小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te代表理事
湯浅正太
子どもの「生きる」を考える

不登校にもつながる病気 起立性調節障害 後半

2021/12/20

記事【不登校にもつながる病気 起立性調節障害 後半】

絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。前回は、不登校の子どもも抱えることが多い「起立性調節障害」がどんなものかについて触れました。今回は、その対応についてお話ししたいと思います。

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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる

どうやって診断するの

「起立性調節障害」を疑った場合、不整脈などの他の病気がないことを確認した上で、症状と、血圧・脈拍の変化から診断をします。特に、横になった時の血圧や脈拍、立ち上がった時の血圧や脈拍を測定して、その変化に乱れがないかどうかを確認します。症状が重い子どもは、血圧や脈拍の検査を実施している最中に症状が強く現れ、検査を中断せざるを得ないケースもあるのです。

どうやって治療するの?

体内の血液量を増やし血圧を維持することを期待した取り組みを行います。でも、いきなり色々調整するというよりも、一つひとつ変えていくことを目標にします。それは、治療の取り組みの中で調整した生活習慣をいかに続けられるか、ということが大切だからです。いきなり色々工夫しても、その工夫を続けられなければ意味がないのです。

まずは簡単なところから調整します。それは、姿勢です。例えば、立ち上がるときは頭を下げてゆっくりと立ち上がります。そして、できるだけ長時間の起立は避けます。簡単ですよね。

それに慣れてきたら、次は運動です。症状が落ち着いた午後の時間帯で構わないので、散歩などで身体を動かします。この運動には、疲労を貯めることで熟睡への効果も期待しています。しっかり睡眠がとれることで、翌日の自律神経の調子も回復するからです。

そして食事です。1日あたり2L前後の水分と、1日あたり10g程度の塩分を摂ることを目標にします。たいてい、水分も塩分も摂りたがらない子どもが多いため、周囲から摂取を促す必要があります。欲を言うと、栄養バランスの良い食事を摂りたいところです。

生活習慣を工夫

ここまで、姿勢、運動、食事の3つを説明しました。姿勢の目標はクリアできる子どもが多いのですが、運動と食事の工夫を続けられる子どもは多くはありません。散歩もしなくなりますし、水分も摂取しなくなります。

ですから、治療の上で最も大切なことは、工夫した生活をどれだけ継続できるかということです。継続するということは、習慣化するということです。つまり、運動や食事を工夫して、生活習慣を是正するということなのです。

子どもの生活習慣は、家庭の習慣です。つまり、子どもの生活習慣を是正するためには、家族が協力して取り組まなければ習慣化はしません。家族みんなで「起立性調節障害」への共通理解をもちながら、みんなで生活習慣の修正を協力する。そんな姿勢が欠かせません。

睡眠

そして、姿勢、運動、食事の次は、です。運動や食事を調整できずに、睡眠だけうまくいくということはあまりありません。それは、睡眠には、日中の運動による疲労が大切ですし、食欲も満たされている必要があるからです。

例えば、皆さんは病院に入院したことはありますか?病院に入院すると、夜眠れなくなってしまうことが少なくありません。それは、日中にベッドの上で生活することが多くなり、疲労がたまらなくなってしまうからです。それほど、日中の疲労は睡眠にとって欠かせないのです。

「起立性調節障害」があっても、昼以降は体調がよくなり、夜は元気になってしまうので、ついつい夜更かししてしまいがちです。夜更かしすると、もちろん次の朝はただでさえ眠気で起きにくい状態になります。そうやって、睡眠サイクルが崩れて、昼夜逆転の生活になることも少なくありません。

昼夜逆転の生活になると、日中の運動も減ります。食生活も乱れます。ですから、運動、食事、睡眠はすべてつながっています。何かがうまくいかないと、他もうまくいかなくなる。そんなものです。でも逆に、何かがうまくいくと、それをきっかけに他もうまくいくようにもなります。

心理的な対応

起立性調節障害は怠け癖ではありません。子ども自身の意思ではなかなかコントロールできない身体の病気です。その病気を克服するために、運動、食事、睡眠という生活習慣を修正するには、子ども一人の力ではうまくいきません。家族や学校など周囲の人の協力が欠かせないんです。

そこで、最後に心理的な対応についてお話しします。家族や学校が協力して対応したいこととして、子どもの心理的負担の軽減があります。起立性調節障害の診断をきっかけに、背景に精神的なストレスを抱えていることが明らかになることも少なくありません。その対応にこそ、家族や学校などの周囲の人が連携が欠かせません。

「午前中は体調が悪いから、午後から登校させてもらう」。そんな配慮を含めて、無理のない範囲で生活を整えていくことがポイントです。真面目な子どもも多いですから、そうやって休める保証をつくってあげることは、子どもの気持ちの余裕につながります。

また中には、自分の気持ちを相手に伝えにくいことで、ストレスを発散できずにいる子どもも多く見かけます。そんな子どもの場合には、そっと短時間でいいので、その子の気持ちを周囲の人が言葉に出してあげる、気持ちの言語化を試してみます。「ガヤガヤ騒がしいのは苦手だよね」「みんなの前で発表するのは、緊張するよね」。そんな風に子どもの気持ちを、周りの人があえて言葉に出してあげるのです。そういったことで、子ども自身が自分の気持ちに気づける他に、理解してくれる相手がいることへの安心感を感じられるのです。

このように、この病気は子どもの心と深く関係しあっているのです。今回はここまでです。不登校にも関連することが少なくない「起立性調節障害」。今回は、その「起立性調節障害」の対応について触れました。

記事のポイント!

  • 体内の血液量を増やし血圧を維持することを目指す
  • 姿勢、運動、食事、睡眠の生活習慣が大事
  • 心への対応もお忘れなく

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