子どもの「生きる」を考える
子どもの「生きる」を考える
小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te
代表理事 
湯浅正太
みんなとおなじくできないよ

子どもが将来の道を選ぶことについて小児科医が思うこと

2022/03/31
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記事【子どもが将来の道を選ぶことについて小児科医が思うこと】

おはようございます。絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心に関わる物事を気ままに発信しています。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。

今回は、子どもが将来の道を選ぶこと、についてお話ししたいと思います。

このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。

【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる

職業選択

あなたは、自分の職業をどんな風に決めましたか?その仕事で働いている大人が楽しそうだったから、今の職業に決めた。そんな人もいるかもしれません。あるいは、ある体験をして、その当事者の気持ちがわかるから、その体験に関わる職業に就いた。そんな人もいるでしょう。

これは、昨日のお話とも少し関係します。昨日のお話では、こんなお話をしました。人は誰かと関わる時に、無意識のうちに自分の体験を振り返ることがある。そして、そのことが表情や行動に現れる。そんなお話をしました。

世の中には、「自分はこんな経験をしました。だから、その経験をしている人の気持ちがわかります。その人の気持ちに共感できると思います。そんな風に思って、その経験をしている人に関わる職業に就こう思いました。」そんな風に教えてくれる人がいます。

例えば、病気にまつわる物事を経験したから、医療者になりました、という人もいます。交通事故にまつわる物事を経験したから、警察官や救急隊になろうと思いました、という人もいます。

僕は医師として、人の心に向き合うとはどういうことかを学んできました。そして、小児科医として、子どもたちと向き合ったり、親御さんと向き合っています。そうやって人に向き合う中で、自分の体験を振り返るということも無意識のうちにおこなっているはずです。

そうやって、人と向き合うことを学んだり経験しているからこそ思うのは、自分の過去の経験に無意識のうちに触れるという作業は、それなりにその人の心の負担になりうるということです。

あなたの過去の経験

もしもあなたが目の前の相手と、少しショッキングな同じ経験をしていたとします。同じ経験をしているから、共感してあげられるかもしれない。その人の気持ちがわかるかもしれない。そう思うでしょう。

確かにそれはそうなのですが、それは同時に、あなたが過去のショッキングな事柄を振り返る体験をする、ということです。心の中にしまっておいたその体験に、自ら触れに行くようなものです。

心を操るトレーニングを積んでいないと、この作業によって心が乱れてしまう人もいます。例えばあなたが、同じ体験をしている相手を支えるシチュエーションを思い浮かべてみてください。

あなたは本当は、目の前の人がその体験を乗り越えられるように支える立場であった。そんな、相手を支える際に、自分自身の過去の体験を振り返る。すると、自分自身の体験を振り返る作業を通して、あなたの心の方が不安定になってしまう。そんなことだって、起こりえるのです。

そう考えると、同じ経験をしているから、その経験に関連する職業を選ぶということについて、本当にその人の幸せにつながるのだろうかという考えがあります。あえて、全然違う世界を経験しにいく楽しさもあるだろうに、ということです。世の中には、そういった考えがあります。僕もそういった考えを抱いたこともありました。

人とつながる人生

でも、このお話には続きがあります。

その考えを通して、人の人生をあらためて考えるようになります。人は、誰かとつながって生きる運命にあります。最初にあるのは、親とのつながりです。親がいないと、あなたは生まれてこないわけですから、生まれてきた瞬間に、親とのつながりを経験します。

しばらく行くと、友人や先生とのつながりを経験します。そして人生の伴侶とのつながり、自分の子どもとのつながりを経験するかもしれません。そういったつながりをつくるきっかけは、何だと思いますか?それは、同じという経験です。

人は、社会におけるつながりを広めるにあたり、相手と同じものがあるかどうかに着目します。親、あるいは育っている環境が同じだから、兄弟姉妹は強いつながりを感じます。同じ学校という場所を感じながら、友人や先生ともつながります。

あなたは社会を生きる中で、そういった共通点を見出しながら、あらゆる人とつながろうとします。人とつながりながら、あなたの社会を広げていきます。人という生き物は、そうやって、共通点を見つけながらつながることで生きようとする生き物なのです。

安定した心で関わってくれる存在

ここで先ほどの職業選択のお話に戻ります。自分と同じ経験をしている人を支えるという職業に就いた時、もしかすると、自分の過去の経験を振り返る体験を通して、心に負担がかかることもあるかもしれない、とお話ししました。

でも、それが人というものなのです。人はつながりをつくりながら、社会を広めていきます。そのために、自分の過去の経験との共通点を見つけながら、他人と関わることもあります。人として生きていると、そんなことはあって当たり前。

そうやって考えると、過去の出来事に振り回されない心をもたせてあげることが、とても大切であることがわかると思います。では、過去に惑わされず、有意義な人生を生きてもらうために、必要なことはなんでしょう。

それは、人生の各ステージで、安定した心でそっと寄り添ってくれる人が周囲にいる、ということです。抽象的な言葉で表現すると、愛をもって関わってくれる人が周りにいることなのです。そういった存在を感じることができるからこそ、人は不安を乗り越えていくからです。

子どもたちが将来、彼らの様々な経験を振り返りながらも、前を向いて生きていくには、やはり安定した心による支えが必要なのです。子どもたちの職業選択にも、そのことが大きく関わっていきます。

そんな風に色々思うところがあります。だいじょうぶ。まあ、なんとかなりますよ。

記事のポイント!

  • 職業を通して過去の経験に触れることがある
  • 同じものを感じながら、人とつながる
  • 関わりを通して、過去に振り回されない心を養う

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