子どもの「生きる」を考える
子どもの「生きる」を考える
小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te
代表理事 
湯浅正太
みんなとおなじくできないよ

つながるって難しいこともある

2022/05/12

記事【つながるって難しいこともある】

#つながるって難しいこともある #子育て #小児科医 #湯浅正太

こんにちは。絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心に関わる物事を気ままに発信しています。ですから、紅茶でも飲みながら、ゆる〜い気持ちで聴いてもらえればと思っています。

今日は、つながるって難しいこともある、というテーマでお話ししたいと思います。

このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。

【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる

外来のおじいさん

今朝、しばらく前に目撃した、つなげるのに苦労しながらも笑いがあった出来事を思い出したので、忘れないうちにお話ししたいと思います。ある時、色々な診療科がある外来の建物の中を歩いていたのですね。そうしたら、遠くの方から大きな声が聞こえてきたんですね。「違う!」とか、「ココだ!」とか、そんな大きな声が聞こえてきたのです。

病院には時々クレーマーという方もいますから、「またそんな人がいるのか、困ったものだなあ」と思って、声が聞こえてくる方を見たんですね。するとそこには、おじいさんと病院のスタッフが立って言い合っていたんです。病院のスタッフが「受診するのは、ココじゃなくて、別の外来です」と言っていました。でも、そのおじいさんは大きな声で「いや違う、わしが受診するのは絶対にココの外来だ。間違いない」と言っているんです。受診する場所のことで言い争っていることがわかりました。

周りの人も困っているだろうと思って見回すと、「あれ?」、ちょっと違うのですね。周りの人は、なんだかクスクス笑っているんですよ。「なんでみんな笑っているんだろう?」と不思議に思ったんです。だって、クレーマーみたいな人が大声で怒鳴っているのに、みんなクスクス笑うっておかしいじゃないですか。

そう思っていたら、病院のスタッフの方がこう言ったんです。「おじいさん、ここは『産婦人科』っていうところです。絶対おじいさんがかかるところじゃありません」。それでようやく、その場のことが理解できました。結局、そのおじいさんは循環器内科にかかるはずが、間違って産婦人科に行ってしまったそうなのです。それを、病院のスタッフが循環器内科に案内しようとしたら、言い争いになってしまった。そういうことでした。

でも結局、後から付き添いのおばあさんが遅れてやって来て、「あんた、産婦人科なわけないでしょ」と恥ずかしそうに言いながら、そのおじいさんを循環器内科に連れていってくれたのですね。なかなか人をつなげるって、大変ですよね。つなげるのはたいへんだけれど、ちょっとユニークなお話しでした。

感情に惑わされずに子どもが求めるものに気づく

そんなお話をした後は、昨日放送したつながりのエピソードに対するコメントをいただいたので共有したいと思います。Yukuri-teのLINEにいただいたコメントです。あ、コメントは、Voicyでも、Yukuri-teのLINEでも、Yukuri-teホームページのお問い合わせフォームでも、なんでも大丈夫ですからね。細かいことはあまり気にしませんので、どしどしコメントやエピソードをいただければと思います。

それでは、ラジオネームちゃきさん。コメント送っていただき、どうもありがとうございました。

「こんにちは。湯浅先生のVoicyの中の、娘さんとお友だちの男の子とのつながりのお話をうかがい、涙が出ました。ステキなつながりだな、と思いました。

私はというと、小学校中学年の次女に手を焼いていて、毎日結局怒ってしまったり、怒鳴ってしまったり…、そのことで私自身も反省したり傷ついたりの毎日です。

次女は自分のことが1番で周りのことが考えられず、嫌な言葉も家族に投げかけ、好き勝手にやろうとします。人の気持ちを考えられる優しい子になってほしいとずっと思っているのですが、私の伝え方が間違っているのだと思います。

おそらく学校では自分を抑えている分、家で発散しているのだと思うのですが、家がこの状態では、長女にとっても私たち夫婦にとっても辛いです。つながりというのが希薄になってしまっていて、私は誰かと少しおしゃべりして気持ちが楽になるということがあまりありません。大切な我が子を傷つけてしまうことのないように、気持ちを抑えることで精一杯です。

