

お問合せ

         

「子育てセミナー」「施設/事業所サポートのご相談」「取材依頼」「講演依頼」「そのほか」についてのお問い合わせは、「お問い合わせフォーム」をご利用ください。

お問い合わせフォーム
   

気軽にYukuri-teとつながってみてください!

これからの時代を生きる子どもたちのことを思い、この法人を設立しました。