子どもの「生きる」を考える
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小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te
代表理事 
湯浅正太
みんなとおなじくできないよ

発達障害とアイデンティティの確立

2022/02/03
#発達障害 #アイデンティティ #子育て #小児科医 #湯浅正太

記事【発達障害とアイデンティティの確立】

絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心を育てるうえで役立つ情報を発信しています。

今回は、発達障害とアイデンティティの確立について考えたいと思います。

このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。

【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる

アイデンティティ

アイデンティティは、心理学者として知られるエリクソンが提唱した言葉です。自分は自分であるという認識で、自己同一性という言葉で表現されることもあります。それは、人が自信をもって有意義な人生を歩むうえで欠かせないものです。

逆にアイデンティティを確立できないとどうなるか。それは、自信を失って、無力感さえ感じてしまうようになります。そうやって、人生の意味を見出せなくなってしまうのです。ですから、子どもたちの長い人生を考えた時に、アイデンティティを確立できるか否かはとても重要な課題です。

他人を知り、自分を知ることの大切さ

このアイデンティティは、中学生〜高校生頃に獲得すると言われています。ですから、この時期にはアイデンティティを確立できるように子どもを支援することが必要ということです。では、アイデンティティを確立するには、一体何が必要なのでしょうか。

それは、他人を知り、自分を知るということです。自分とは違う他人を理解する。そして、他人と違う自分を理解するということです。

そのためには、人と交流したり、色々な世界を経験することが欠かせません。友人や先生と話したり、色々な社会・文化・価値観に触れる。そうやって、様々なものに触れながら、外の世界を理解することが欠かせないのです。

そして、自分を知るということも必要です。世の中にはメタ認知という言葉があります。それは、自分を俯瞰的にみるということです。他人とは違う自分とは、どんなものなのか。どんな強みがあって、どんな弱みがあるのか。そのように、自分の行動を振り返り、自分を理解することが、アンデンティティの確立には欠かせないのです。

ここまで、中学生から高校生の時期におけるアイデンティティの確立に触れました。アイデンティティを確立することによって、自信を抱き自分らしい人生を歩もうとする姿勢が生まれます。そのアイデンティティを確立するには、他人を知り、自分を知る必要がある。そういったことに触れました。

発達障害とアイデンティティ

ではここから、発達障害のある子どもがアイデンティティを確立することを考えたいと思います。発達障害のある子どもの中には、他人の気持ちを理解することや、俯瞰的に自分の行動を振り返ることが苦手な子どもも少なくありません。

他人を理解するには、他人が発した言葉やその表情から、他人の気持ちを理解する必要があります。でも、発達障害のある子どもは、比喩的で曖昧な表現では理解しづらく、言葉の意味をそのまま受け取ってしまうことがあります。他人から冗談を言われても、それを冗談とは受け取らずに真に受けてしまう。そんなことがあるものです。だからこそ、他人の気持ちを正確に理解するということにつまずいてしまうのです。

そして、他人を理解しづらいということは、自分の行動を振り返るということにも影響を及ぼします。自分がおこなった行動で他人がどんな気持ちになったのかということを解釈できないと、しっかり自分の行動を振り返り、次の機会に備えるということができなくなってしまうのです。

小学校や中学校では学習という面でよくできていたのだけれど、高校以降生きづらさが目立ってしまう子どもがいます。そういった子どもは、大人になってうまく社会生活を送ることができなくなってしまう。子どものアイデンティティを確立することを意識できていないからこそ起こる事態です。

そんな子どもには何が必要だったのか、それがアイデンティティを確立するための、他人を知り自分を知るための支援です。

発達障害のある子どもへの支援

発達障害のある子どもは、アイデンティティを確立すべき時期につまずくことがあります。そういったつまずきを減らすために、親や支援者にできること。それは、その子どもと外の世界とを仲介することです。

他人を知るために、その場の状況を言葉に出して説明してあげる。「今は、こんなことが起きているね」。そして、他人が抱いた気持ちも説明してあげます。「Aくんは、こんな風に思ったんだね」。そうやって、周りで起きていることや他人の気持ちを理解させてあげること。それが欠かせません。

そしてまた、発達障害のある子ども本人やそれをみた支援者の気持ちをあえて言葉に出して表現します。「いま、こんな風に思ったかな?」「先生は、こんな風に思ったな」。そうやって、自分を振り返るというメタ認知を周りが捕捉してあげる。すると次第に自分というものを理解していきます。もちろんそこでは、周りの状況や相手の気持ちを理解しづらい自分にも気づきます。でも、それはそれでいいのです。

そうやって、他人を知り自分を知るために支援することが、発達障害のある子どもがアイデンティティを確立するために必要なことです。

今回はここまでです。

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記事のポイント!

  • アイデンティティを確立しよう
  • 他人を知り、自分を知ることが大切
  • 子どもと外の世界とを仲介しよう

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