子どもの「生きる」を考える
子どもの「生きる」を考える
小児科医・作家
一般社団法人Yukuri-te
代表理事 
湯浅正太
みんなとおなじくできないよ

手がかからない子ども

2022/01/16

記事【手がかからない子ども】

絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者で、小児科医の湯浅正太です。このチャンネルでは、子どもの心を育てるうえで役立つ情報を発信しています。今回は、手がかからない子どもが本当によいのか、ということをお話ししたいと思います。

このブログ記事の内容は、Voicyでも配信しています。

【この記事の執筆者(湯浅正太)の自己紹介】小児科医(小児科専門医、小児神経専門医、てんかん専門医)&作家。病気や障がいのある子どもの兄弟姉妹(以下、きょうだい)を支援するための絵本「みんなとおなじくできないよ」の作者。自身もきょうだいとして育ち、小児科医として働くかたわら、子どもの心を育てる一般社団法人Yukuri-te(ゆくりて)を設立し活動している。詳しくは、法人ホームページをご覧ください。絵本「みんなとおなじくできないよ」を Amazonで見てみる

人生のカラクリ

僕は小児科医として、色々な子どもたち、そしてその親御さんたちに出会ってきました。どんな環境で育った子どもたちが、どのように育っていくのか。そして、どんな環境で育った親御さんが、どのような子育てをするのかを見てきました。

人生は一度きりです。その一度きりの人生の中で、子どもの時期も一度しかありません。その子どもの時期が、その人の人生に強く影響します。そして、その人が親となった時に、自分の子どもたちへとその影響が続きます。人生は、そんなカラクリで成り立っています。

一生楽しい人生であれば、何も伝える必要はないかもしれません。でも、人生って、そんなに甘くはありません。楽しい出来事もあれば、辛い出来事もあります。実は、その様々な出来事の捉え方は、子どもの頃に養った心の具合によって大きく異なるのです。

多くの方は、そういった人生のカラクリを理解するのに、多くの時間を費やします。人生の最期になってようやく、人の人生はそういうカラクリで成り立っていたのか、と理解するかもしれません。多くの子どもに関わり、多くの親をみるという経験を持つのに、時間を要するからです。

もしかすると、その人生のカラクリを理解しないままに、最期を迎えてしまう方もいるかもしれません。それはもったいない。辛い経験をしたら、それは自分がただ不幸だっただけだと、自分の責任として終わらしてしまってはもったいない。そうではないんだ、ということです。

そういったことを思いながら、小児科医として生きています。そうやって過ごしていると、もっと早い時期に子どもへ違う関わりをしてあげていたら、こんな生きづらさを抱えなかったと思うことも少なくありません。そして、これは病院にかかるよりも、もっと前の段階で手を打たなければならないと強く思うようになったのです。

手がかからない、おかしな状況

だいぶ前置きが長くなりましたが、そこで今回は、子どもに手がかからないということを考えたいと思います。子どもは親からの関わりによって、その心が発達していきます。逆に親から関わってもらえなかった子どもの心は、十分な発達ができません。十分な発達ができないとは、人生で経験する困難を克服できなくなってしまう繊細でもろい心に育ちかねないということです。

そして、子どもは必ず親に構ってもらいたい生き物です。不安を感じる度に、親を心の中で感じながらその不安を払拭していきます。そんな子どもが、もしも、あまり親を求めないとしたら、やはりおかしいのです。

子どもが親に関わりを求めないことを、社会では「おとなしい」「お利口さん」「手がかからない」などの表現で美化するかもしれません。でも、小児科医の僕からすると、「おいおいそれはおかしいよ」という事態です。子どもが親に関わりを求められない事情が、きっと背景にあるのだろうと疑います。

例えば、兄弟にどうしても手がかかる子どもがいて、その様子を見ている他の兄弟がおとなしくしているというケース。あるいは、自分の口から言葉を上手に使って、自分の感じている困難を親に表現できないケース。そんな色々なケースが考えられます。どの子どもも、あたかも「手がかからない」かのようになってしまっているだけです。

あたかも突然起きる問題

本当はそんな様々な背景をもとに、子どもがあたかも手がかからないかのようになってしまっていて、親もそれに気づかない。そんな状況が実はたくさんあります。その状況を放置しておくとどうなるか。他人との交流が増えてくる中学生以降になって、生活に適応できない状況になることがあります。

生活に適応できないとは、食事を食べられない、学校に行けない、人を傷つけてしまう、といったことです。しかも多くの場合、あたかも「突然、ある日」起きます。でも、実はそれは突然始まった出来事ではありません。幼少期からの「手がかからない」けれど手をかけるべき状況が、そういう事態を招いてしまったのです。

事態が起きてから病院を受診することになりますが、そこでの対応には限界があります。それに、子どもの頃の経験は、その子の人生すべてに影響するのです。学校などでの友達や先生との交流、そして会社での同僚や上司との交流に影響します。そして、人生の伴侶との生活にも影響し、自分の子どもへの育て方へも影響は続きます。

このように、実は、子どもの頃の関わりが、その後の人生すべてにつながっていきます。

ぜひ知っておいてください。手がかからない子どもなんて、いません。子どもの発達には、手がかかり、親の愛情をたっぷり注ぐからこそ、心のあたたかい優しい大人へと成長します。そして、その心の様子が、次の世代、そのまた次の世代へと伝わっていきます。

今回はここまでです。

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記事のポイント!

  • 手がかからないは、おかしなサイン
  • 手をかけなかった結果は、中学生以降になって現れる
  • 子どもは手がかかるもの

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