記事【小児科医が思う子どもへの愛の意味】
絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心に関わる物事を気ままに発信しています。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。
voicyで取り上げられているテーマに、「愛を語ろう」というテーマがあったんですね。ですので今回は、子どもへの「愛」の意味についてお話ししたいと思います。
このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。
【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる
薬よりも、愛
子どもへの「愛」について話をすると、その話は人にとっての「愛」という話に広がっていきます。「愛」が、人の人生にどんな影響を及ぼすのかを考えていきたいと思います。
僕は小児科医をする傍ら、一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)という法人を設立しました。その法人の目的は、親子の「愛」、人と人の「愛」をつくることです。小児科医である僕が、どうしてそんな法人を立ち上げたのでしょう?
小児科医として働く中で、たくさんの子どもたちに関わります。様々な病気や障害を抱えながら、心が不安定になる子どもたちがいます。病気や障害がなくったって、心が不安定になってしまう子どもたちもいるのです。
そんな子どもたちの心が立ち直るのに、最も欠かせないものは何でしょう?子どもたちが将来に希望を抱いて生きていこうとするのに、大切なものは何でしょう?。それが、「愛」です。親からの「愛」、お友達からの「愛」、先生からの「愛」。それが子どもたちにとって欠かせないのです。
人が生きる中で、最も大切なものは「愛」である。僕は小児科医として働く中で、強くそう思うようになりました。薬はいっときの心の症状を良くするかもしれません。でも、「愛」は違います。「愛」は、その人の一生を支えるのです。
つながり、絆
「愛」というと、なんだかふんわりとして捉えにくいかもしれません。「愛」を別の言葉で言い換えるとすると、何でしょうか。それは、「つながり」や「絆」という言葉かもしれません。
子どもたちは不安を感じると、親とのつながりを求めます。不安が生じたら、親のもとへ駆け寄りしがみついたり、親に触れたりします。そうやって、親とのつながりを感じることで、子どもたちは不安を乗り越えていくのです。
親はいつもその場にいるとは限りません。例えば、学校です。学校という現場には親はいません。でも、子どもたちは心の中で親を感じながら、不安を乗り越えていきます。自分のことを抱きしめてくれた親を思い出しながら、学校での不安を乗り越えることもあるでしょう。
あるいは、自分が手に取っているものに、親を感じることもあります。親が作ってくれたお弁当に、親を感じることもあるでしょう。親が作ってくれた手さげ袋にも、親を感じるかもしれません。子どもたちはそうやって親を感じながら、不安を乗り越えて成長していくのです。
子どもたちが成長し中学生頃になると、アイデンティティを育てる時期を迎えます。自分とは何者なのか、自分とはどんな存在なのか。そういったアンデンティティを確認するようになるのです。
子どもたちは、自分たちだけでアイデンティティを確立できるでしょうか。いいえ、できません。子どもたちは、自分とは違う他人を感じながら、自分の特徴に気づいていきます。自分にはないものを相手に感じる。相手にはなくて、自分にあるものを感じる。
そうやって、他人を感じるからこそ、自分がどんな存在なのかに気づくということです。そうやって、子どもたちはアイデンティティを確立していくことができるのです。つまり、他人とつながるからこそ、自分を知ることができるのです。
様々なつながり
そして子どもたちは、大人になります。大人になって子どもを授かるかもしれません。それまで自分が受けてきたつながりを参考にしながら、自分の子どもたちに接するでしょう。だからこそ、子どもは親に似るのです。
子どもたちが抱える問題は、親が抱える問題である。そのことに気づくかもしれません。親が不安な表情で子どもたちにつながると、自然と子どもに不安が増えていきます。子どもたちに不安が生まれ、生活に適応できなるなることで、ようやく親自身の問題に気づくようになるかもしれません。
親が子どもにつながる機会が乏しかったから、子どもの心が不調になった。あるいは、親子のつながりを通して、親の不安な心が、子どもの心に伝わっていた。そう気づくようになるものです。そうやって、親と子どものつながりを通して、親自身が自分のことを理解する。子育てをしながら、親が育つとは、そういうことです。
そして、人は老いていきます。人が人生の終わりを考えるようになった時、時代を超えたつながりを振り返るようになります。祖先は、どんな思いで自分たちの命を子孫に託したのか。どんな未来を過ごしてもらいたいと思ったのか。そういった祖先の思いを想像し、祖先とのつながりを感じます。
そして、未来とのつながりも考えます。自分が子どもを授かり、その子どもが孫を授かります。自分の遺伝子が、脈々と受け継がれることを感じながら、自分の命が終わったとしても、実は未来に続いていくことを理解します。そうやって、命の力強さを感じるのです。
どうでしょう。子どもたちにとって、「つながり」すなわち「愛」はとても大きな意味があります。人が求めるものは、最終的にこの「愛」です。「愛」を求めながら、人はつながっていくのです。
人が求めるものが「愛」であることが理解できれば、子どもたちに「愛」を与えられないことが、どれだけ罪深いことかを理解できます。子どもたちに「愛」がない罰を与える、子どもたちに「愛」を与えるはずの親を奪う。そういった、子どもに「愛」を注げない環境をつくることが、どれだけ子どもたちの人生を大きく狂わすのかを理解します。
小児科医として子どもへの「愛」の重要性を理解するからこそ思います。その貴重な「愛」を理解できる教育、人と人がつながることの意義を見出せる教育を、ぜひ子どもたちに提供してもらいたい。
そんな風に色々思うところがあります。だいじょうぶ。まあ、なんとかなりますよ。
記事のポイント!
- 愛は子どもの一生を支える
- 他人とつながることで自分を知る
- 過去や未来とつながりながら、人生を振り返る
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