記事【子どもへの関わりは量から質へ】
絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心を育てるうえで役立つ情報を発信しています。そんな、子どもの心を育てるということを、あまりかたく感じないでください。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。
今日は、子どもへの関わりは、量なのか、質なのかということを考えたいと思います。このお話を通して、子どもの一生を通して同じではない親から子どもへの関わり、あるいは子どもの成長とともに変わる親の関わりを感じてもらえれば嬉しいです。
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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる
親を認識する
子どもは産まれた直後は、ひっきりなしに親を呼びます。おっぱいが欲しい、おしっこした、抱っこして。そうやって何度も何度も泣いて親を呼びます。そして求めていた親が来てくれると、泣き止みます。何度も何度も子どもに呼ばれることで、親の方が疲れてしまうものです。つまり子どもが小さい頃は、数をこなすということが求められる時期なんです。
子どもは何度も親に関わってもらうことで、親という存在を認識します。他の人とは違う親という存在を意識できるようになるということです。まれにしか関わってくれない人ではなく、常に呼ぶと応えてくれる親。そういった親の存在を理解するからこそ、人見知りが始まります。
人見知りしてくれるようになったということは、それだけ親から子どもへの関わりの数をこなすことができた証拠です。子どもが歩けるようになると、親の服を引っ張りながら、親と一緒に行動できるようになります。親という存在を身近に感じながら、外の世界を経験するようになるのです。
他人を認識する
では親とずっと一緒にいることがいいことかというと、そういうわけではありません。人は、社会で生きる生き物です。社会で生きて、色々な経験を通して様々な愛に恵まれる体験を積む。そうやって生きる幸せを感じる生き物です。そして、社会で生きるからこそ、その人本人も成長できる。そういうものなのです。
だから、これからの長い人生を通して、幸せを感じられるように、人として成長できるように、少しずつ社会に慣れる必要があります。そのために、幼稚園、保育園、そして学校といった小さな社会から経験するようになります。すると、自分が経験したことのない物事に遭遇したり、自分とは違う他人と接する時に、不安を覚えます。
でも、大丈夫です。生まれてきてから何度も何度も数を重ねてきた親から子どもへの関わりで、子どもは心の中で親を感じられるようになっているからです。心の中の親を感じながら、社会生活の中で生じる不安を克服していきます。数を重ねてきた親から子どもへの関わりが、そうやって成果を出すのです。
外の世界を冒険できていく中で、親以外のものに頼ることも出てきます。親のぬくもりを感じるタオルや、親の代わりになるぬいぐるみです。親とはちょっと違う、自分を支えてくれるものを身近に抱えながら、どんどん世界を開拓していく子どもが育っていきます。
自分を認識する
そして、そんな冒険をしながらお友達や先生といった様々な人たちと会います。自分と気が合う人もいれば、自分とは性格が正反対の人にも会います。そうやって自分とは違う外の世界を感じます。つまり社会の多様性を感じていくのです。この過程はとても大切でした。自分はいったい何者なのかという、自分への意識につながるからです。
親を心の中で感じる子どもを育てることができたらこそ、子どもは外の世界で冒険できる。外の世界を冒険しながら、自分とは違うものと触れ合う中で、他人とは違う自分を意識できるようになる。そうやって、子どもは成長すると、どんどんどんどん親から離れていきます。それは、子どもの成長にとって素晴らしいことです。外の世界へ踏み出し、自分の世界を開拓していくのです。
すると、親が子どもに関わる機会が自然と減っていきます。子どもが幼い頃は何度も何度も関わる時期がありました。親から子どもへの関わりは数であったわけです。それが、子どもの成長ともに、子どもへの関わりが数ではなくなっていく。では、子どもの関わりはどう変わるのか。そうです、子どもへの関わりは、質を考える時期に入っていくのです。
数から質へ変わっていく
子どもにとって、親の関わりは量であり質であることは間違いありません。でも、子どもが幼いうちは量が大切です。不安が生まれた時に親がそばにいるという経験はとても大切なのです。そうやって親からの関わりを数多く経験しているうちに、子どもの心の中で親を感じられるようになります。親を心の中で感じられるには、1回きりの大切な関わりよりも、何度も何度も子どもに関わるという数が欠かせないのです。
子どもが心の中で親を感じられるようになれば、タオルやぬいぐるみなどを利用しながらも、外の世界へ冒険できるようになります。逆に、冒険するためには、親から離れる必要があります。親から離れるからこそ、親の関わりの数は減ります。でも、親の関わりが減り冒険を続ける中で「いざ」という時が必ずあります。その「いざ」という時こそ、親の関わりの質が大切なのです。
学校でちょっと嫌なことがあった。学校で自分が苦手な行事がある。そんな子どもの不安が高まった「いざ」という時に、質を大切した親から子どもへの関わりをもてるかどうか。それが大切なのです。つまり、子どもが冒険をして困難に出くわした時に、困惑した子どもの心に同調することなく、安心感をもって子どもに関わることができるか。そういった、質を重視した親から子どもへの関わりが欠かせません。
このように、子どもへの関わりは年代ごとに変わっていきます。いつまで経っても、子どもへの関わりが変わらないということはありません。しかも、子どもの成長はとても早いですよね。つまり、あっという間に、子どもへの関わり方も変わっていきます。数から質へ変わっていくということです。
今回はここまでです。
記事のポイント!
- 子どもの関わり方はずっと一緒ではない
- 子どもは、親を知り、他人を知り、自分を知る
- 親から子どもへの関わりは数から質へと変化する
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