子どもの「生きる」を考える
子どもの「生きる」を考える
小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te
代表理事 
湯浅正太
みんなとおなじくできないよ

子どもたちに用意したい日本社会

2023/04/30

記事【子どもたちに用意したい日本社会】

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【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる書籍「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」を Amazonで見てみる

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こんばんは。絵本「みんなとおなじくできないよ」や「ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ」の作者で、小児科医のしょーたです。

今日は「子どもたちに用意したい日本社会」というテーマでお話ししたいと思います。

世間はゴールデンウィークに入っていますが、あなたはゴールデンウィークをどのようにお過ごしですか?どこかに旅行に行きますか?子どもたちは連休を楽しめそうですか?

僕は、昨日と今日東京のホテルに泊まっていたんですね。ホテルの近くを散策していると、すれ違う人の多くが外国人で、さらにはコンビニの店員さんまでも外国の方でした。色々な海外の方と交流できることはとても嬉しいことですが、日本の暮らしがだいぶ変わっていることを実感しました。

昨日の街の様子を見ていても、日本を楽しむ外国人と、娯楽を抑えている日本人、あるいは、外国人にサービスを提供している日本人、という構図が明らかでした。日本社会がどんどん日本に閉じこもる印象を持ったんですね。日本人にとって生活しづらい社会になっている、ということですね。

僕が大人になるまでに、日本人の暮らしが驚くほど変わってしまいました。世界での労働者の賃金が上がる一方で、日本での賃金が長年上がっていないことは有名な話です。世界が変わったというよりも、日本があまりにも変わらな過ぎたと言うべきですよね。

だからこそ、日本にいて、日本人に購入しにくいものが増えても、外国人にとっては購入しやすい状況があります。そんな時代だからこそ、日本人向けに売るよりも、海外の方向けに売った方が商売になる。そんな日本になっていますよね。

逆に、日本人にとっては海外に行きにくい時代になりました。日本で紅茶一杯300円だったとしても、海外では一杯の紅茶が1000円だったりますからね。海外で紅茶を飲むことが、いつの間にか日本人にとってはあまりにも贅沢な買い物になってしまいました。

そんな風に海外に行きにくい今の状況って、子どもたちにどんな影響があるんでしょうか。少なくとも、海外の方との交流が抑えられてしまうということは、子どもの成長にとって大きな影響があります。なぜなら、自分と異なる人との出会いが少なくなるからです。

子どもたちの成長にとって欠かせないものの一つに、自分とは違う他人との出会いがありました。子どもたちがあらゆる他人に出会うことで、自分らしさを発見していく。成長の過程でそのことに大きな価値があることを理解すると、子どもたちにあらゆる世界を見せてあげることがいかに重要かがわかります。

僕自身にとってもそうでした。

あなたは海外に行ったことはありますか。僕は、子どもの頃は家族で海外に行ったり、学生時代には留学で海外に行かせてもらったことがありました。医師になってからは、学会に参加するために海外に行ったりもしていました。小児科医として子どもの成長を支える立場になり、これまでのそういった外の世界に触れる経験がとても貴重だったと感じています。

小児科医として「自分の知らない世界に出会う経験こそ、子どもの成長にとってとても重要」と理解するので、海外に行きにくい今の日本社会をどうにかしてあげたいと思うんですね。今の日本の子どもたちには、ぜひ違う社会を見せてあげたいと思います。

そんなことを思いながら考えるのは、インターネットの活用です。今の日本の経済状況って、すぐには変わりません。でも、今すぐにでも子どものために工夫できるものがあります。それが、インターネットです。

日本の経済状況や、子どもの成長にとって欠かせない外の社会との遭遇の価値を理解するからこそ、オンラインを子どものために活用しない手はない、と思います。今は直接飛行機に乗らなくても、海外の方と会話できる時代になりました。だからこそ、教育現場ではもっとオンラインを活用してもらいたいと思うんですね。

ただ闇雲にオンラインを使うということではなくて、特に「出会いのためのツール」として活用してほしいと思うのです。

教育現場でのオンライン活用について、色々な意見があります。予備校の先生のように「教えることが上手な先生」がオンライン授業をすればいいじゃないかという意見もあります。しかし一方で、学校現場での先生と子どもたちとの直接的なコミュニケーションの重要性も指摘されています。

そんな色々な意見がある中で、僕はなんでもかんでもオンラインを活用したらいいとは思いません。でも、経済的に豊かでなくなりつつある日本にとって、世界とつながれるツールであるオンラインを活用しない手はありません。お金をかけなくても、外の世界につながれるのですから。今の日本の教育現場にとっては、救世主でもあるのではないかと思います。