まとまりのない文章になってしまい申し訳ありません。何かヒントをいただけたら、という気持ちで湯浅先生のVoicyを聴いています。これからもどうぞよろしくお願いいたします。」

ちゃきさん、大切なコメント、どうもありがとうございます。つながれたエピソードを色々な方に共有して、色々な反応が生まれる。そうやってつながりの価値を確認していく。そんなことをこのvoicyでしたいと思っています。人は生きる中で必ずつながりを経験しています。それは、つながるという行為が、本来人が求める行為だからです。だから、つながれたエピソードは、やはり聴く人にホッとした気持ちを与えてくれるのですよね。

一方で、なかなかつながれないというコメントも、とてもありがたいです。つながることの難しさ、それも誰もが感じたことがあるはずです。だからこそ、つながるって、やっぱり教育が必要なのです。人が本来求めているつながりとは、どんなものなのか。どうやったら人とつながりやすくなるのか。そこを十分に教育することが、人の成長には欠かせないのです。

ちょっと話は逸れますが、これは決して教育現場の教師の方々を批判しているのではありません。それは、まったく違います。僕自身は教師の方に救ってもらった、という経験があります。だからこそ、教師の価値を知っています。でも今は、そんな教師の過労が過ぎます。教師の方々は働きすぎです。教師も人間ですから、社会があらゆる面での余裕を提供したうえで、教育の方針に「つながりの教育」を取り入れてもらいたい。そう思います。

少し話が逸れましたが、ちゃきさんにもっともお伝えしたいのは、同じような経験をされている方は全国にたくさんいる、ということです。それは、今まさに子どもをもつ親という方もいますし、もう子どもは成人になったけれど、昔そういう経験があったという方まで色々です。つまり、あなただけではない、ということです。

そして、次女さんが家族とつながりにくい中で生まれる感情を、一旦次女さんから切り離して考えてみましょう。つまり、次女さんが抱える感情は、次女さんがもつのではなく、他にあるという視点です。そのうえで、次女さんの幼い頃を思い出してみてください。どんな様子だったですか。きっと、何かあるとちゃきさんに助けを求めていたのではないですか。それに、笑顔もあったと思います。

次女さんから出てくる怒り感情をちょっと脇に置いて、幼い頃の次女さんを思い出してみる。今、次女さんの見た目は大きくなったかもしれませんが、心は幼い時の様子と一緒です。次女さんがどんな発言をしようと、次女さんが求めているものは、やはり親御さんの助けです。

人は成長すると、できることが増えるかというと、そうでもないのですね。次女さんは成長したため、なかなか自分の気持ちを親御さん達に表現できなくなりました。幼い頃は駆け寄って、抱っこを求めたかもしれません。でも、成長した今は、それができなくなってしまったのです。

人の心の成長って、便利だけれど不便なのです。人の心って、そんな風に矛盾しているのです。

そこで、ちゃきさんに提案です。身体が成長した次女さんは、不安を抱えても、その不安をちゃきさんとつながることで解消することが苦手になっているようです。であれば、ちゃきさんから次女さんにちょっとだけ触れてみてあげてください。相手のペースを乱さずに、そっと関わるということです。本当にそっと、でいいです。

例えば、「おやすみ」の挨拶と同時に、そっと肩に触れるだけでいいです。本当に微かな触れ合いで構いません。相手が意識しないくらい、そっとで構いません。でも、その小さな触れ合いを、毎日行ってあげてください。毎日です。それが習慣化すると、絶大な威力を発揮します。嘘ではありません。本当です。

そして、一生懸命頑張っている学校へ行く時には、「いってらっしゃい」。帰ってきた時には、「おかえり」を言ってあげてください。そこでも、こちらからわざとつながりをつくります。もちろん、反抗するような言葉が返ってくるかもしれません。でも、次女さんの心は親御さんの助けを求めています。
次女さんは、ちゃきさんのおっしゃるように、学校でとても頑張っているのだと思います。そして、頑張るからこそ、不安も生まれていると思います。そんな不安を、そっとしたつながりで解消してみてください。その効果は、半年後に現れます。それを長いと感じるか、短いと感じるかは人それぞれかもしれません。でも、つながれたら、その効果は絶大なのですよ。

