記事【子どもについての情報収集のコツ】
絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心を育てるうえで役立つ情報を発信しています。
今回は、子どもについての情報収集のコツについて触れたいと思います。
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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる
人を知るということ
皆さんは、はじめて出会った相手のことをどうやって理解するようになりますか?おそらく、何度も話をして、いっしょに行動して、その人のことを理解すると思います。こんないいところがあるんだ。こんな苦手なところもあるんだ。自然とそうやって相手のことを理解します。
例えば、僕が大学生だった頃のことです。僕は大学生の頃、海外へ留学する前の4年間、サッカー部に所属していました。今でも当時のことを懐かしく思い出します。それは僕にとって、その頃の友人たちや先輩、後輩との出会いがとても心地よい思い出だからです。
大学に入学した頃には、もちろん会う人会う人、初対面の人ばかりです。どんな人なのかな?優しい人なのかな?相手の気持ちを理解してくれる人なのかな?そうやって無意識のうちに色々なことを思いながら、少しずつコミュニケーションの輪を広げていきます。
お互いのことを話したり、いっしょにサッカーの練習や試合も経験しました。そうやって、たいへんだなと思うことも、みんなでワイワイ話しながら、楽しい経験へと変えていったものです。そういう経験を通して、出会った人たちの素晴らしい個性に気づいていきました。
みんな、とても心が優しい人たちばかりでした。課題があると真剣に取り組む姿勢も、僕にとっていい影響を与えてくれました。そうやって、いっしょに話して、いっしょに行動して、その人の情報を集める。その人を理解するということです。それが、普通のことです。
知的障害の評価
人を理解するということを、子どもについて考えてみたいと思います。例えば、子どもの能力です。子どもを支援する場合に、その子どもについての情報を収集することは欠かせません。そのために、子どもの知的能力、IQを計測することがあります。その知的能力は、子どもの能力の一部を反映しているという点で参考になります。
でも、IQは参考になりますが、子どものすべてを反映しているわけではありません。だからこそ、知的障がいのある子どもの重症度の判定では、IQの他にも、実生活での困難さや支援の必要度の理解が重視されるようになったのです。それは、IQの数値で知的障害の重症度を判断することへの警笛です。
以前は知的障害を、IQによって軽度、中等度、重度、最重度などと分けていました。でも、IQが軽度以上あっても、教育現場や実生活で困難を抱えることが少なくないのです。IQだけでは、実際の実生活に適応できるかできないかの重症度を判断できないのです。
また、先進国でのIQについては教育などの影響により、知的能力が低いIQ70以下の比率は、2%から1%へと減少していることも指摘されています。つまり、IQ自体は、教育などの社会環境の変化により、変化しうるものということです。
そういったことから、知的障害の重症度は、実生活の困難さや支援の必要度によって判定するという流れができてきました。流れができてきたというのは、まだまだ現実社会では、受け入れられていない側面があるということです。
社会での手続き上、何らかの形として知的障害を証明する必要があります。その知的障害を証明するうえで、いまだにIQがとても重視されているという現実があります。中には、子どもが支援を必要としているにもかかわらず、「このIQでは支援を提供することが難しいですね」と言われてしまうことさえあります。
子どもたちへ影響する、人を評価する際の社会の姿勢
これが、子どもたちを検査結果ばかりで評価してしまい、子どもたちをみていないという現実です。実際に生活している子どもといっしょに話をして、いっしょに行動すれば、実生活での困難さや支援の必要性はわかります。社会での手続き上書類という形にする必要があれば、そういった実生活での様子を評価に盛り込めばいい。
検査結果ばかり見るのではなく、その子どもをみる。当たり前のようですが、まだまだ子どもを見ていない社会があります。大人の社会が子どもをしっかり見ないままだと、子どもにもそのような態度が育ちます。その人の本質に目を向けずに、偏差値や権威、そういった形としてあらわれるもので人を評価する。
そうやって育った子どもたちが将来人を支えようとした時に、人ではなく、きっと違うものを見てしまうと思います。すると社会からこぼれる言葉は、「今の若者たちは・・」というセリフかもしれません。でも、その若者を育てたのは社会です。若者たちの姿勢は、彼ら/彼女らを育てた社会の姿勢なのです。そのことを社会は理解しているのか?そんな風に思うことがあります。
ですから、子どもについての情報収集のコツ、それは、子どもに実際に関わるということです。いっしょに会話をして、いっしょに行動する。そういった直接的な関わりを通して、正しくその子どもを知る。そうやって、子どもへの充実した支援が成り立ちます。検査結果ばかり気にする支援は、正直あまり信用できません。
今回はここまでです。
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記事のポイント!
- 検査結果だけで子どもを評価しない
- 知的障害の評価には、実生活の困難さや支援の必要度の理解が欠かせない
- 直接関わり、子どもを知る
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