子どもの「生きる」を考える
子どもの「生きる」を考える
小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te
代表理事 
湯浅正太
みんなとおなじくできないよ

子どもの発達を考えるうえでおすすめの映画

2022/02/15
#おすすめ番組 #子どもの発達を考えるうえでおすすめの映画 #子育て #小児科医 #湯浅正太

記事【子どもの発達を考えるうえでおすすめの映画】

絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心を育てるうえで役立つ情報を発信しています。そんな、子どもの心を育てるということを、あまりかたく感じないでください。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。

今回は、僕、湯浅正太の大好きな映画を通して、子どもの発達を考えたいと思います。

このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。

【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる

僕の好きな作品

世の中には色々な素晴らしい作品があります。僕も出版社の方々と本をつくらせていただくようになって思うことは、世の中にはまだ顔を出していない素晴らしい作品がたくさん眠っているんだろうな、ということです。自分の趣味としてただただ作品をつくり世の中に出していないケースもあるでしょうし、あるいは、作品を理解してくれる人にたまたま巡り会えていないだけのこともあるだろうと思います。

そんなたくさんの作品で溢れるこの世の中で、僕が好きな作品は「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」という映画です。この映画に登場する主人公は、才能に恵まれながらも、愛に恵まれずに育ち素行の悪さを獲得した青年です。そんな青年は、人と心を分かち合えないことで社会に適応できない状況で暮らしていました。でもそんな彼がようやく自分を理解してくれる人にめぐり合うことで、彼の人生が好転していきます。映画の最後には、自分の将来へ向けて生きていこうという姿勢に変わり旅立っていく。そんな映画です。

この映画は、ハーバード大学在学中だったマット・デイモンが脚本を書き始めて、その後親友のベン・アフレックとともに脚本をつくりあげていきました。そして映画化に向けて試行錯誤しながらも、ようやく世の中に出た作品です。

この映画とつながる世界

僕がどうしてこの作品が好きかというと、寄り添うことの大切さを教えてくれるからです。この映画は、巡り会う相手によって、人生が如何様にも変わっていく様を如実に表しています。そして、自分を理解してくれる人にようやく巡り会えた主人公の成長を感じられます。そうやって、寄り添うことで生かされる人の人生を感じるのです。

この映画を観て感じる世界は、僕が小児科医として感じる世界とよくつながります。僕は小児科医として、多くの子どもたちの可能性を感じます。その可能性を感じながら、その子どもたちが発達する様子を観察します。その時に痛烈に感じることは、その子どもを理解してくれる大人がいるかどうかで、その子どもの人生が大きく変わるという事実です。

大人が自分自身の心をしっかり操りながら、子どもの心を育てる姿勢を貫くのか。あるいは、大人のエゴを子どもに押し付けてしまい、子どもの生きづらさを助長してしまうのか。そういった周りの大人の姿勢で、子どもの人生は大きく変わります。

子どもの可能性を感じられるか

僕自身が世の中の様々なことを経験すればするほど感じるのは、この世の中には自分の知らない世界が無限に広がっているということです。自分が抱く思考よりも、もっと面白いユニークな発想もある。新しい発想の中で、新しい生き方が生まれる。この世の中には、そういった可能性が溢れているということです。

そういった人生の無限に広がる可能性を知っているからこそ、感じることがあります。それは、「こうでなければなりません」と子どもに指導しながらも、「本当にそうなのか?」と自問自答する大人の姿勢が欠かせないということです。そういった姿勢がとても大切と感じています。

そんなことを思うからこそ気付くのは、「こうでなければなりません」と指導のやり方に柔軟性をもたない大人は、たいてい柔軟性がなく窮屈な人生を送っているということです。そういう大人に気付くからこそ、その人生を子どもに押し付けていいのか、そんな風に感じることも少なくありません。

子どもに寄り添う姿勢

この映画の主人公のように、自分を理解してくれる人に巡り会うことは、人が幸せを獲得するうえで欠かせません。自分を理解してくれるということは、自分に愛を注いでくれるということにつながります。自分に愛を注いでくれる人に巡り会うかどうかで、その人の人生が決まる。

人を理解する、あるいは人に愛を注ぐということは、人に寄り添うということです。人を自分の考えで縛るのではなく、寄り添うのですから、そこには柔軟性が伴います。このように、子どもたちを理解することには、やはり柔軟性が必要なのです。「こうでなければなりません」と縛るのではなく、大人の側が如何様にでも柔軟に気持ちを変化させながら寄り添うという姿勢が大切ということです。

子どもの頃にそういった大人からの柔軟な寄り添う姿勢を経験できていれば、子どもたちは気持ちよく安心した人とのつながりを築けるようになります。嬉しい気持ちの時にはにこやかな表情をすればいい。明るい気持ちで人と接することで、相手とも気軽につながれる。

この映画の主人公は、子どもの頃にそんな愛に恵まれてこなかったせいで、人と接することを苦手としていました。そんな彼が自分を理解し寄り添ってくれる人と出会い、人とつながることで愛の素晴らしさに気づきます。子どもの頃に経験できなかった愛を、大人になってようやく感じることができたんです。そして人とつながりながら、自分という存在に目を向けられるようになり、映画の最後のシーンでは自分を見つける旅にでます。

この映画を通して、どんな境遇の子どもたちであっても、大人の側が心を柔軟に変えながら寄り添うことの大切さを感じます。そうやって子どもたちには、人とのつながりを通して自分を感じられる育ちを提供できればと思います。

今回はここまでです。

記事のポイント!

  • 子どもを大人の価値観で縛らない
  • 子どもへの関わりを自問自答する
  • 子どもに寄り添う

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