子どもの「生きる」を考える
子どもの「生きる」を考える
小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te
代表理事 
湯浅正太
みんなとおなじくできないよ

子どもたちの感情をどういった心で返すか

2022/04/07
#子どもたちの感情をどういった心で返すか #子育て #小児科医 #湯浅正太

記事【子どもたちの感情をどういった心で返すか】

絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心に関わる物事を気ままに発信しています。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。

今回は、子どもたちの感情をどういった心で返すか、ということについて考えてみたいと思います。

このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。

【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる

子どもと親の心

ずっと前の放送で、心は鏡のようなものというお話をしました。子どもが喜ぶと、それを見ているあなたも喜ぶ。子どもが怒っていると、それを見たあなたも怒る。逆も同じです。あなたがイライラしていると、それを見た子どももイライラします。そのように、心には鏡のような性質があります。それを僕は、心の鏡の理論と言っています。

そして子どもは、不安が生まれると、親と接することでその不安を解消しようとすることも、以前にお伝えしました。子どもに不安やストレスが生じたら、親に触れようとする。あるいは、親に話しかけてきます。そうやって親とつながることで、子どもは不安を解消していくのです。それを愛着行動と言ったりします。

この心の鏡の理論と愛着行動を組み合わせて、大切なことをお話ししたいと思います。子どもが不安を感じた時、子どもは親に近づき、その不安を解消しようとします。ただ、考えてみてください。心の鏡の理論を理解しているあなたなら、わかると思います。不安を抱えた子どもが親に近寄っていった時、親はどんな態度をとる可能性があるでしょうか?

そうです。不安な心をもった子どもが親に近寄ると、子どもの不安に同調して、親も不安な心の状態になり得るのです。

そんな風に、不安を抱えた子どもが、その不安を解消するために親に近寄っても、その子どもの不安が親にうつってしまうことがあるのです。

では、そうやって不安がうつってしまった親が子どもに接すると、どうなるでしょう?そうです。子どもの不安は解消されないばかりか、不安が高まってしまうのです。

こんなことが起きている

実際に現場でおこっていることは、こんなことです。例えば、子どもが学校生活を通じて不安を抱くようになっていた。学校ではその不安を我慢していたけれど、自宅に帰って学校での緊張から解放されると、子どもは素の心をさらけ出します。

イライラした不安な心をぶちまけるかもしれません。そんな子ども自身は、自分の心がどうしてイライラしているのかを理解できていないことも少なくありません。

本来であれば、その子どもの行動は学校生活での不安を表していると理解して、子どものイライラに同調せずに、親がそっと落ち着いた言葉を交わして対応するだけで、子どもの心は穏やかになることもあります。

でも、子どもがイライラしている様子に、親が影響されてイライラしてしまうことがあります。すると、イライラした子どもに、イライラの感情をうつされてしまった親が対応することになり、本来子どもが無意識のうちに求めている「不安を解消してもらいたい」という希望は叶えられなくなってしまうのです。

子どもが自宅にイライラした状態で帰ってきました。ランドセルを放り投げたりして、イライラした感情を体の表現として表すかもしれません。その様子を見た親も、イライラしてしまう。そして親がイライラしながら子どもに「宿題やりなさい!」と怒ってしまう。すると、当たり前ですが、子どもはもっとイライラします。

実は、これと同じことが医療現場でも起こり得ます。通常、不安な心を抱えた状態でやってくる子どもたちに向き合う時には、ある程度その気持ちに医療者が同調しないように、医療者の側は心の平静を保とうとします。

でも、そういった医療現場での経験が浅い医師が、不安な気持ちを抱えた子どもたちに接するとどうなるでしょう。子どもたちの不安な心が医療者へもうつってしまいます。医療者の側としても、無意識のうちに自分に不安がうつり、いつの間にか焦ってしまったりする。しかも、そのことに医療者自身も気づけない。すると、子どもの心のコントロールを困難にしてしまうことがあるのです。

そして、それにはさらに続きがあります。その不安がうつった医療者が医療現場だけでなく、私生活にまでその感情を持ち帰ってしまう場合があるのです。すると、その医療者は、病院でも自宅でも心の平静を保てずに、心に不調を抱えてしまいかねません。

どうでしょうか。子どもの心に触れることが、どれほど繊細な作業かがわかっていただけたでしょうか。子どもの心に翻弄されることなく、大人が心を制御する。子どもの心の動きと、自分の心の動きを見極める。そういったことがある程度必要なのです。

社会をつくる養育環境

そういったことを意識できるようになると、気づくようになります。大人の一瞬の対応で、次の瞬間の子どもの行動が変わっていく。そういったことに気づくようになるのです。

そのことに気づくと、子どもの行動って、やっぱり大人の行動から始まっているんだなと感じると思います。そして、その積み重ねの結果がその子の人生となって現れます。

小児科医として社会を生きていると、色々な人に出会います。様々な表情や態度をもった大人たちに出会います。人生を思う存分楽しんでいる人も、生きづらさを抱えた人もいます。自分自身のことを大好きな人もいれば、自分自身のことを否定しながら生きている人もいます。

そういった一人ひとりに出会いながら感じるのは、その人が育ってきた養育環境です。人の心を包み込むようなあたたかい養育環境の中で、この人は育ってきたんだろうな。少し荒んだ養育環境の中で、この人は育ってきたんだろうな。出会う人に対して、そういったことを感じるのです。

そして、その一人ひとりがいるからこそ、社会があります。その社会の雰囲気は、社会の構成員である一人ひとりを育てた数十年前の養育環境が創り出している。そう言っても過言ではありません。

そんな風に色々思うところがあります。だいじょうぶ。まあ、なんとかなりますよ。

記事のポイント!

  • 心の鏡の理論と愛着行動を理解したい
  • 自分の心を感じながら子どもに接する
  • 養育環境が子どもをつくり、社会をつくる

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