子どもの「生きる」を考える
子どもの「生きる」を考える
小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te
代表理事 
湯浅正太
みんなとおなじくできないよ

境界知能について小児科医が思うこと

2022/04/06
#境界知能について小児科医が思うこと #子育て #小児科医 #湯浅正太

記事【境界知能について小児科医が思うこと】

おはようございます。絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心に関わる物事を気ままに発信しています。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。

今回は、ボーダーラインということについて考えたいと思います。

このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。

【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる

境界知能

あなたは、ボーダーラインという言葉を聞いたことはありますか?境界線、境界例という意味です。白か黒かはっきりせずに、グレーな状態、混ざった状態を指します。

小児科医としてこのボーダーラインを考える時、その見えにくいグレーな部分をしっかり認識することを意識しています。そして、そのグレーとされる部分にも、色々な可能性がつまっている、ということに触れたいと思います。

人の知的能力を示す時に、平均的なのか、知的能力が低いのかという具合に分けることがあります。そして、生活に支障をきたすほど知的能力が低下している時、そのことを知的障害と表現します。

この知的障害の重症度は、以前は「知能指数」によって定義されていました。でも、知能指数だけだと、生活上の困難を正確に表せませんでした。

例えばこの知的能力には、平均的な部分と障害とされる部分の境目がありました。その境目の知的能力を境界知能と言ったりします。その境界知能のレベルの子どもたちは、知能指数は障害のレベルとまでは言えないけれど、実際の生活では支障をきたしていたりするわけです。

境界知能の子どもたちが、先生から何か指示を受けたとします。一見支持した内容をわかってくれているように見えるけれど、先生の指示を理解するスピードがゆっくりのため、実際には理解できていなかったりします。

例えば、お友達と遊ぶ時には約束をすることもあります。でも、約束をするのだけど、その約束すべてを理解することができなくて、約束を守れなかったりもするわけです。すると、約束を交わしたお友達は怒ってしまう。お友達を怒らせたいわけではないのに、うまく遊べないことがあるわけです。

わかりにくさ

これらの事例のように、境界知能の知的レベルの場合、子どもは生活に困難を抱えることが少なくありません。そして、そういった生きづらさを助長させる要因のひとつが、わかりにくさです。

境界知能の子どもたちは、一見何の不自由もなく生活しています。普通に会話もするし、普通に行動しているように見えてしまいます。でも、実際には困っていることが少なくないのです。

子どもたちは、自分からSOSを出すことは苦手です。分からないことを、「わかりません」と言える勇気をもてるといいのですが、そんなにうまくはいきません。

先生から指示をされても、お友達と約束をしても、「何だかよく分からないぞ」と思っていながら、聞き直す勇気もなく、そのままにしてしまうこともあるのです。

そして周りからは、その子の生きづらさがわかりにくく、かつ、周りとの会話で食い違いを生じてしまうので、「変な子」と勘違いされてしまうこともあります。

知能指数では分からないもの

このように、知能指数だけでは子どもの生活上の困難を正確に表しにくいのです。このため、知的能力を判断するうえで、知能指数だけに頼るのではなく、実際の生活の様子も考慮する、ということになりました。

現在では、知能指数の数字のみによる知的障害の判断は見直されるようになりました。知能指数以外に、人とのコミュニケーションや、身の回りの管理など、様々な生活場面の状況を考慮するようにされています。

でも・・です。でも実際にはまだまだ、知能指数に重きを置きながら、知的障害を判断するという習慣が残っています。そのため、知能指数をもとに子どもたちの能力を理解してしまうために、その生きづらさを理解してもらえない子どもたちがいるのです。

そして、もう一つ大切な点があります。それは、知能指数はあくまでひとつの物差しに過ぎないということです。知能指数でその子どものすべてがわかるわけではありません。人への思いやり、優しさなど、人とつながるうえで大切なものは、知能指数では測れないのです。

人が生きるうえで、人と人がうまくつながる能力はとても大切です。その能力が考慮されない知能指数は、子どもの一部分を反映しているに過ぎないのです。

そんな風に色々思うところがあります。だいじょうぶ。まあ、なんとかなりますよ。

記事のポイント!

  • 知的障害の程度の判断は、知能指数だけでは不十分
  • わかりにくい生きづらさがある
  • 人を思いやれる力は、素晴らしい能力

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