記事:障がいのある子どもの将来【就労の方法:一般就労】
絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。障がいのあるお子さんが将来大人になった時に、どんな働き方ができるのか。小児科医として働いていると、そんな質問をいただくことがあります。今回は、障がいのある方が働くための採用枠として、社会にはどのようなものがあるのか、について触れていきます。
【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる
就労の方法
ここでは、下にお示しする表の内容についてご説明することになります。表の上段にお示しするように「就労スタイル」「就労先」「障がい開示の有無」で分けて考えると、障がいのある方の就労について理解しやすくなります。一通り記事を読み終わった後にあらためてこの表を見てください。記事の内容が整理されると思います。
障がい開示の有無:「オープン」vs「クローズ」
障がいの中には、発達障がいなどのように外見からではわからない障がいがあります。その場合、その障がいを他人に伝えるかどうかを迷うことがあります。それは、障がいを開示することで仕事内容や人間関係で不利なことがあっては困る、と心配するからです。
障がいのある方の就労を考えるときに理解したいのが、この「障がいを開示するか否か」です。「障がいを開示する」=「オープン」、「障がいを開示しない」=「クローズ」、といった言葉を使ったりします。例えば、「今はオープン(障がいを開示)で働いているけれど、将来的にはクローズ(障がいを非開示)で働きたい」といった具合です。
就労スタイル:「一般就労」vs「福祉的就労」
障がいのある方の就労スタイルには、大きく分けて2つの方法があります。
「一般就労」と「福祉的就労」です。
「一般就労」とは、企業で働くという一般的なスタイルです。企業や公的機関などに就職して、労働契約を結んで働きます。
一方「福祉的就労」とは、就労支援施設などで福祉サービスを受けながら働くというスタイルです。障がいのある方が「一般就労」として働くことが難しい場合に選択する就労のスタイルとも言えます。
今回は、「一般就労」について解説します。(「福祉的就労」については、別の記事で解説していますので、そちらをご覧ください。)
「就労スタイル」と「就労先」
ここで、先ほどの表をあらためて下にお示しします。「一般就労」での就労先として、【一般企業】と【特例子会社(後述します)】があります。障がいへの配慮を求め、かつ、給与額が少しでも高い就労を目指すとなると、「福祉的就労」ではなく「一般就労」を選択することとなります。そして「一般就労」の中でも、これから述べる【一般企業】の障がい者枠や【特例子会社】を選択することになるのです。
「一般就労」の【一般企業】
まず、「一般就労」における【一般企業】のケースをみてみましょう。
【一般企業】には、「一般枠」と「障がい者枠」の二つがあります。
【一般企業】の「一般枠」
【一般企業】の「一般枠」とは、いわゆる一般的な就労方法です。障がいを開示することで雇用してもらえない場合を考慮して、「障がい非開示」で「一般枠」で雇用されるというケースがあります。ただもちろん、「障がい非開示」の場合には、障がいへの配慮はなされないため、障がいのある方自身が疲弊してしまうことが少なくありません。一方、障がいへの理解がある事業主に雇用されるケースでは、障がいがあっても「一般枠」で雇用されるケースもあります。そういったケースは「障がい開示」でも「一般枠」で雇用されるという例外になります。
【一般企業】の「障がい者枠」
【一般企業】の「障がい者枠」とは、「障がい開示」の人に設けられた枠です。日本では、障害があっても平等に働く機会を得られるように、国や自治体、企業に対して一定数の障がいのある方を雇用するルールが定められています。このルールにそって「障がい者枠」があります。
この「障がい者枠」に応募したければ、「障がい開示」が必要です。つまり、障がい者手帳の所持が必須です。例えば、障がいの診断を受けていたとしても、障がい者手帳を持っていなければ、「障がい者枠」を利用することができません(発達障がいの人に多いパターンです)。
ここまでが、「一般就労」における【一般企業】のケースについての解説でした。「一般就労」には「一般枠」と「障がい者枠」がある。「障がい者枠」では「障がい開示」が必要ということでした。
「一般就労」の【特例子会社】
次に、【特例子会社】について触れたいと思います。
「一般就労」の特別な形が、【特例子会社】での就労です。大企業では、【特例子会社】という、障がいのある方の雇用の促進及び安定を図るために特別な配慮をした子会社を置いている場合があります。企業が【特例子会社】を設置する理由には、次のようなわけがあります。
大企業には、親会社や子会社があります。親会社は、障がいのない方が多く働く環境です。そういった環境に、障がいのある方の雇用を促進しようとすると、様々な整備(働く場所や就労条件などに対する整備)が必要となります。そのため、時間や経費がかかることも少なくありません。しかし、この【特例子会社】を設立することで、企業側は整備をコンパクトにまとめられ、障がいのある方を雇用しやすくなるのです。そして、【特例子会社】での障がいのある方の雇用は、企業全体の障がい者雇用率に換算することができます。つまり、【特例子会社】の制度は、障がいのある方を雇用する上で、企業側にとってメリットが大きいということです。
このように、障がいのある方が「障がい開示」のうえで「一般就労」で働く場合、【一般企業】の「障がい者枠」で働く方法と、【特例子会社】で働く方法があります。例えば、【特例子会社】に障がいのある方が「障がい非開示」で働くということはないのかという疑問がわくかもしれません。しかし、そういったケースは、障がいのある方が、障がいのある方のサポートスタッフとして働くケースということになり、障がいのある方にとっては現実的ではありません。ですので、ここでは【特例子会社】には障がいのある方が「障がい開示」のうえで働くことを前提とします。【特例子会社】は【一般企業】と違い、設備や環境・体制・規則などで障がいのある方への配慮が手厚いことが期待されます。
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「福祉的就労」については、別の記事で解説していますので、そちらをご覧ください。
記事のポイント!
- 障がいを開示するかどうかの「オープン」vs「クローズ」
- 「一般就労」にするか、「福祉的就労」にするか
- 「一般就労」なら、①【一般企業】の「一般枠」、②【一般企業】の「障がい者枠」、そして③【特例子会社】、のうちどのタイプにするか
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