記事【てんかん専門医がこっそり教えるてんかんを見分けるコツ】
絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心に関わる物事を気ままに発信しています。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。
今回は、てんかんを見分けるコツをお話ししたいと思います。
このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。
【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる
てんかんには色々ある
あなたは、てんかんという言葉を聞いたことがありますか?てんかんは、脳の神経細胞から異常な電気信号が出て症状が現れてしまう、そんな病気です。その症状は突然起きるので、「発作」という言い方をします。
てんかんという言葉を聞いたことがある人の中には、てんかんは手足に力が入ってブルブル震える「けいれん」を指すと思っている方もいるかもしれません。でもより正確には、てんかんの症状の一つが「けいれん」です。ということは、てんかんの症状には、「けいれん」以外の症状もあるということです。
「けいれん」以外の症状には、例えばどんなものがあるでしょうか。例えば、突然「ボーっとする」症状です。それまで会話をしていたのに、突然「ボーッとする」ようになって、「おーい」って呼びかけても反応しない。そんな「ボーっとする」症状も、てんかんにはあります。
あるいは例えば、突然「チクチク」する感覚が出現する、突然「嘔吐する」、突然「手を揉みながら、口をもぐもぐする」、そんな症状もあります。
このように、てんかんには色々な症状があるのです。「けいれん」は誰が見てもわかりやすいため、てんかんの「けいれん」の症状が有名ですが、てんかんには多種多様な症状があります。
突然現れるてんかん
では、どうしててんかんには多種多様な症状があるのでしょうか?それは、てんかんの症状は、異常な電気信号が脳のどこで発生しているかが関係しているからです。人の脳には、体の動きを司る部分もあれば、体の感覚を司る部分、あるいは目で見る機能を司る部分などがあります。
脳にはそんな色々な機能が備わっていて、どこの部位から異常な電気信号が起きるかで、てんかんの症状が変わってくるのです。運動を司る場所から異常な電気信号が出れば、勝手に手足に力が入ってしまう運動の症状が出ることになります。
そして、てんかんのどの発作にも共通するのが、その人の意思によらない症状が突然起きる、ということです。「けいれん」も、「ボーっとする」症状も、本人がしたくてしているわけではありません。本人も起こしたくない症状が、突然現れるのです。
そんなてんかんを理解することが、子どもを理解することにどのようにつながるかを考えたいと思います。
こんな子もいる
例えば、こんなてんかんのある子どもがいました。その子は、いつものように小学校で席に座りながら授業を受けていました。でも、先生が黒板に書いたことを説明している最中に、突然その子は席から立ち上がりました。そして、体をボソボソかくような仕草をしながら、しばらくずっと立っていたのです。
先生も驚いて「どうしたの?」と、その子に聞いたそうです。でも、その子はぼーっとしたまま答えませんでした。そして、ふっと正気に戻って、その子自身も驚いたような表情をしていたそうです。その子自身も、何が起きていたのかまったくわからなかったそうです。
また別のある時には、授業中に席から立って、服を脱いでしまう行動をとるようになりました。周りのお友達や先生はびっくりしてしまいました。「何やっているの?」と言っても、その子は全く反応せずに、自分の行動を続けるばかりだったそうです。
そんな行動があったものだから、周りのお友達にからかわれるようになりました。その子本人もやりたくてやっている行動ではないのに、からかわれてしまう。そんな経験をしたそうです。
そんな不思議な経験をして、ようやく病院を受診しました。脳波という、脳の電気信号を確認する検査を行い、異常が見つかりました。これまでの経過と検査結果から、てんかんと診断して薬を内服して症状が治りました。
てんかんは珍しくない
てんかんというものがどんなものかを理解していると、子ども本人が意識しない中で起こるこういった症状に気づけるかもしれません。てんかんの症状は、子ども本人も起こしたいわけではないのに、起きてしまうのです。てんかんの症状を、本人の意志で行っているものとは考えずに、本人とは切り離して考える。そうやって子どもに接することができるようになると、子どもも安心して過ごせるようになります。
そんなてんかんは、100人に1人がもっているとされています。決して珍しい病気ではないのです。これから高齢化社会に突入します。そんな高齢化社会では、よりてんかんが注目されるようになるかもしれません。なぜなら、てんかんは高齢者に多いからです。「ぼーっとしている」様子が痴呆と間違えられてしまうことも少なくありません。
病気を理解することで、人の心に寄り添えるようになる。そんな風に、色々思うところがあります。だいじょうぶ。まあ、なんとかなりますよ。
記事のポイント!
- てんかんには色々な症状がある
- てんかんは突然起きる
- てんかんは珍しくない
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