記事【小児科医が思う・・相手を受け入れて楽しむ世界】
絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心を育てるうえで役立つ情報を発信しています。そんな、子どもの心を育てるということを、あまりかたく感じないでください。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。
絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心に関わる物事を気ままに発信しています。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。
今回は、相手を受け入れて楽しむ世界、ということについて触れたいと思います。
このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。
【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる
高校時代の経験
あなたは、みんなで作品を作るという経験をしたことはありますか?自分とは違う個性を感じながら、いい作品を作りたいという同じ目標に向かって一緒に頑張る、そんな経験です。
例えば、僕の経験としては、高校生の頃の文化祭での出来事です。僕の高校の文化祭では、色々な催し物を選べましたが、3年生は演劇を選ぶということになっていたんですね。僕はその時3年生だったので、僕のクラスは演劇をすることになっていました。
僕は舞台の上で表現するというよりも、何かを作ってそこで自分らしさを表現することが好きでした。そのため、僕は舞台に立つのではなくて、演劇の広告用の看板を作る担当になりました。そこでその係のリーダーをしていました。
看板を作ると言っても、ゼロから作るわけではなくて、もうすでに出来上がった枠組みを、文化祭委員からもらうのですね。木でできた看板の枠組みをもらって、そこに絵を描くということなのです。なので、もらった看板の板に何を描くかについて、みんなで一緒にワイワイ話しながら絵の構成を考えました。
絵の構成が決まったら、下書きの線を書いて、その上に色を塗っていきます。そうやって看板に絵を描いていく過程は、とても楽しかったですね。みんなでああでもない、こうでもないとか言いながら、楽しく作品を作っていきました。
そんな看板に色を塗っているある時、チームのメンバーがチームリーダーだった僕に、「ねえねえちょっと、あの子の色の塗り方が、思っている感じと違わない?」と言ってきたのです。その塗り方をちょっと見てみると、確かに筆の使い方が予定とは少し違っていました。うまく塗ろうとすると、もっといいやり方がいくつも浮かびます。
でも、そう言った指摘を聞きながらも、僕は心の中で「面白い描き方をするなあ」なんて思ったんですね。僕は作品作りの醍醐味の一つに、思いもよらない化学反応があると思っています。時に偶然の化学反応のようにしてできあがる、そんな良さもあると思っていました。
それに、キレイに描くことだけが、僕たちのやりたいことではなかったんですね。僕たちの一人ひとりのいい思い出として、その作品を作っている。それぞれの良さを持ち寄って、それぞれが楽しかったと思える作品を作ることがとても大切と思ったのですね。
だから、その看板作りの場で、「あの子の色の塗り方が思っている感じと違わない?」と言われた時に、「それもそうだけれど、あの塗り方も個性が出ていていいんじゃない」と言ってそのままにしました。個性が違う同士みんなで作った、という味が出ると思ったからです。
相手を受け入れて楽しむ
実はその文化祭では、デザインがよかったと思われる看板に投票するシステムがありました。その得票数の結果は、文化祭の最終日に全校生徒が会する体育館で発表されることになっていました。そうやって、得票数が多かった看板が表彰されることになっていたんです。
それで、僕たちの看板への評価は、どんなだったと思いますか?実は、僕たちの作った看板は、もっとも得票数が多い看板に選ばれました。
「あの子の色の塗り方が思っている感じと違わない?」ということに対して、「そういう味もあっていいんじゃないかな」というやりとりをしながら作った看板は、もっとも多くの生徒に評価してもらえる看板になったのです。自分とは違う相手を受け入れて楽しむ世界もある、そんなことを感じるいい思い出として残っています。
僕は、子どもたちにとって、色々な経験を積ませてあげることが大切と思っています。そういった経験の中でも、自分ではない、他人を感じる体験はとても大切と考えています。その経験は結局、その子にとって自分のアイデンティティを感じることにつながるからです。
この世の中には、自分の思考の及ばない世界がある。自分がいいと感じる世界とは違った、別の世界がまだまだたくさんある。そうやって色々な世界を開拓していけると、気づけていなかった自分にも気づけるようになります。こんな風に感じる自分がいるのか。そんな風に、自分でも気づけていなかった自分に出会える体験は、自分の可能性をどんどん広げていけるのです。
今の世の中であれば、真似ようとしたらなんだって実物そっくりに作れてしまいます。キレイに描いたり作ったりするのは、人間でなくたって、コンピューターにやってもらえればいい。だから、キレイに作ろうとするよりも、その人の個性を求めるからこそ面白い。そんな風に思っています。
展示されている図工の作品に、「優秀賞」なんかのマークが付けてある光景を見かけることがあります。そういう光景を見るたびに思うことは、「どの作品にもその人の個性があって面白い。わあ〜どれも優秀賞。」ということです。エンターテイメントの要素を楽しんでいるのでなければ、みんなに「優秀賞」をあげてもいいんじゃないの、と思っています。
有名な画家も、生きていたその時代には認められなくても、後世で認められるようになる。そんなことは珍しくありません。きっと気づけていない人の素晴らしさは、どこにでも転がっているものです。だから、誰かを排除してどれか一つを選ぶのではなくて、それぞれを受け入れて、それぞれのいいところを見つけ出す。そういうことを大人が率先して行えば、もっと生きやすい社会が生まれるのではないでしょうか。
そんな風に、色々思うところがあります。だいじょうぶ。まあ、なんとかなりますよ。
記事のポイント!
- 子どもに自分とは違う世界を感じてもらう
- それぞれの良いところを見つけ出す
- どの子どもたちも認められる世界はある
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