記事【子どもの行動を変えたいと思った時に】
絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心を育てるうえで役立つ情報を発信しています。そんな、子どもの心を育てるということを、あまりかたく感じないでください。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。
今回は、子どもの行動を変えたいと思った時に、というテーマでお話ししたいと思います。
このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。
【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる
物の貸し借り
あなたは、自分がもっているものを誰かに渡すことができると思います。ボールペンを貸してあげたり、教科書を貸してあげたり。そんな、物の貸し借りをしたことがあるでしょう。そういった、物の貸し借りをできることで、他の人とつながることができます。
子どもは成長する過程で、物の貸し借りができるようになります。でも、最初からそれをできる子どもはいません。物の貸し借りを体験してもらう必要があります。物の貸し借りを体験しながら、「ありがとう」という言葉をもらう。相手の感謝の気持ちを感じながら、他人の幸せを知り、自分の幸せを感じるようになるのです。
つまり、物の貸し借りをできるということは、子どもが成長するうえでとても大切なことなのです。でも子どもの中には、物の貸し借りをなかなか行えない子どもがいます。そんな子どもには、どうやって教えてあげたらいいのでしょうか。
子どもの行動を変えるチャンス
例えば、子どもが親に物を貸してくれた時に、親から子どもに「ありがとう」「嬉しい」と表現することは大切でしょう。そうやって、子どもが誰か他の人に物を貸すということで、貸してあげた人が喜ぶと体験させてあげることは大切です。そうやって心地よい体験を積ませてあげるということです。
ただ、それだけではありません。それ以外にも、子どもが他人に物を貸す行動を増やす方法があります。例えば、親が子どもに「はいどーぞ」と言って物を貸してあげる行動を見せてあげるということです。あるいは物の貸し借りとは違う、子どもと手を握ったり、子どもと挨拶を交わしたり、そういった子どもとつながるという方法を増やすことで、子どもが物の貸し借りをできるようになる。そういった効果があります。不思議なものです。
実は子どもの行動を変えるチャンスは、その行動の場面以外にもたくさん潜んでいるということです。物を貸すことがなかなかできない子どもはいるものです。そういった子どもに、「貸して」と言っても、なかなか貸してくれません。つまり子どもの行動を変えようとして、その行動ばかりに着目していても、その行動が変わらないということはよくあります。
子どもの安心感
子どもの行動変化あるいは行動変容と言ったりもしますが、それには、安心感が必要なのです。子どもの行動が変わるとは、つまり成長するということです。人とつながる行動へと成長させたかったら、子どもに安心感を抱かせること。これが欠かせません。
子どもの安心感にとって大切なものは、子どもの心の中に親を感じさせてあげるということです。不思議なものですが、家庭での親子の挨拶や触れ合いが増えると、子どもは他の人との交流を行えるようになります。それは、子どもの心の中に親という存在を感じられるようになるからです。親という存在を心に感じられるからこそ、周りの人とつながる行動ができるようになる。そういうものです。
それに、そんな安心できる親が行っている行動を真似しようとする行動が現れます。親が誰かに「はいどーぞ」って物を渡している。じゃあ、ちょっと同じことしてみようかな。親が自分に「はいどーぞ」って物を渡してくれた。何だか嬉しい。じゃあ、ちょっと同じことしてみようかな。
そうやって親と子どもの安心できる関係づくりを通して、子どもの行動は変わっていくものです。子どもの行動を変えたいと思ったら、子どもだけを変えようとせずに、親の行動から変えてみようとする。そういった親を出発点とした行動変容のスキルが欠かせません。
今回はここまでです。
記事のポイント!
- 安心感で子どもの行動は変わる
- 親を感じられる心をつくる
- 親から始まる子どもの行動
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