「外の世界を知るって、そんなに重要?」、そんな風に思う方がいるかもしれません。

はい、とても重要です。逆に外の社会との交流を意識しない教育に、どんな意味があるのかと思ってしまいます。

人が社会を作る生き物だからこそ、人として充実した人生を生きるヒントは社会との交流にあるわけです。自分の殻に閉じこもって物事を行うことで生活できるのであればいいのですが、そんなに都合のいいことはありません。何かしらの方法で他人と交流するからこそ、社会の中で生きていける。そういうものです。

今の日本の経済状況で、今の教育現場で、せめてできること、その一つにオンラインでの「人との出会い」を提供することがあると思います。

例えば、教育委員会で地域の小学校・中学校に対して一斉にオンライン講演会を提供してあげる。そういうことが可能と思います。演者には、世の中で活躍する人を招いてあげる。スポーツの世界、芸能の世界、芸術の世界、そういったあらゆる世界の人たちと交流するチャンスをオンラインで提供する。それはできると思います。

そのことに価値を感じていないから、それができていない。そういう状況と思います。

僕の人生の中で僕の好奇心を刺激してくれたものも、やはり出会いです。海外の留学生と交流したり、自分が経験できていないことを経験している同世代の人たちと交流する機会はとても貴重でした。それはやはり刺激的でしたし、その経験に感化されて、自分の行動も良い方向へ変わるわけです。

でも、社会で活躍する人がお父さんやお母さんだったりすると、もうすでにそのことを理解しています。そのことというのは、「出会いこそ、重要」ということです。だから、そのことを理解している大人は自分の子どもに外の世界を知るチャンスを与えてあげています。そういうものです。

コロナ禍を経験し、私立の学校ほど、オンラインの活用が柔軟にできるからこそ、今私立の学校を受験する子どもが増えているという意見もあります。子どもに外の世界を見せるチャンスが、家庭の経済的格差による影響で、家庭ごとに変わっている。それが現状と思います。

でも、私立を受験させられる家庭の子どもだけが、オンラインの恩恵に預かるということではダメなんです。

オンラインが活用できる現代では、学校現場は自由に世界につながれます。私立であろうと、公立であろうと、学んでいる場所が日本であっても、学びの空間は世界にまで広がれる時代ということです。

僕の子どもの頃は教室で目の前の教科書を読んでいることが当たり前でした。その現状が30年以上たった今でも大して変わっていないことに驚きを覚えます。賃金が横ばいであること以外に、あらゆる分野で日本は変わっていないんです。

英語を学ぶにあたっては、教科書を広げるよりも、海外の生徒とまずは交流してしまった方がより早く英語を身につけられます。もしも海外の生徒との交流に費用がかかるとしたら、海外の生徒がアメリカ人やイギリス人ではなくても、マレーシアなどの生徒さんでもいいでしょう。価格を抑えながら世界と交流することはできます。

お父さんやお母さんの職業によって、あるいは、家庭の経済的格差によって、子どもに職業選択の差が生まれるという事実もあります。そうであれば、地域の小・中学校の生徒に向けて一斉に色々な職業の方のオンライン講演会を実施する。そうやって、どんな背景で育つ子どもも、色々な職業を知る機会を得ることができるはずです。

驚くほど変わらない日本社会に、ぜひ変わってもらいたい。どんどん世界につながることで、日本の良さもアピールできます。日本を世界にアピールすることで、子どもたちが大人になった頃に経験する日本社会がようやく変わるんです。

色々な意味で、世界につながることで、子どもたちの生きやすさが変わります。

今日は「子どもたちに用意したい日本社会」というテーマでお話ししました。

だいじょうぶ、

まあ、なんとかなりますよ。

湯浅正太(ゆあさしょうた)

PROFILE
2007年 3月 高知大学医学部 卒業。小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医。一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)代表理事。イーズファミリークリニック本八幡 院長。作家。著書に『みんなとおなじくできないよ』(日本図書センター)、『ものがたりで考える 医師のためのリベラルアーツ』(メジカルビュー社)がある。

一般社団法人 Yukuri-te(ゆくりて)

『みんなとおなじくできないよ』

障がいのある「おとうと」がいる小学生の「ボク」。おとうとのことを好きだけど、ちょっと恥ずかしく、心配にも感じている。複雑な感情と懸命に向き合って「ボク」がたどり着いた答えとは?「きょうだい児」ならではの悩みや不安、孤独な気持ちが当事者の視点から描かれた絵本。湯浅正太著/1760 円(日本図書センター)

『みんなとおなじくできないよ』

診察する, 治療する, 命と向き合う, …医師として働くとはどういうことか, 患者さんにどう接するか, “正解”はなくとも「考えて答えを出していかねばならない」倫理的なテーマについて医学生/研修医に向けて解説。小児科医であり絵本作家でもある著者が, 医療現場のエピソードに沿った「物語」を提供し, 読者に考えてもらいながら倫理観を育んでいく。「明日からの診療に役立つ一言」も記載し, 躓いたとき, 迷ったときに心の支えとなる書籍。湯浅正太著/2420 円(メジカルビュー社)

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