子どもの「生きる」を考える
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小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te
代表理事 
湯浅正太
みんなとおなじくできないよ

小児科医が思う社会に向けたラベリング

2022/04/03
#小児科医が思う社会に向けたラベリング #チック #子育て #小児科医 #湯浅正太

記事【小児科医が思う社会に向けたラベリング】

絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心に関わる物事を気ままに発信しています。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。

今日は午前中に、障害や病気のある子どもの兄弟姉妹をテーマにした勉強会でお話をさせていただいていました。その関係で午後に放送しています。

その会でもお話しした、小児科医が思う社会に向けたラベリングについて、今回はお話ししたいと思います。

このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。

【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる

ラベリングということについて

世の中には、その人自身が抱える課題を周りの社会がわかりやすくなるように、あるカテゴリーに当てはめて表現するということがあります。例えば、僕だったら子どもを診療する「小児科医」というカテゴリー分類されるかもしれません。つまり、湯浅正太には「小児科医」というラベルが貼られ、「この人は小児科医ですよ」と社会に認識されているということです。

その他にも、例えば世の中では、病気や障害のある子どものことを「きょうだい」と表現することがあります。すると、「きょうだい」というラベルを使って紹介されることもあるわけです。湯浅は「きょうだい」という立場で育った、というような感じです。

そうやって、ある人物やある物事の特徴がわかるように、ある名前で表現することをラベリングと言います。

小児科医として働いていると、このラベリングに対する様々な意見を聞くことがあります。例えば、その子の個性があるのに、「きょうだい」と言ってひとくくりにしないでもらいたい。そんな意見を耳にすることがあります。一方で、「きょうだい」と認識できることで、関わり方を工夫できる。そんな声も聞くことがあります。

僕は、このラベリングについては、こんな風に思っています。ラベリングは、例えば僕の周りに置かれている旗、あるいは看板のようなものという捉え方です。

湯浅正太という周りには、「きょうだい」「小児科医」という色々な旗がある。社会という外側から見ると、そういった旗が見えるけれど、湯浅正太本人は旗に隠れて見えない。

湯浅正太本人を知ろうとすると、「きょうだい」「小児科医」といった旗をどかして、湯浅正太本人につながらなければわからない。湯浅正太を知るには、話を聞いたり、一緒に行動して、どんな人なのかを理解する必要がある。

そんな風に思っています。

ラベルを頼りにしてしまう社会

僕の目の前に、病気や障害のある子どもがやってきてくれたとします。その「病気」や「障害」からは、その子自身は理解できません。あるいは例えば、僕の目の前に、きょうだい、つまり病気や障害のある子どもの兄弟姉妹がやってきてくれたとします。やはり「きょうだい」というカテゴリーだけでは、その子どものことはわからないですね。

当たり前ですが、とても大切なことと思っています。ラベリングは、その人の本質とは別のものである、あくまで社会に向けて用意されたものという捉え方を、当事者も含めたあらゆる人がもつ、ということが大切と考えています。

そういったことを思いながらも、感じるのは人とつながれない社会です。ラベルあるいは旗の向こうにあるその人自身につながらないと、その人のことは理解できない。でも、その「人とつながる」ということが苦手な社会があると感じるのです。

そんな社会では、どこか、ラベルを頼りに交流しようとしてしまう風潮があるのだろうと思っています。その源流はどこにあるのかと探っていくと、教育に辿り着くのだろうと思うのです。

子どもへの教育

テストの点数などを参考に、その人を評価する。そういった教育現場で育った子どもたちは、やはり何かのラベルでその人を評価することに慣れてしまう。

本当は、その人につながって、話を聞いたりすることで、その人の本質が理解できるはずなのに、つながることなしにその人を分かった気になってしまう。そんな人が教育によってつくり出されていると感じています。

人とつながってはじめて、その人を理解できるのに、ラベルだけ見て分かった気になっていると、やはりその人のことを理解できない。学校での教育環境では、ラベルで判断していれば困ったことがないのに、社会に出て色々な人と接すると、ラベルで判断しただけではうまくいかないことをたくさん経験する。

学校ではうまく生活できても、社会では生活できない大人が生まれる。それはつまり、学校の教育現場では、社会生活に役立つ、つながりをつくる能力を育てられなかったためではないかと思っています。

だからこそ、今の子どもたちにとって大切なのは、人とつながることを評価する教育と思います。人とつながるって、どういうことなのか。ラベルだけ見ても人は理解できないから、こうやってつながるといいよ。こうやってつながろうとすると、人は嫌がるよ。そんな教育が、これからの時代を生きる子どもたちにとって欠かせないと感じています。

そんな風に色々思うところがあります。だいじょうぶ。まあ、なんとかなりますよ。

記事のポイント!

  • 人とつながろうとする子どもを育てる
  • ラベルで分かった気になってしまう社会がある
  • ラベルはあくまでラベル

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