また、ちゃきさん自身も、誰かとつながることが大切ですね。ちゃきさんだけで頑張る必要はありません。このvoicyで色々な声につながっていただくことも大切でしょうし、地域の自治体の方とつながることも大切かもしれません。小児科医をしていると、同じような経験をされている親御さんをたくさん見ていますから、ちゃきさんの地域にも同じ経験をしている方は必ずいます。色々な方とつながりながら、「まあ、色々あるけど、まあそんなこともあるよね」というスタンスでいたいですね。

ちゃきさん、これからもコメントお待ちしています。

頭痛をコントロールして子どもらしい生活を

それでは、次にラジオネームひのきさん。コメントありがとうございます。

「子どもの頃、母は頭痛の時に「子どものキーキーする声に頭が痛くなる人もいるから大きい声出さないで」と言いました。私も大人になって理解でき、本当に横になるくらいしかできない辛さがわかりました。しかし、子どもは自分のせいかな、と思ってしまうかもしれませんよね。対処法がわかり、次に片頭痛がきても大丈夫と思えるようになり、おかげで以前より心に余裕があると感じます。」

ひのきさん、どうもありがとうございます。子どもの声に頭が痛くなる、というのは聴覚過敏と捉えることもできますね。実は片頭痛の方にはこういった現象は珍しくありません。親にも頭痛がある。子どもの頃に車酔いしやすかった。朝起きるのが苦手。そんな傾向があります。

ひのきさんが教えてくれましたが、「本当に横になるくらいしかできない辛さ」を片頭痛をもっている人は経験します。そんな辛さを経験するので、「次に片頭痛がきたらどうしよう」という不安を抱くようになります。そういった不安を「予期する不安」と書いて、予期不安と言ったりします。

そんな不安を抱くようになると、ストレスが高まって、日常生活に支障が出てくることもあるのです。ですから、片頭痛をもつ子どもが僕の外来にやってきてくれた時には、まずはその予期不安、つまり「次に片頭痛がきたらどうしよう」という不安の解消から取り掛かります。

そのための第一歩が、片頭痛を見極めるということです。片頭痛がどんな症状で始まりやすいか、それをお子さんや親御さんとお話しします。目の前にチカチカした光が見えたり、目の前がぼやけたり、あるいは周りの声や物音を過敏に感じるようになったり、その初期症状はその人その人によって異なります。その子どもがもつ片頭痛の初期症状が何なのかを突き止めます。

そして、片頭痛がきたらすぐに薬を服用できるようにしてもらいます。そうやって、片頭痛にうまく対処できた成功体験を重ねると、先ほどお話しした「次に片頭痛がきたらどうしよう」という不安が軽減していきます。

すると、日常生活で抱えていた不安が軽減できるので、調子が乗らなかった日常生活が少しずつ改善していきます。笑顔が増えたり、登校しぶりがあった子が、少しずつ登校するようになる。そんな風に生活が改善していきます。そんなものです。

もし親御さんが片頭痛をもっていたら、しっかり片頭痛に対処してしまいましょう。親御さんの片頭痛への対処がうまくいって心に余裕ができてくれば、その親御さんを見ている子どもにも心の余裕が生まれます。聴覚過敏のために、「大きな声、出さないで!」と言っていた日常も変わってくるかもしれません。

子どもははしゃぐことが仕事みたいなものですから、大声も出したいし、笑いたいし、歌いたいのです。そうやって、子どもの頃に自分の気持ちを外に出せる経験を積めるということは、子どものその後の成長につながります。

ひのきさん、どうもコメントありがとうございました。このほかにも色々なコメントをいただいています。順次お答えしたいと思いますので、どんどん今後もコメントお待ちしています。

色々ありますが、だいじょうぶ。まあ、なんとかなりますよ。

記事のポイント!

  • つながりづらさは珍しくない
  • ちょっとしたつながりを意識する
  • ちょっとしたつながりを継続する

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